君の声があまりに優しすぎるので 
僕は泣いてしまう

ほら 今 朝を迎えて
少しだけ大人になる
変化を渇望して そして恐れた
いくらでもそれを繰り返すのだね

もうどこにだって行ける
 ....
同級生はドラッグストアで働いていた
名前はみらいちゃん と云った

休みの日には呼び出されて
公園を匍匐前進させられたり
炎天下の坂道を延々往復させられたり
首を革紐で縛られたり
草を食 ....
みんな大好き!
と叫んだアイドルがいた

その場の誰もが
「みんな」には自分も含まれている
と信じようとして
アイドルの名前を大声で叫んでみたりする

「みんな」
そして「わたしたち ....
三日後にわたしは 
三十三年間着ていたわたしを脱いで 
風の衣を着るだろう 

その時世界の何処かに響く 
あの産声が 
聞こえて来る 

その時空から降る 
透けた掌と差しのべるこ ....
{引用=(きこえる)}


プールへ出掛ける
こどもたちの声
真っ黒になって
かえってくる



ノートには
書きかけの小説
風に吹かれて
めくられていく
白い ....
息してるよ
僕は息してる

生きる方法は知らないけれど
呼吸の仕方はなんとなく知ってるよ


息してきたよ
僕は息してきたよ

退屈なんかじゃなかったよ
したいこと ....
ひ弱な言葉のみを綴る時代は既に終りを告げている
言葉のなかに毒を、活力の基になる滋養を深く練り込め
そして大きな讃歌と散華を我々の眼前に披露してくれ
お前なら、十二分に其れが出来る筈だ
とおいとおいむかしから
ほしぞらの中に
ぼくたちは住んでいて

三年にいちど
地上へ水を飲みに降りる時は
ロープを一本垂らし
それを垂直に降り
まる三日間かけて
水場に到着する

 ....
3歳になったばかりのひぃちゃんが
裸足でおんもに飛び出して
水溜りで遊んでる
空から大粒の雨がぼぼぼ
大きな傘差したひぃちゃんは
しゃがんでかえるさんとお話よ

ゲロゲロぎょっとびっくり ....
あなたが巡らす透明な壁のどこかに
?ほんとう?に続く扉があって
あたしは今も
それを探しているんだろう

本音のようなものをさらして
身にまとう距離感
愛想よく笑いながら
人間関係はゲ ....
(1)

あなたにはじめて出逢ったのは
この廃屋が未だ駅舎として機能していた頃のこと
夏草の浸食に怯える赤錆びた鉄路と
剥がれかけた青森ねぶた祭りのポスターが一枚

この駅を訪れるひとと ....
二年ぶりの胸は

耳たぶのようだった

巨大化した耳たぶ

快楽の跳ね返りのない


むかし助手席から

蹴りだされたおんなは

蕎麦屋で落ち合ったあと

部屋に誘ってき ....
この手紙を読んでいるころには
私は世界から消えているでしょう。
これは遺書なんかじゃありません。
残したい言葉なんかなにもありません。
ただ、このまま消えるのもくやしいので、
理由 ....
少しだけのつもりが
とうとう
未来を飲み干してしまった



すると
なんの音も立てずに忍び寄った

世界が、
きみとぼくだけでできた世界が、
膜を縮めてとらえようと ....
きゃはきゃは と小さな笑い声がした
留守番をしている日曜日
レースのカーテン越しにガムシロップのような
とろりとした陽光が射していた

読んでいた本を伏せて
誰もいないひんやりとした畳を這 ....
夏がわたしを冒していく




(おかあさんのつくったごはんには)
(毒がはいっている)
(でもわたしはおかあさんがすきなので)
(死ぬとわかってたべている)


そう思い続けて ....
ただしいことが淫らにあふれる
バケモノの住むきょういくの場
がっこうはしゃかいの縮図
誰もが自分のことしか考えない
我が身を守る我が儘のせいで
ダレモガ悪事に加担する
セイロンが押し寄せる ....
悩みがある
他の人には大したことなくても
僕にはおおごとだ

そんなとき彼女が言った
「絆創膏ならあるよ?」
「バンソーコー?」
「傷が隠せるよ」
「治らないの?」
「うん。
 だ ....
ハシバミの枝から
膝頭をつたい
たらたらと流れる
経血の艶
頬を刺す紅の
口許を拭う銀の{ルビ絲=いと}で
ゆっくりと迷宮を搦め
鋼鉄の綾で縛りながら
血潮の徒花を捧げ
甘い毒を流し ....
回転する空から
星がこぼれた夜

間違って少し失って
傷口がまた開いて


どうして人は
手を伸ばしても星は掴めないのに
大切な人の傷口に
ナイフを突き立てることはできるんだろう
 ....
主よ
あなたのお示し下された道は
余りにも厳しいものです
この私に
歩むことができるでしょうか

私には見えます
主がゴルゴダの道を
歩む姿が
荊冠を被り十字架を背負い
侮蔑と悪態 ....
また嘘。

するする、紐を引いて早く帳を下げよう、足先まで隠すように。

夜に紛れた筈が悪目立ち、珠の眸は、蜜蝋に点した炎。

寒い、と呟く。
いつの間に衣服を脱いでいたのだろうか。
 ....
    もはや此処には
    やむことのない雨しか降らない



  きみの水晶体についた
  糸屑みたいな傷
  それは世界の
  傷だ



    もはや此処に ....
傘までも逃げ散る月曜に
体温を奪われた透明傘
水玉越しの水溜まり
電線は交差しない方が良い

映り込む景色を真っ直ぐ走る
線、雨上がりの青い天井
別世界へ潜りたくて
足を踏み入れて拒ま ....
{ルビ萎=しお}る大葉
はらはらと
死を知る春

老いを知るおいら
{ルビ孜々=しし}とし走る原

遺志を師事し
思惟を維持し
恣意を覆い
示威を張る

威張る{ルビ徒輩=とは ....
言葉になるまえに聞こえたものが
どっちつかずを置く店先に陳列された売り物と
同じ扱いで
ようやく落ち着いた季節の速度に
錯覚させられて流れ込む目的地は色トリドリ

わかった、という言葉 ....
靴の中身が煮えてきた
シャツは背中に張り付いて
ベタベタとした初夏の汗が出る
まだ夜は寒いので春のシャツで
上着を脱いでも身体は熱いまま
刺すような日差しに萎びる空気
プールがあれば倒れ込 ....
おでことおでこをくっつけて
君と春のうたた寝
寝息が波のように遠ざかり
いつしか君は夢の中
匂うような春はこんなふうに
小さな子供に戻って
やさしい眠りに包まれていたい
そっとそっとゆら ....
ふわふわの朝靄に
あなたを見送る

消えていく後ろ姿は
ふわふわと
朝靄に包まれ
見えなくなってしまう


早く帰ってね
って言ってみるけど
朝靄に邪魔され
あなたのとこまで届 ....
淡い色のアスファルト
履き慣れないローファーがなく
緩やかにのびる桜のトンネル
出口は海へと繋がる

祖母は言っていた
この町は桜が多い、と
まるで桜の中に町があるようだ、と

寝ぼ ....
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