早稲田にも
青山にもなれなかった
予備校の街で
私はその年の夏を過ごした。

現役生のフリしたまま
講義を受けて
教室を出ると
ミンミンゼミの大合唱。

ミンミンゼミは
ミンミン ....
一滴の水の中へと
沈殿してゆくひと夏の青空が
無呼吸で深遠へと降りてゆくので
圧迫された半円の夏空その低空ばかり
飛び回る鴉たち
重たく旋回しては羽を乱散させ
またしても映り込む水の中
 ....
足音 は
ほっておくとどんどん先に進んで
呼び止められると不満を洩らす
体 は
手足を動かすことに夢中で
なにを訊かれても聞こえないふりをする
心臓 は
なにかあるたびペースを乱して
 ....
  
    

  狐のかみそりが赤く咲いていた
  藪のある舗装道路だった
  ぼくが轢いたのは蛇だった
  チュ−ブのようないきものだった
  前輪でごつん 後輪でごつん
  ぼ ....
  
   今でもサンタナを聞くと
   どっと夏がやってくる
   お祭りなのだ 蝉時雨のように
   夏の耳を 熱くするのだ
   サンタナがやってくる
   胸があつくなる  ....
残業もそこそこに
今夜もいそいそと帰ってきた
玄関のすぐ脇の部屋で
かつて母だった生き物が
また呻いている


父の三回忌を済ませた頃から
母は溶け始めた
ビデオテープのように過去を ....
煙草を灰にするように
死に体の鴉たちが一斉に飛び立ったので
空が夜みたい
狭い空ばかり見ていたから
わからなくなるのです
こんなとき
天井がもうきついそうなので
僕は唾を飲み込んで
君 ....
読みかけの詩集を逆さまにすると
文字の列たちは
不ぞろいのビルディングになりました
そして
下のほうにあった余白は
広い空に
しばらくその様子に見とれていましたが
何かが足りない気が ....
魚が手紙のようなものをくわえたまま
道の真ん中で力尽きているのを
少年は見つけました
水を泳ぐ魚にとって
ポストはあまりに遠かったのでしょう
少年は手紙のようなものを
代わりに投函しました ....
あなたがたがそのように日々わたくしを名付けていくとしても
わたくしにとってまさしく霧のような
それは一寸の先も見えぬ濃霧のような
わたくしとわたくしでないものとを遮断して
穴という穴か ....
時計が遅れたり
進んだりするのを気にする人は
何よりも時間の大切さを
知っている人です
けれど
時計には時計のペースがあることを
忘れないでほしい
など
ホームの水飲み場で
あな ....
バナナが一本
海を底の方へ
ゆらゆら
落ちていきます
見たこともないその物に
身を翻し逃げていく
魚たち
大きなクジラが
大きな口を開けて
ザブンと飲み込む
夜、台所に行くと
 ....
 負け犬の夢を見ていた。そいつは私で、私はそいつだった。惨めな悪感情が私のうちに渦巻いていた。自己を対象化しきれずに、半端な逃げ道を見出したのだろう。それにしても、まだ覚めないのか、私は。

 犬 ....
縁側で闇を見ている妹の白いうなじが僕を呼んでる


夏野山汗ばみながら駆けてゆくゆくえふめいの妹の兄


鉄塔の錆びた階段昇りゆく100階したから姉とは呼べづ


鏡台に映る妹べにを ....
 黒というよりかは藍色の夜空を羽虫が通過した。深夜のコンビニエンスストアー。壁面ガラスには黒い点が、わさわさしている。ため息をつきながら、私はキンチョールの煙をその点々に振りかけていく、そうして落ちて .... 鉱 山 や 氷 河 期 抱 き 耐 え る 夏


網 戸 ご し 細 か い 夜 が 並 ん で る


盆 支 度 墓 の 間 に 間 に 少 女 た ち


盲 目 の 父 と ....
新しい音が鳴り出すと
見上げてしまう癖がついた
国道沿いの滲んだ校舎の上
スピーカーが漏らす
ひずんだ音
ずっとずっと変わらない
ひとつ
呼吸のように響いては
震えている何か


 ....
もう何年も前のこと
ある夜のブラウン管の中
孤高のステージで
赤毛を振り乱して歌う{注ジャニス=アメリカの歌手}

夭折した彼女の生涯を
ナレーターが語り終えると
闇の画面に
白い文字 ....
七日目を待たずに
未完成の球体をもてあそぶ少女が
白の断片を拾い
主体を隠す
まもなく
発火するだろうパンドラの箱
遂に
僕らの目醒めを待たぬまま
「ほんとはね」
爆弾を仕掛けてるの

あなたの急所を
探り当てたよ

遠まわしに少しずつ
見えないように
わからないように
気づかれないように

ねえあなた燃えちゃうよ
燃えち ....
        
    
     


 ぼくには子供がいない
 そのことは太陽のようなことなのだ
 ぼくには子供がいない
 そのことは月のようなことなのだ
 ぼくは一個のDNA ....
         


     サキは笑った
     蛸がパソコンを操り始めたからだ
     赤くなって蛸はワードをうちはじめたのだ
     蛸はなにが書きたいのだろ ....
ペンキ職人
天野茂典




青いペンキ


台詞のない声
遠くからやってくる海
炎の青空
どこにも出てゆかない砂
ぼくの病棟が乾燥している
シマリスとあそんでいる
ナキ ....
 もう
 利用価値がないと

 もう
 飽きたからと

 もう
 存在自体がウザったいと

 悪友たちは
 僕の存在を否定した

 僕の「生きていたい」と叫びは
 彼らの ....
とってん
からから

ちまたを
ゆく
とけいと
ぼくの
とってん
からから
ときを
きざむ
ほうそくは
ちょこっと
そくどが
ちがう

ふと
みぎどなり
す ....
満ちる空に逢おう
欠けたままの自身で


雨や雲や雪や風の子供として
ボクは歩き歌い眠る


隠すものも
隠されるものもなく


ボクは今宵も
欠けたまま

満ちる

 ....
女は
胎内に新しい生命を宿したら
「母親」になるというのに

男は
新しい生命が誕生してから
「父親」になる権利を得る
のだろうか

それは
目の前に細く頼りない道が一本
 ....
泣くのが
難しいときは

笑うのも
難しいとき


ちゃんと
泣けるときは

ちゃんと
泣いとこ
降りしきる雨の中
傘もささずに俺たちは歩いた
死ぬほど歩き続けた
けれどそれで
俺たちが死ぬことはなかった
俺たち いい奴だった
俺たち 輝いていた
俺たちは生の肉だった
俺た ....
右手を挙げると
鏡に映る自分が左手を挙げた
右手を挙げさせるために
僕は左手を挙げる
外の方から小さな鳥のような鳴き声が聞こえる
空はまだ晴れているだろう
午後は爆弾を買いに都会へと行 ....
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