まだ煙草が吸えた列車
両端をつまんで
ぎゅっと窓を開けた
車窓の外から
まだ生きている風が入ってくるから
わたしも生きている気がした
それだけが実感だったのに
今はもうない ....
 
 
川のようなところを
冬の蝶が飛んでいる

蝶は知らない
いつか人に生まれることを

バスに轢かれた少年が
捕まえた蝶を
自分のことのように可愛がっている

可哀相だから ....
 
 
なんとなく
繰り返されていく今を
なるべく続けられるように
わたしたちは願い
歌うことさえした

歌うことよりも
大切な今があると知った
わたしたちは押し黙り
声を失いさ ....
 
 
風に舞う嘘を見ている
風に舞うのは雪だから
僕は嘘をついている
嘘をついているのは僕だから
僕は風に舞っている
風に舞うのは雪だから
僕はもうそこにはいない

肩に白く積も ....
 
 
ミュージシャンを夢見て
君はひとり
こんにゃくを背負って
旅立っていくのだった

あれからどれくらい経つだろう
生きていれば
誰もが思う
あの日
何かを間違えていたのかも ....
 
 
今すれ違った人
こんにゃくじゃなかった?

休日の散歩道は
いつもそんな母の
一言ではじまる

そう、今の人はこんにゃく
僕と母さんみたいにね

安心した母が
少女み ....
 
 
これからはじまることは
これまでにもあったこと
出会いと別れをくりかえし
僕らはまた少し
遠いところへ歩いていく

足がなくても歩けるのだと
あなたは言った
手がなくても
 ....
 
 
夢の世界の
もう一人の妻に会う
隣で眠る
妻に見つからないように

遊園地だろうか
長い列に並んでいる
まだ乗り物に乗れそうもないので
キスしながら
いつまでも待っている ....
 
 
目を瞑ると落下してる
驚いて目を覚まし
また目を瞑る
ふたたび落下
それを何度か繰り返し
その恐怖に慣れた頃
私はやっと
眠りにつく

夢で見た
あの青い海も
本当は ....
正直者が
墓を見ている

使い古された言葉のように
花が一輪
添えられている

祈ることが
生きることになって久しい
誰もいない部屋に
また電話してる

かなしみが ....
 
 
きたぐにから やってきた
トラックに たくさん 
つみあげられて
まっしろな ゆきが やってきた
だれも たのんでいないのに

こうさてんで ていしして
ゆきは はずかしそう ....
 
 
七時には家に帰ると
公衆電話から連絡があったのに
まだ帰らない父と母

死にそうになって心配してる
僕を見て
祖母は何か知っているのに
おしえてくれない様子で

北上から ....
 
 
列車らしきものが
ホームに入る
ドアらしきものが開き
人らしきものが
一人ずつ順番に乗る
定刻が訪れ
笛らしきものが鳴り響き
ゆっくり速度を上げながら
線路らしきものの上を ....
 
 
モナリザは
あらゆる角度から
私たちを見ていた

美術の時間
絵の上手下手に関わらず
私たちが絵を書いてるその時も
わけへだてなく
等しい目で

廃校になった校舎の
 ....
 
 
掌から零れていく
砂は一粒の記憶
思い出せば
波に洗われて
二度と現われない
小さな墓石
寄せては返す波が
足跡を消していく
やがて僕らは
指と指の隙間だけを残し
いつ ....
海岸に
たくさんの鏡が並び
かなしみの海から帰る人々を
心に写している

私たちは
あなたと同じ
かなしみがわかるのだと
言葉にして語っている
ほんとうは
正反対の姿で ....
 
 
ちょい悪オヤジがホテルに泊まった
何かの手違いだった
手違いだったはずなのに
彼はホテルの一室で
快適な時間を過ごしていた

ノックする音がして
ドアを開けた
ボーイだった ....
横断歩道を
舟が渡っていく

あの生まれたばかりの
小さな子供は
その隣で雑談してる
サラリーマンの男たちを
いつか脅かす存在になるだろう

そしてあの年老いた
一艘の ....
 
 
下り列車に乗る
途中
上り列車とのすれ違いのため
しばらく停車する
上り列車とすれ違うと
いつのまにか
上り列車に乗っている
同じ駅で列車を降りる
反対側のホームには
さ ....
高層ビルを
見上げながら
家路につく
街は高さを失いながら
広がっていき
やがて私は
空を見上げている
今日も日が沈む
路地を曲がり
その先に辿り着くと
温かい光が灯る ....
 
 
朝まで降り積もった骨を
川へ捨てにいきます

冷たく軋みながら
空の色が
川下へ流れていきます

家に帰ると
また同じ数の骨が
降り積もっています

はる ....
石を並べていく
川を越え
空を越え
虹の橋を渡る
あなたがいた場所まで
石は並んでいく
あなたがいない場所で
今日もまた
体を成し遂げている
明日もまた
同じ数の
石 ....
元旦の朝
目覚めると
枕もとに息子が
座ってました

いつからそこにいたの
と尋ねると
わからない
と笑うので
不思議な気がしました

それから
お雑煮の餅を
小 ....
 
 
かつて人だったものたちの
声に耳を澄ましている

繰り返される
波の音は
そのようにも聞こえ

バスは子供たちを乗せ
茜色に染まりながら
海岸線を通り過ぎていく
 
 ....
 
隙を見て二人でエレベーターに乗った
上にも下にも行けないのに
 
母の少女時代を知らない
わたしが知っている
あの少女たちも
いつしか母になっていた

その子らもまた
少女時代を知らない
わたしたちになっていて
知らないことは
いつも目の前に ....
一晩中
瞬き続けた星たちが
あんまり淋しいものだから
朝になると
雪になって降るんだよ

一日中
降り続けた雪たちが
母さん恋しいものだから
夜になると
星になって瞬くんだよ ....
 
高校を卒業して
家を飛び出してから
二十年になる

お盆と正月などには
申しわけなさそうに帰省してきたけれど
それぞれ五日ずつ滞在したとして
二十年かけても
わずか一年にさえ満た ....
今日は
長谷川さんが軽い

軽くなった長谷川さんを
おんぶして
仕事に出かける

長谷川さん
ここで休んでいてね
と言って
缶コーヒーの蓋を開けると
そこから山内さんが
 ....
 
いつか聞いた
オルゴールの音が
こんなにも懐かしく
わたしの島にもとどく

音階は等しく
何度でも
誰もいない浜辺に辿り着き
朝には朝の
昼には昼の
夕暮れには夕暮れに
染 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
実感自由詩110/2/4 23:47
冬の蝶自由詩110/2/3 22:23
自由詩4+10/2/3 1:18
風に舞う雪を見ている自由詩4*10/2/2 4:29
こんにゃく(に)自由詩110/2/1 2:08
こんにゃく自由詩410/1/30 4:53
塩分濃度自由詩510/1/29 3:42
窓、全開自由詩010/1/28 2:14
落下自由詩410/1/26 23:41
西日自由詩410/1/25 0:51
ほうぼう自由詩4*10/1/23 1:57
準備自由詩210/1/22 0:22
定刻自由詩110/1/21 0:01
モナリザたちの休日自由詩210/1/20 3:06
砂の記憶自由詩410/1/20 0:44
黙祷自由詩510/1/18 0:48
ホテル・リグレット自由詩3*10/1/15 3:02
遺伝子の旅自由詩210/1/13 12:56
すれ違い自由詩210/1/12 21:51
家路自由詩510/1/11 17:48
冬風自由詩310/1/10 18:36
こいあお自由詩310/1/6 23:24
天使の演習自由詩510/1/4 2:25
記憶の海から自由詩809/12/30 2:05
隙間短歌309/12/25 2:49
マザーズ自由詩109/12/22 23:58
初雪自由詩709/12/15 2:40
彼方へ自由詩309/12/11 1:50
消えないあなた自由詩409/11/28 1:51
オルゴール自由詩409/11/26 1:08

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