父は聖書を読んでいた
本屋さんの片隅の椅子に座り世間から隠れるように
家族から遠く離れていくように
哲学書の背表紙を意味もなく鳴らしながら
横目で父の姿を盗み見る

十戒を教えてくれたのは ....
牛乳の海から鶏ではない鳥が生まれた
実際に見てはいない
人づてに聞いた話

本当のことを言うと思うな
善人面した悪人がお前の芯まで食いつくし
真実なんか見えなくしてしまう

笑顔の向こ ....
夜なきをしていたうちのわんこ
とうとうお空のわんこになった
朝仕事に行く前に地面に眠る彼を見て
ああ、いってしまったと唐突に思った
鎖につながれたこの古びた家の狭い庭から
足取りも軽く
広 ....
小説を書いている
けれどいつも終わりが思いつかない
そんな小説が今日7作目になった
ちょっとだけラッキーなんて
冗談なことばかり考えながら
今パソコンの前で足を冷やしている

いつも終わ ....
手の届く範囲にある
ジンジャークッキーとジャスミンティー
白い窓にモスリンのカーテン
向こう側は雪の女王の舞う銀世界
温かなスリッパから抜け出した子供達

オレンジの誘う暖炉の前で
少し ....
最近うちのわんこが夜なきするのさ
夜風がひゅーひゅうと音をたてて
窓ガラスをガタガタと鳴らし脅かしてくる
小屋から出て一匹
しっかり地面に足をついて
夜空に存在を誇るようにないているのかと思 ....
久しぶりにこの地に雪が降った
雪の降る朝の空は冷たい味がする

日の光が淡い空の向こうから染み込んでくる
沢山着込んでしまいたくなくて
わざと足を冷やしながら
そろそろと雪をまとう

 ....
紅を差そう
朱色の布をまとわせただけの軽い体を起こして

襖の向こうでは三味線と声
硬い布団と一緒に沈んでいく長い黒髪

艶やかな声
媚びる声
細く白い足の影が
いくつもこの小部屋の ....
朝のラッシュ
車窓から空を見ている
空を隠す建物が透明になって
オレンジ色の光がまぶたの奥に沈んでいく
背中では別の人が空を見たそうに
少し宙に浮いている
こんな閉鎖的な空間に紋白蝶が現れた
出口もないこの部屋で
青空を求めて
ひらひらと踊りながら
わたしの手をすり抜けて
荒れた指先をかわしながら

体の動きが緩やかになっているのはわた ....
戦争の詩を書こうと思う

小学校の暗い図書館の隅に見つけた「はだしのげん」
戦争という言葉がまだ現実味を帯びていなくて
まだ子供だから分からなくてもいいなんて
そんな生ぬるい世界にどっぷりつ ....
駄菓子屋で買った苺味のキャンディー指輪
ルビーねと
くるくると踊るようにスカートがゆれる
まるで白い蝶ちょのようなきみの左手をとって
色とりどりの光が射しこむステンドグラスの前で
厳かに指輪 ....
窓から広がる緑の海
この風に揺れる海を身近に
鏡のむこうのわたしは歳を重ねてきた
年を経るごとに何かを失って
その度に必ず新しい何かをもって
次の年に向かっていった
緑の海はさざ波のように ....
真っ白な紙を前に途方に暮れている
昔なら何も迷わずに
筆いっぱいに色とりどりの絵の具を染み込ませ
描きなぐったのに違いない
誰のことも考えることなく
自分というものをもって
確かに楽しかっ ....
車を運転していても私はすぐ近くばかりを見ていて
遠く先まで見ることを指示されてようやく
改めて世界は広かったことに気づいた
それは指示されたことに従っただけなのだが

狭い世界で怖がってしが ....
ある日喉に針が刺さり私は歌を歌えなくなった

青空を見上げて風に乗せて自由に空を飛び
あの青々とした木々のどれかで羽を休め
あなたのためだけに歌を歌うのが好きだった

私の声はあなたをくす ....
確かに泣きながら

彼女は確かに声を押し殺し
誰にも気づかれないかと怯えながら泣いていた

薄い壁の向こう側で彼女の淡い恋が砕け散ったのだ

本当に可愛く綺麗になったと
それがある日
 ....
一人布団の中で

胎児のようにまるく
怖いものから隠れるように

窓の外では遠くの夜の祭ばやしが
細く、けれど決して途切れず手招きしている

ますますしっかりと布団を抱き寄せ
耳を押 ....
縛り付けたいと子供のような駄々をこねているだけ
母に似ていること
それは嬉しくもありどうしようもなく苦しいこと
何か怖いものから母は必死に逃げてきた
理由の無い恐怖が母に安らぎを与えることなく ....
街角で黒い蝙蝠傘の君に出会った
夕闇に隠れてこちらから顔は見えないけれど
黒い傘からちらちらと映える赤い紅の色が卑猥で
どうしようもなく赤面してしまったことを覚えている

こんな記憶に必死に ....
本屋で官能小説を難しい顔をして読んでみる
ん、違うとか時々こぼしながら
直接的な表現よりも
唇をなぞるとか
汗ばむとか
息遣いがとか
そんなフレーズに少し気をとられながら

寂しい一人 ....
わたしは怖がりだから

久しぶりに会ったあなたが
ますますかっこよくなっていることが怖いの

何もあなたを拘束するものを持ってはいない
永遠にあなたのそばにいられることも分からない
それ ....
相手が自分を好きかなんてどうしたら分かるのでしょう

人魚姫に足と運命をあげ
引き換えに声を奪ったあくどい魔女の子孫に聞いてみても
私の歌う声は飛ぶ鳥さえも落としてしまうので
結構よと言われ ....
こんな気分になった日には
ハリネズミになって
近寄るやつらはみんな刺しまくってやる
痛がって
怖がって
嫌って
たとえそれでもいいから
かまって
こうもりの羽を背中に乗せて
黒くなかった?それの形は?
本当にとがっていた?
間違いなく黒い?
だってそうだろう
あの子は間違いなく白いワンピースの似合う
両手に抱えきれないくらいのハート ....
ねぇ、愛されるってどんな感じと
黒髪のあなたはそう呟いた

歳が離れていること
黒髪を短く切りそろえていること
黒猫があなたに懐いていたこと
年老いた両親と共に荒れ果てたゴミ屋敷に住んでい ....
王子様がお姫様になった時
ライオンはがおうと吼えた
魚が美味しいのが唯一の国
生臭くはない
ライオンは魚が好きではないのであいまい
がおう
賛否両論も面倒だ
幸せになればいいではないか
 ....
去勢したカストラートの映画を友達と二人で
眠ってしまった友達とは違って
人知れず食い入るように見つづけていた
この世のものとは思えないほどの声を保つために
兄が弟を自らの手で

不思議なざ ....
音楽が最強の武器なんていったのは誰だっけ
昔はただ耳障りなだけで嫌いだった音楽も
ここ最近は癒しに変わった
いくらか昔よりうまく生きられるようになったのかもね
緩やかな時から
激しく変わる時 ....
駅中で新聞紙にくるまり眠りにつく
彼らはドワーフなのよ
金塊を掘ることを得意として
一心不乱に働き続けたけれど
近代化の波に押し出され、帰るところを失った
ドワーフのなれの果て
少しでも暗 ....
暗闇れもん(406)
タイトル カテゴリ Point 日付
十戒自由詩3*07/1/25 0:35
自由詩1*07/1/20 23:04
うちのわんこ(2)自由詩2*07/1/20 22:47
小世界自由詩1*07/1/11 14:38
暖炉[group]自由詩2*07/1/6 22:21
うちのわんこ自由詩1*07/1/6 22:08
ねこにんげん(7)自由詩3*06/12/31 19:46
自由詩4*06/12/2 20:31
朝焼け自由詩4*06/12/2 20:14
紋白蝶自由詩5*06/8/31 22:13
終戦記念日自由詩3*06/8/15 18:56
指輪自由詩4*06/8/6 22:47
さざ波自由詩1*06/8/5 22:07
白紙自由詩5*06/7/31 22:36
自由詩3*06/7/27 22:45
剥製自由詩1*06/7/24 23:59
彼女自由詩1*06/7/15 22:42
自由詩1*06/7/15 22:25
隔離病棟[group]自由詩5*06/6/22 22:27
蝙蝠傘自由詩2*06/6/11 14:56
一人遊び自由詩3*06/5/28 4:29
めまい自由詩2*06/5/28 0:19
海の魔女[group]自由詩2*06/5/27 9:22
トゲトゲ自由詩006/5/23 18:52
コウモリチョコ自由詩3*06/5/15 21:51
黒猫自由詩1*06/5/14 22:52
がおう自由詩1*06/5/14 22:08
楽園の前へ自由詩0*06/5/10 23:25
飛行自由詩1*06/5/10 18:53
ドワーフ[group]自由詩1*06/5/2 23:41

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