小さな頃から夢だった
エスカレーターを家に取り付けるため
大人になると僕は
さっそく業者を呼んで相談した

ところがこの家には
二階も地下室もないので
どこまでも上り続けるか ....
 
 
老人とばかり
思っていた

煙草は吸いません
煙を吐きながら
私たちは

コーヒーは飲めません
だから私たち
紅茶ばかりね

返事は出しません
手紙に書いて
他愛 ....
 
 
階段を昇り終えると
手には指のようなものが生えていて
動かすとそれは
自分のもののように動くので
そればかりじっと見ていた

窓を開けると
外はどこまでも夜で
星のようなも ....
 
 
夜空の星は
人が一生歩いても
届かないところにある

もしも
一生歩けば届く
星があったなら
ぼくらは歩くだろうか
その星へむかって

ああ
だから今この時も
歩い ....
 
 
子供はおならを我慢しないのだ
わるびれた様子もなく
ただぶうと放つ
指摘しても子供は
照れたふりをしてるだけ

たくさん作らなければならないところから
いちばん遠いところにあ ....
 
 
紅い頬を削がれて
恥じらいもなく現れた
少女の実を
次々と切り分けて
皿に並べていく

自らの少女を
どこかに忘れてきた
ふりをしてる母の
秘められた欲望のように
家族 ....
 
 
どう見ても
人でしかない
葡萄を見ていた

同じ売場で
何度も見てるから
店の人に
怪しまれさえした

名前を知ってる
と思った
葡萄の品種ではなく
たった一つしか ....
 
 
疲れてるの
と聞かれると
疲れてると
言ってはいけない
気がしている

休日も
休日以外の日も
そのどちらでもない日も

ある海で
休んでいると
網に掛かってしまっ ....
 
 
治りかけの痔が
痒くて気持ちいいのだと
祖父は言った

痔は治りかけてるのに
とも
祖父は言った

私は誰もいない公園の
ブランコに乗り
治りかけの痔について
考えて ....
 
 
煙草を吸わない
喫茶店で
コーヒーの夢を見る

紅茶を頼む
鞄からはみだした
赤いマルボロ

煙を吐く
終電を見てる
あなた宛の手紙を書く
 
 
 
 
日々が声になって
声にならないものは
声にならない
紙の上の文字になって
出せなかった
手紙のように
ここにある
まだ捨てずに
取っておいていいですかと
やはり声にならず ....
 
 
しつれんすると
ひとはねこになるのだ

みちばたに
はながさいてるのだ

どんなりゆうで
はなはさいてるのか

きみにこいをしたからさ

ほそいめをして
ないてる
 ....
 
 
カラスが鳴く朝が
今朝もやってくる
朝になれば
れいのいい調子で
いつものように
あの声が聞こえてくる
はずだった

としたら?

とでも言わなければならないような
 ....
 
 
妻が
手袋を
編んでいる

早く手袋に
指を通したい
わたしと妻の
子供が待っている

やがて
できあがると手袋は
子供の指に
通されたくなっている

指を通す ....
 
 
真夜中
いつもの丘の上で
木が空を見上げている

まさか木星を
故郷だと思ってるのでは

僕も空を見上げる

まさかあの青い星を
故郷だと思ってるのでは

木は僕と ....
 
 
ストッキングの
踵のあたりが破れて
熊の顔になっている

その熊に
首筋や背中を
何度も引っかかれたけれど
僕は死ななかった

真夜中
真っ暗な部屋に
NHKを灯して ....
ハンバーガーショップで
別れたばかりの彼女からもらった
割引券を使った
本当は君を思い出すために
取っておきたかったけど
期限が迫ってたので
海老フライバーガーを注文した

 ....
 
 
君の街の郵便局に
僕は辿り着いた
大きな荷物を背負って

配達したけれど
不在なので
僕はまだここにいる

早く届きたかった
産声をあげて
君に封を
切ってもらって
 ....
 
 
水鉢で
金魚が泳いでる
赤いから
女だと思ってる
女はなぜ赤いのか
知るすべもなく
あなたは宇宙に浮かぶ
水鉢で泳いでる
地球はなぜ青いのか
知るすべもなく
 
 
 
 
カレーを注文した
一皿では足りないから
二皿注文した

けれど
食べる人が一人足りない
君が足りない

一皿のカレーを残して
私は店を去って行った

あの日
私一人 ....
 
 
夢想家
それは夢の中にいるもうひとりの妻
夢を見ているもうひとりの私

夢の中に咲く花を
一度も見たことがない
現実の世界で
あなたは此処にいないから

その花の名前を
 ....
 
 
何を落としてしまったのだろう
波紋が生まれ
どこまでも広がってゆく

はじめに体があったのか
心なのか
見分ける間もなく
時とともに
それは

波紋のように広がってゆく ....
 
 
電話のむこうに
君はいたのだから
わたしは
分解して探す

真夜中
君からの電話で目覚める
何も話さない
街の音が聞こえる
誰かを探してる
足音が聞こえる

分解す ....
 
 
水の中には
君がいるのだろう

めびれを使って
泳いでいるのだろう
えら呼吸を
上手にしながら

僕はまだ
顔を洗うことも怖くて

人は
そのえらで呼吸し
そのひ ....
 
 
十分で千円の
散髪屋に行った

わたしはそこで
十分で千円分の
人生をくださいと
店主に言った

けれども椅子に座らされ
十分で千円分の
髪を切られてしまうのだった
 ....
 
 
シロツメクサの
香りがすると
きみがいる

藤の花の
香りがすると
やはりそこにも
きみがいる

帰り道だった

沈む夕日が眩しくて
見えはしない
香りだけのきみ ....
 
 
誰かとどこかへ行っても
そこはここになる

ひとりぼっちで
いるここだって
同じここなんだ

ためしに朝起きて
窓の外を見てごらん
水道管が破裂したのか
そこいらへんじ ....
 
 
愛について考えると
わたしは道になっている

頭のてっぺんから
つま先まで
世界のあらゆる道になって
人々がわたしの上を歩いている

あなたが歩きだすのを
ずっと待ってい ....
 
 
考えても
仕方のないことを
考えている

スターバックスコーヒーで
名前を
間違えてしまった

マクドナルドの
喫煙席で
あなた宛の手紙を破る
 
 
 
 
わたしの家にある
不思議な窓が
開閉を繰り返すと
屋根の背中を
見覚えのある川が
流れている

見分けのつかない一日の
傍にある一筋に
長い影を落とし
少年は一つしかな ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
世界エスカレーター自由詩5*09/5/29 3:34
文通自由詩109/5/28 0:48
呼鈴自由詩109/5/27 5:26
夜空の星自由詩109/5/26 2:26
ところで、発売はいつになるんですか?自由詩0*09/5/24 23:04
林檎自由詩409/5/23 2:08
葡萄自由詩309/5/23 0:56
疲弊自由詩109/5/22 2:00
風になる自由詩509/5/21 2:44
赤いマルボロ自由詩109/5/21 0:42
白い扉自由詩309/5/20 2:59
はやりやまい自由詩2*09/5/20 1:19
カラスが鳴く朝自由詩209/5/19 4:20
懐かしみ自由詩3*09/5/17 22:42
丘の上で自由詩109/5/17 16:07
自由詩309/5/16 23:16
割引券自由詩4*09/5/16 21:52
手紙の気持ち自由詩209/5/15 22:42
水鉢自由詩309/5/15 2:27
君のカレー自由詩209/5/15 0:13
Phosphorescence自由詩109/5/14 1:56
波紋のように広がってゆく自由詩1*09/5/13 0:55
基盤自由詩309/5/13 0:20
水辺の日のために自由詩009/5/12 0:53
散髪屋自由詩209/5/11 1:03
きみは香り自由詩109/5/10 17:00
ハピネス自由詩309/5/10 15:12
ひらめき自由詩509/5/10 0:38
スターバックスコーヒー自由詩609/5/9 3:29
自由詩209/5/9 1:18

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