こころが風邪をひくと
遠いどこかへ行きたくなる
誰かとバスを
待ちたい気持ちになる

まだ幼かった
あの日の僕と母のように
むかえに来たのが
バスではなかったとしても

見知 ....
 
いつからか
真夜中になると
ダンクシュートの途中で
目を覚ます

眼下には
シュートを終えて
遠いところへ歩きはじめる
祖父がいた

ボールがやわらかく
バウンドしながら
 ....
 
駅のホームで
乗り換えの汽車を待つ
少し味の濃い
月見そばを食べながら

かけそばにしようと思って
左ポケットを探したら
小銭が思ったより入ってたので

長い線路を
そばのよ ....
 
帰省した
夏に撮った故郷の写真

信じられないほど
輪郭は曖昧で
卵の黄身みたいに
白身に弾んだ

空の青さと草の緑
そして黄金色の土のコントラスト

溶けてしまうほど走っ ....
 
本家にはいつも
猫がいた
本家とよばれる所には
いつだって
猫がいるのだった

お盆とお正月に
本家に帰ると
やはり猫がいた
けれどもその猫は
おなじ猫ではなかった

お ....
 
僕は釣りに飽きて
木陰に隠れて自慰した

木陰から戻ると
大きな鯉でもかかったのか
父に借りた釣竿が
遠く沖に浮かんでいた

それは時々
生き物のように動くのだった

ボー ....
 
父さんと
楽天の試合を見にいった
けれども本当は
野球よりも球場を一周する
小さな汽車に乗りたかったから
父さんは入場券をポケットにしまって
試合が終わるまで
何度も何度も汽車に乗 ....
 
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる

えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う

目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて ....
 
とても幸せそうな家庭だった
それなのに
僕が帰ると言うと
君は泣きそうな顔をして
つまらなそうにうつむくのだった

いつか君も
僕の家に遊びに来た
垢にまみれた泥の顔をして
即 ....
 
野菜が野菜の味がしないし
なによりも
僕が僕の味がしないから
ごはんは船に乗った

旅に出るつもりではなく
綺麗な女の人に会うために
船は川でも海でもない
水があるところならどこ ....
 
見た記憶と
見たかもしれない記憶を
理解しあおうなんて思わないほど
ふたりで見つめ続けてしまう
ひとつの景色
 
 
子供の頃
よく胎児の夢を見た
まだ知らないはずの家族が
言葉ではない言葉で
話す声を聞いていた
その姿も見えていた気がする

胎児の僕は
母の子宮の中で
永遠に産まれないまま
 ....
 
子供の頃
日曜日になると
隣町まで習字の塾へ行った

習字よりも
塾をさぼって
町の本屋で立ち読みしたり
ゲームセンターでゲームしたり
そんな思い出ばかりが残ってる

ある日 ....
 
ほねを拾う
ひとつ残らず
なくなるまで

肉はない
あるのは
ひたすらほねだけ

ただしい
箸のもちかたを
おそわった
あなたに
ご飯をたべるように
 
 
夕焼けに
親指を立てて
田舎町のバイパスで
ヒッチハイクした

止まる車はなく
僕も止まることはなく
黄金色に染まる
雲に乗って
太陽は
旧道の町を
去って行った

あ ....
 
風呂の戸を開けると
いつかの僕が
髪を洗ってる

背中を洗ってあげると
ありがとう
そう言って
妻がしてくれてると思ってる

湯船には
いつかの祖母が入ってる
髪を洗う僕に ....
 
庭の土を見てる
花ではなく土を
理由もわからずに

そこに横たわる
土の言葉で
言葉などなかったように
懐かしく対話する

知らない時を生きた
土の中に
句読点をさがしたら ....
 
孤独の森に迷いこんだなら
出口を見つけることは
容易ではなかった

孤独の森を
歩き続けることは
苦痛でも
それは森のせいではなかった

森は伐採され
孤独は終わりのない
 ....
 
ニュースを繰り返す
缶蹴りの午後
配線のため

テレビを消す
敗戦が聞こえる
空に花が咲いてる

母はアンテナ修理する
一人しかいない
父を受信するため

カランダッシュ ....
 
闇の空稲妻光る音の陰校舎の鍵が雨の土に

サイレン鳴り覚めたる夜の屋根洗う肌色も火の蝋燭に揺れ

停電の床を浸水する花のあの恋がまだまたここに

落雷の地響き懐かし胃下垂の雨に沈める ....
 
なんていうんだろうか
都会の人は
標準語で
その様式も
振る舞いも
計算されたように
抜け目のない
魂のない
肉体のない誰かが
誰かによって
話してるようだ

時には
 ....
 
秋田にいた頃は
大曲の花火
毎年見ていたんでしょうね
と聞かれて
いやそれほどでもありません
と正直に答えると
信じられないような顔をされた

一人取り残されたように
NHKの ....
 
はじめて
家族旅行に行った
夜の宿で
そこは二楽荘というんだけれども
楽しいことは
一つや二つどころではなく
三つも四つも
心配など
なにもなかったから
いくらでも夢中にはしゃ ....
 
やわらかいものが
やわらかいものに抱かれ
育むものが
育まれたことをよろこびとした
この命の果てにある
未来がまだ懐かしかった頃

時は懐かしく
時はまた経験として
かつて見た ....
 
誰も知らない
丘の上に
時計台があった

誰も知らないから
動いても
止まっても
知らないのに
時計台は
時を刻み続けた

真夜中
僕らが見てる
夢の時を
正確に
 ....
 
納豆みたいに糸を引く
夫婦になりたい
なんてプロポーズはなかったが
ふと気づいたら
一緒に納豆を食べている
夫婦が糸を引きながら
そんな話をしてる
 
 
ありとあらゆる人生よ
ひとりだけでも
今日は雨
歩道橋に傘が咲く
名もなき花のかなしさよ
ふたりだけでも
雨ならば
きっと今日も
恋の雨
青信号はあの人の
赤信号は僕の雨
 ....
 
沈黙に耐えられず
埋め尽くすからだろう
言葉で

たったひとこと
言えたなら
それだけでよかった

傷つけようのない
言葉と言葉が
塞ぎかけた
傷口を開いてしまう

包 ....
 
演じることでしか
存在をゆるされない
かなしみは
命に及ぶ

遠いよろこびの
記憶のはてで
幻想たちが死に絶える

たそがれる
朝日を見るように
地平線に背をむけて
くっ ....
 
小高い
線路を走る電車から
同じ色ばかりの
屋根を見てる

同じ色の屋根の
あの色の
屋根の下で家族たちに
いったい何が
あったのだろう
と、思うと
もう次の駅に着いてる
 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
バス停自由詩4*08/9/29 0:21
真夜中にダンクシュート自由詩2*08/9/27 0:38
左ポケット自由詩708/9/26 2:09
秋に想えば自由詩008/9/25 1:46
毛を舐める猫自由詩7*08/9/23 23:29
しまい忘れた風鈴自由詩3*08/9/20 20:22
僕らの休日自由詩16*08/9/17 1:33
微炭酸自由詩11*08/9/14 21:41
青魚自由詩408/9/13 2:26
遡航自由詩5*08/9/11 1:50
ひとつの景色自由詩308/9/11 0:17
胎児の夢自由詩308/9/10 2:54
兄さんの背中自由詩508/9/7 23:17
ほね自由詩008/9/5 23:35
夕焼けヒッチハイク自由詩308/9/4 2:07
入浴自由詩608/9/3 0:22
花と土自由詩508/9/2 22:31
孤独の森自由詩3*08/9/1 23:35
カランダッシュと電波自由詩4*08/8/31 14:33
神様の夜短歌1*08/8/29 23:12
都会の人自由詩208/8/29 21:45
秋田の男自由詩2*08/8/29 21:10
未来がまだ懐かしかった頃自由詩508/8/28 21:13
自由詩708/8/28 2:19
夢の時計台自由詩308/8/28 0:17
納豆夫婦自由詩108/8/26 22:47
恋の雨自由詩108/8/26 0:32
傷口自由詩208/8/25 23:01
改版自由詩308/8/25 22:01
レトロつみ自由詩2*08/8/24 21:27

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