私たちはいつも
ささやかなものを守ろうとして消えていく
それが私たちであって
それ以外の私たちはいない
私たちは確かに
生きていないまま生きなければならなくて
そして躓いたまま死ん ....
波打ち際の流木に
白いワンピースの後姿
沖に向かって風が吹いたとき
彼女の瞳は
黒曜石のように輝き始める
白のスカートを翻して海を渡り
愛した故郷の港や島影が遠くなると
こ ....
幸せになりなさい
私の分まで幸せになりなさい
こんなところに君はいてはいけない
こんな暗闇の中に君はいてはいけない
私は放っておいてはやく行って
光射す眩しい世界へ
私はここから出れな ....
音符が遊ぶようにして電線をくぐり
時折、絡まってはファルセットになる
美しく奏でるための
言葉たちは、そうしていつも
行き先を探していて
夜、は手招きをはじめる
屋根、そのオクター ....
世界に追いつけないでいるわたしに、椅子が用意され
明日という不在について語れと言う
目を閉じたときにだけ、
かつて捨ててきた言葉たちが 戻ってくる
根を、そこここに生やしては 日々 ....
朝おきると
窓の外
雪がふっている
ふとわたしは
ゆきちゃんのことを思い出す
歯を磨いてるときも
窓の外を見て
ゆきちゃんが
ふっている
と呟く
ゆきちゃんってだ ....
むら雲の輪郭を
指でなぞれば
切りすぎた爪のあいだにも
入り込む冷気
雪のうえに取り残された
林檎のかおりは
まだ風のなかに漂って
わたしを追い立てる
明らんできた外界の
塀のうえに ....
コンタクトとあるく
壁、街灯、空、あと、電柱
顔のないものにさえ
こんなにも融和を拒まれていることなど
とくに知る必要はなかった
だけど毎日確かめないと歩けない
これがないと私 ....
東から西へ
クリークのような商店街の上を
滑空する
コンビニの角を南に曲って
コソコソとパチンコ屋へ向かう
八百屋の若旦那を左目で見ながら
西から北へ
生易しい北風を切り裂く ....
睦びあう二人は
strangler trees
だけど
脆いものを抱きしめすぎてはけない
星飛沫
ふぃっしゅふらいっしゅ
静かに着陸しよう
集言灯かざして
有管鰾魚類すなどる
....
◆君はあの狼の群れを見たかい?月が僕にささやいた。
君はあの岬の向こうの羊番だろう?私は知っているよ。
月は何か人違いをしていた。僕はあの岬の上の墓守だった。
月は何か嬉しいようにささやいた。僕 ....
出会いを点にして
ブックに落としたら
模様ができるくらい
数になった
すれちがいを
修正したくて
その点どうしを指でつなげた
寂しいとおもい
落とした点は
透けているので
....
しあわせ
ひとりひとりが
みんなでいっしょ
声は要らない
心地よい融合感
向かい合った頬の
熱く桃色に発光する
その点滅を伝える
ひとまわりの回路が
黒々とした睫から始まる
....
動物がほとんどいなくて、すきっ歯な林だけがあるような
そんな植物だけが林立する場所にも、空き缶は捨てられていた
その缶を水が徹底的に錆び付かせ、風が土に埋葬した
泥に溺れそうな缶詰の、淵が顔を覗 ....
同じ図書館は二つとないね
どの図書館も違う
引っ越したあとも使っていた
利用者カードの期限が来て
今度は更新できない
一度別れてしまった恋人の手や髪や唇には
二度と触れられないよう ....
まだ名づけられていない、
連続する瞬間で構成された時間を
拾い集めつづけても
綴じるためのすべを、忘れてしまった
わたしたちは、かわるがわるに
世界を四角く切り取ったり
はが ....
夕暮れの水位は
さざなみ
浅い胸に、さざなみ
空白で埋めたはずの
小さな画布が
素朴に満ちてゆく
海面に浮かぶ
危うい杭に
うずくまる鳥の
膨らませた羽から
零れる文字のやさし ....
今日はあの人に会う。1週間振りに会う。
どんな顔してたっけ?思い出そうとするけど上手くいかない。
でも、あの人のことを考えると心臓がいつもと違うリズムで動き出す。
あの人のことを考えると ....
シャボン玉のなかの、人気の無いシャッター通りを
くぐりながら、眠れない半分の顔は暗闇の書架を見上げた。
玩具の戦争が終わったら、地平線のうしろに隠してある
重油の山を売り払って、腹が裂け ....
深夜二時過ぎ 携帯のサイト覗いて
甘い言葉を書き連ねる 物語に吐き気がして
慌ててトイレに駆け込んだら 何処からか血の匂いがした
掻き消すように 狂ったカクテル喉焼けるまで飲み干して
動けなく ....
大きな光、強い光
夜に入るまで
どこでなにをしてた
いちばんぼーしいみいつけたあ
闇に包まれることで
見えてくるものがある
これをだれかに伝えなくちゃ
ど ....
2001/02/02
宿題すんだら水汲みに
宿題すんだら水汲みに
宿題すんだら水汲みに
宿題の五月は逆さまに
三月は四角にされて
二月の雪を隠し ....
殺風景なガラス張りの待合室に覚える
独特な曖昧さを避けてみるのも一興と敢えて
乾いた風の吹き抜けるホームに佇んでみた
乗ろうとして乗らなかった準特急の走り去った先には
見覚えのある古い建物 ....
「 いってきます 」
顔を覆う白い布を手に取り
もう瞳を開くことのない
祖母のきれいな顔に
一言を告げてから
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く
散歩日和の道を歩く
....
一反木綿
ブランドって何でしょう
トレンドって何でしょう
ステータスって何でしょう
セレブリティって何でしょう
誰かの視線につながれた風船になるよりも
飾り羽が多すぎて飛べ ....
*
その声はとても高いところから来た
雲より発し、雨滴とともに地上へ降りてくる
その声にすこし遅れて雲が降りてくる
山肌を滑り降り、谷間を霧で充たす
立ちならぶ鉄塔が山肌を刺繍する
鉄 ....
オレンジ色の色鉛筆だけ
削るのはなんだか勿体無いから、
ピンクのコードとグリーンのヘドフォンを
水溶きしてキーボードに塗ろ(うそ)したら
バナナは皮だ、けみかるウォッシュの(ジーン)ズ
さか ....
こころ秘かにそう呼んでいた
――温泉宿ではなく海辺の一軒家を
灰褐色をした雑木林と
露出した山肌が囲み、
いつからか戻らなくなった主の代わりに
月に一度か二度、ぶらり現れては泊まって ....
君を見つめて
君に触れようとして 触れられなくて
君からあふれる
光に目を閉じて 瞼の裏に暖かいぬくもりを感じた
思わず閉じた瞼を開けると そこにはもう 君はいなくて
周りを見渡してみて ....
ランドスケープでみるゴーストに笑いかけてみる
歯茎が乾いてしまった
あたしは隆起した巨大なステージ
たとえばアリゾナをバックにスナップをとる
「もっと自然に!」
つきだしたピー ....
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