北風に乗って
いつかの春の
手紙が届いてしまった

知らなかった
冬の街で
はじめて
君の気持ちを知った

木枯らし吹く
その街で
落葉の
ひとつひとつが
手紙だった
 ....
 
雪の上に寝そべりながら
ぼろぼろと落ちてくる雪を見ていると
それは錯覚なのだろうけれど
空をどこまでも昇ることができる

このまま
天国までいけるような気がして
目を瞑り
目を開 ....
 
やさしい人がいる
生きることのつらさがわかるから
察してくれて
会ってくれる人がいる

めそめそと
泣いてしまうかもしれない
その人の前で
ほんとうは泣きたいのに
つよい男のふ ....
 
二十歳になった時
ずっと十九歳でいようと思った
三十歳になった時も
ずっと二十九歳でいようと思った

来年わたしは
四十歳になるのだけれども
三十九歳は
なかなか簡単には終わって ....
 
水色の目で見つめられると
溺れそうになる

その海を
器用に泳ぐことが出来たのに
今は浮き輪と
シュノーケルが手放せない

また振り向いて
見つめてる
なにか用事があるの
 ....
 
その人のことを
空さんと呼んでいた
空さんは
だだっ広くどこまでも
青くなったり赤くなったり
涙したりして
人のようだった

空さん

時々丘の上から
呼びかけてみるけれど ....
 
段差のない
同じような家のならぶ
団地に住む
友人の家に日曜日
遊びに行った

ちょうどお昼ごろだったので
お昼ごはんを
ごちそうになった

手作りの
パンとコロッケと
 ....
 
そのひとの
エタニティという香水の
匂いが好きだった

あまい匂いがしていた
君といる時はいつまでも
永遠だと思っていた

エタニティは
永遠
という意味であることを
その ....
 
みんなにせめられている
ふつうなら
今にも泣いてしまいそうな
そんな君に
気のきいた言葉のひとつやふたつ
かけてあげられたのに

他人なら
他人だったなら
そんなもの
どうだ ....
 
お寿司とお刺身の
違いのように
僕らにも違いはあるだろうか

と話す
その人のことなんて
何ひとつ知らないのに

握り合う手と手は
生ものの
さかなのように ....
 
ピーマンになって
人生を振り返ってみたけれど
からっぽだから
何も思いだせない

生まれた家のことも
父と母がいたことも
きょうだいがいたことも
結婚したのに
好きな人がいたこ ....
 
本が十四冊ある
一冊目はこんなに厚いのに
十四冊目はこんなにも薄い

空白のページがたくさんある
行間を読む
なんて言うけれど
読むことさえ困難な
その空白に
息子が落書きをは ....
 
襖を開ける時
反対の襖を閉めて
部屋から出てゆく人を
僕はまだ
見たことがないけれど

ふと焼き魚に
醤油が欲しいと
思ったとき

どこからか
醤油を持ってきてくれる
そ ....
 
僕から君へ
それは届かないかもしれないけれど

届いてしまったなら
ごめんなさい
僕は
それが届いてしまった
世界であやまってばかりいた

ねえ、おかあさん
ここはどこなんだ ....
 
ひとの顔を
覚えることができない

とくに好きになってしまった
ひとの顔など

ひたすら
目をそらしながら
声しか
覚えていない

声が
顔になってしまった
ひとの顔
 ....
 
十くらいはなれた
妹に
よく似た娘に
やさしくしてしまう

やさしくした後で
そのうかれた顔は何だと
誰かに言われたわけではないけれど
きっと僕は
そんな顔をしてる

もっ ....
にんにくを搾る器具の使い方間違えてるのに指摘できない  
どうしておしりあるの
だっておしりなかったら
うんちでないでしょ

どうしておっぱいあるの
だっておっぱいなかったら
のめれないでしょ

どうしてはなあるの
だってはななかった ....
 
森を探していた
いつも森のある辺りを
手探りで

人の皮膚は
思ったよりも広大で
地図を持たずに歩くことは
意外と困難で

まだ幼かった
少年が
少女に触れてしまった
は ....
 
金曜の夜
僕は誰かを探しに行く
誰もいないその街へ
つめたいビールが飲みたくて

土曜の朝
知らない誰かと眠ってる
眠りから覚めれば
またひとりぼっちになるから
夢を見つづける ....
 
ウィスキーの
琥珀色の
その向こうに
浮かぶ世界を見ていた

一瞬の絵のように
今日の一日が
そこにあったのだ

ちびちびと飲む

ぴちぴちと
魚が跳 ....
 
台所を
なぜわたしらは
台所と呼ぶのでしょう

そこに立つ
人にはそれぞれ
名前があったから

わたしらのため
台所にも
人とおなじ
名前がありました

真夜中
誰も ....
 
だって
家族はコンピュータだから
のひとことで
だれもが無口になった
そのことが不思議でしょうがない
子供が欲しがるものといえば
ファミリー・コンピュータ

わたしたちは家族です ....
 
ただしい船が
たくさん
海に浮かんでいる

沈まずに
まっすぐに
まちがいのないところへ
向かって進みながら
ただしさだけを保っている

嵐にでも遭ったのか
うちあげられた ....
 
かくしごとなんて
はじめからなかったはずなのに
生きてると
知られたくないことの
ひとつやふたつあるものでした

できることなら
椅子に生まれて
何も思わずにただ生きて
人を支 ....
 
下校中
ぼくは君の背中ばかり
見ていた気がする

とても小さな水が
生まれる場所をめざして
いつもの帰り道は澄みわたりながら
永遠みたいに流れていた

君の背中はとても自由に見 ....
 
さらわれた
海にさらわれた
ことを的確に言うための
言葉があったはずだ

ぼくらは生きたり
死んだりしながら
いろんな類いの言葉を
理解してきたけど
そのどれもが怪しくなってき ....
 
なつかしいひとよ
あなたのことを
わたしは知らない

なつかしいひとよ
記憶とは
つくりものでしかなかった

なつかしいひとよ
はじめて会った日のことを
覚えているだろうか
 ....
 
羽がなくても
ひとは空を飛ぶ
鳥でした

片方をなくしてしまった
羽を見つめながら
ひとは
時々そう思うのでした

かつて
手をつなぎあって
羽ばたいていた
時間がありま ....
 
車に轢かれそうになった
安全な横断歩道を
渡ろうとしただけだった
君を庇えなかったことや
庇わなかったことの
すべてが脳裏を過ぎてゆく
そのとき車は
ぼくらの手前で停止した
から ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
北風に乗って自由詩108/12/25 1:30
世界自由詩508/12/23 19:05
やさしい人自由詩508/12/23 6:15
三十九歳自由詩308/12/22 23:03
海辺にて自由詩308/12/22 0:55
空以外の空自由詩6*08/12/19 4:02
段差のない家自由詩6*08/12/16 5:30
エタニティ自由詩308/12/14 2:37
僕らの海自由詩108/12/13 4:03
生もの自由詩108/12/13 1:29
ピーマンショック自由詩3*08/12/12 5:42
十四冊目自由詩308/12/11 1:46
襖と醤油のある家自由詩008/12/11 0:46
ごめんなさい自由詩408/12/10 2:30
自由詩308/12/10 1:13
自由詩21*08/12/8 0:44
器具短歌1*08/12/7 22:55
どうしておしりあるの自由詩3*08/12/7 22:01
「夜ノ森ってどこにあるか知ってる?」と、貴方は悪戯っぽく自由詩3*08/12/6 1:48
つめたいビールが飲みたくて自由詩4*08/12/5 22:47
ウィスキー自由詩408/12/5 2:40
台所自由詩108/12/4 1:57
ファミリー・コンピュータ自由詩3*08/12/3 2:06
ただしい船自由詩408/12/2 23:38
椅子自由詩21*08/11/30 18:43
初恋自由詩408/11/29 22:36
さらわれた魚怪類自由詩1*08/11/28 2:45
なつかしいひと自由詩408/11/27 3:11
片恋自由詩108/11/27 1:53
ひとつの運命論自由詩108/11/26 2:28

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