線路の向こう
ビルの谷間の三角地
そういう辿り着けない場所に
オレンジ色のコスモスが
揺れている
ささやかな風景は
しかし、すぐに電車の音に
塗りつぶされてしまう
それでも
元気 ....
駅前に無料相談所があった
男の人に相談した
普通の感じがする人だった
無料だった
銀行強盗を終えたきみと待ち合わせて
涼しい喫茶店に入った
二人でチョコのパフェを頼んだ
周り ....
がらんどうの僕の胸に
柔らかにきみがふくらむから
メールではなく
涼しい便箋の手紙を送ろう
ああ、住所をしらない
しらないから
ギクシャクしちゃう
もっと練習しておくんだった
いろ ....
雨が降れば身を隠し
雪が積もれば寝て過ごす
土が乾けば潜るだけ
ちいさなものの抵抗は
耳を掻き掻き 目を瞑り
匂いがしたならそっぽを向いて
口を結んで逃げてやる
だれかを ....
今日、世界は晴れている
引用句を継ぎ足してつくられた飛行場から
貨物便が離陸した
生き物の涙や汚れたシーツ等を積載して
至るところに扉をノックする人がいて
人にノックされる扉 ....
」赤信号をちゃめっけに渡ろうとしてやっぱり誰かに轢かれそうになってしまった 。
――国道で止まってくれるひとなんかいない 。
そのために「青信号があるだろう」 って 警察のひとから叱られた ....
錆びた釘 カンの切れ端 木屑をめくれば虫
雪で潰れた物置小屋の腐らない破片をさらう
小さなスペースに散らばっている小石
両手で包み バケツに集める
土台と共に 捨てられる礎
....
スクランブル交差点の真ん中でひとり
ちきゅうにやさしい
すき焼き・しゃぶしゃぶ食べ放題
四人様からお願いします
と店員さんには言われたけれど
自分の養わなければならない細胞の数を ....
水に汚れた草花
ヒトは抗弁を繰り返す
木漏れ日の中
黙とうの中
唇と弾とが交わる
契約は成立したのだった
外側からしか見えない
古い木枠の窓辺に
あなたが車椅子に座ったまま ....
電話がかかってきて
行ってしまった
幸せになるんだ
といって
コケリンドウの
花をみつけた
ちいさな青
の付け根のあたり
淡く
消えそうなものに
私はいつも憧れる
たくさ ....
窓ガラスに
幼い指紋がついていた
指紋をめくると
それは昔の日記帳だった
歩道橋で終わっていた
日記の続きを書くために
歩道橋を最後まで渡り
階段を下りた
まだ小学生で
....
大根の上に
小さな虹がかかっている
きみは虹を切らないように
器用な手つきで
大根を切っていく
飛行機がいつもより
低く飛んでいる音が
屋根の上にある空から
聞こえてく ....
沈みゆく陽の揺らぎ
それは
遠く、ただ遠く
待つことの幸せ
青いさかなの首飾り
それは
諍いのない空の果て
明日を生きる
水のこと
夜光虫の静かな灯り
ちいさく
名前を呼 ....
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶 ....
明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている
水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
大きな右腕のはさみを振り上げながら
あちこちで何かを話し合っている
静かな潮騒になら負けないくらい
その小さな声は辺り一面に満ちている
プチプチと話すのは毎日の事
今日はいい天気ですね
....
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
....
{引用=
黒が似合うようになりました
白はちょっと 気恥ずかしくなりました
女になったのはいつ頃でしょうか
どんなふうにしてでしょうか
化粧が上手くなった頃でしょうか
愛するからで ....
白線の内側に下がってお待ちください。
白線は自分で引いてください。
内側と外側は自分で決めてください。
白線の外側を
一匹のシオカラトンボが横切っていく
軟らかくて
....
正午の光が見える外
ゆらゆらと揺れる私を
あなたは見てくれている
狭いとは思わないけど
広いとも感じない
本当は海がいいんだろう?って言われても
だって意識がないんだもん
私がど ....
雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる
民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろ ....
母の仕事は
台所にはない
繕い物にもない
ただきみの笑顔のなかにある
母の仕事は
叱るでもなく
抱きしめるでもなく
届かない掌を握り締めること
母の仕事は
喜びでもなく
悲 ....
十二月の
さみしい水の底から
きみのささやきに
耳を澄ませる
ふるえる感情の
ひとつ ひとしずく
その波紋
その不自由
どうして人は
急ぐのだろうね
日時計の影が
伸び縮 ....
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で
ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く
貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う ....
空はどこまで
ってきく君の
求めている答えは
わかっていた
あのとき
君の肩は細くて
花びらを
青い水に散らして
一文字ずつ撹拌する
結実してしまうものが
何もないように
....
不安な気持ちでたまらない、と
夜、入院している父から電話があったので
病院まで行く
今日はリハビリ頑張りすぎて疲れちゃったんだね
そう言って落ち着くまで父の頭を撫でる
その帰 ....
これは たまらないね。
とふりかえると
そこに君がいない
そんな間違いとか
勘違いとか
ずるいことなんか
を教えてくれる小説が
本棚に詰まってゆく
ねぇ
Мさんなんか ....
見ていたいのは夕焼けとか朝焼けとか霜焼けとか日焼けとかニューヨークのマンホールガールズとか死に際のマシュマロです。
愛してるなんて恥ずかしくて言えたもんじゃないんだって笑いながら愛してる愛 ....
夏の夜風にあたろうと
歩いたいつもの道影に
黒い{ルビ塊=かたまり}が、ひとつ。
四つん這いの蛙はぢっと
夜闇を、睨みつけていた
翌朝歩いた{ルビ同=おんな}じ場所に
....
緩やかな助走から
蹴伸びする季節が
完成されたフォームで
越えてゆく
夏の高さ
背中に近いあたりの
肋骨を支えている
僅かな緑陰を選んで
少し歩いて
少しの水を飲む
* ....
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