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ある場所で
点、として生じた光りが
わずかな距離を移動して
塵となる
それを一生という

かきあつめたもの
握りしめたもの
すべて消滅してしまう
けれども

細い雨のあとの
植 ....
不器用だから
泣きじゃくって
のりしろは全部
切り落としてしまった

僕、という立体を
通りぬけてゆく風
端っこがめくれて
ビラビラしている

無理しないでね、と
幻のような声を ....
近くなり遠ざかる海のかさなり
乳白色の巻貝の奥に
うずくまる内蔵
砂となった記憶の粒を探して
耳の感覚だけになる

ふくらみ、しぼむ浅い眠り
とうに輪郭をなくした風の面影に
なつかしい ....
ひとであったような気がする
初めから
ただの意識だったのかもしれない
どちらにしても
たいして変わりないだろう

何がしたい、なんて
真面目にきくなよ
浮かんだそばから
シャボンみた ....
何もないところから生まれて
ふりそそぐ雪片
その結晶の
ひとつひとつを確かめたい
純粋で
静かな構成に
私は憧れる

かつて卵だったころ
なにも知らなかった
幸せも、不幸も
ただ ....
湯船に沈んで
樋から流れ落ちる
雨の音を聴いている
植物石鹸の楕円と
豊潤な湿度

*

砂時計の沈み込む
流砂を視ている
ぼくたちは砂漠のなかの
バンドウイルカ
疲れたら、休 ....
あるかなきかの
かすかな身じろぎに
あるいは
とりとめのない
呼吸の満ち引きに
歩幅を合わせる

小さな宇宙の
無限のひろがりを浮遊する
みる、でもなく
わかる、でもなく
ただ感 ....
線路の向こう
ビルの谷間の三角地
そういう辿り着けない場所に
オレンジ色のコスモスが
揺れている

ささやかな風景は
しかし、すぐに電車の音に
塗りつぶされてしまう
それでも
元気 ....
がらんどうの僕の胸に
柔らかにきみがふくらむから
メールではなく
涼しい便箋の手紙を送ろう

ああ、住所をしらない
しらないから
ギクシャクしちゃう
もっと練習しておくんだった
いろ ....
電話がかかってきて
行ってしまった
幸せになるんだ
といって

コケリンドウの
花をみつけた
ちいさな青
の付け根のあたり
淡く
消えそうなものに
私はいつも憧れる

たくさ ....
沈みゆく陽の揺らぎ
それは
遠く、ただ遠く
待つことの幸せ

青いさかなの首飾り
それは
諍いのない空の果て
明日を生きる
水のこと

夜光虫の静かな灯り
ちいさく
名前を呼 ....
明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている

水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
十二月の
さみしい水の底から
きみのささやきに
耳を澄ませる

ふるえる感情の
ひとつ ひとしずく
その波紋
その不自由

どうして人は
急ぐのだろうね
日時計の影が
伸び縮 ....
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で

ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く

貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う ....
空はどこまで
ってきく君の
求めている答えは
わかっていた
あのとき
君の肩は細くて

花びらを
青い水に散らして
一文字ずつ撹拌する
結実してしまうものが
何もないように

 ....
緩やかな助走から
蹴伸びする季節が
完成されたフォームで
越えてゆく
夏の高さ

背中に近いあたりの
肋骨を支えている

僅かな緑陰を選んで
少し歩いて
少しの水を飲む

* ....
くるぶしを浸した
海の底の
遠ざかる砂に
裏返る
また少し君のこと

舞いあがる
風のゆくえに
どんな不自由をみたの
何もない空に
探してる
君の糸口

いくつかの土くれは
 ....
「急に泣きたくなる」
という設問を読んで
泣きそうになる

つきつめると
あふれてしまうので
空みみのふりをして
「いいえ」に丸をつける

+

淡い花のきもちになって
窓の外 ....
どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう

過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭 ....
牛がこない
遅れるなよと言ったのに
メールさえ返ってこない
電源を切っているのだろう

遠くに
うすちゃ色のまーぶるがみえる
きっとあれだ
おーい、と呼ぶ
MOO―、と感情を長くのば ....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける


くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
耳から
抹茶がこぼれてしまうという
朝になるとシーツは
たっぷり緑を含んでいて
洗うたびに
深みを増していくのだという
(この時期だけなんですの

さして困ったふうでもなく
さらさ ....
山になった洗濯ものの回りで
君は
春のような
スキップを踏む
  {引用=おうちを買わなければ、よかったね
だって、お金持ちだったんでしょ?
たた、たたん}
ちいさな袖をそろえて
重 ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
草野大悟さんの佐野権太さんおすすめリスト(24)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
六月のミーティア- 佐野権太自由詩13*13-6-14
僕、という立体- 佐野権太自由詩8*13-4-26
春の巻貝- 佐野権太自由詩8*13-3-19
すぎてゆくもの- 佐野権太自由詩9*13-3-1
雪片- 佐野権太自由詩11*13-2-16
かすかなひとたちへ- 佐野権太自由詩512-4-13
ちっちゃいもの倶楽部- 佐野権太自由詩7*11-10-26
なんとか水曜日まで生きてきました- 佐野権太自由詩11*11-8-12
お願いジュール- 佐野権太自由詩5*11-8-6
りんどう- 佐野権太自由詩21*10-9-7
パピルス- 佐野権太自由詩7*10-7-7
水色の車輪- 佐野権太自由詩21*10-7-2
ピアニシモ- 佐野権太自由詩28*09-12-12
貝夢想- 佐野権太自由詩16*09-11-27
水色スケッチ- 佐野権太自由詩14*09-9-28
夏ゼロ- 佐野権太自由詩6*09-8-16
貝むらさき- 佐野権太自由詩20*09-5-20
選択肢- 佐野権太自由詩30*08-12-2
いきものがかり- 佐野権太自由詩22*07-10-22
牛とあるく- 佐野権太自由詩24*07-8-13
海の日- 佐野権太自由詩38*07-7-24
抹茶佳人- 佐野権太自由詩31*07-6-1
はだかんぼう- 佐野権太自由詩45*06-11-28
檸檬色の夏- 佐野権太自由詩39*06-8-24

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