ひとひら
ふたひら
黒い水辺の
むこう岸
藍色の闇に
ふわりと浮かぶ
燈籠のような
花明かり
ひとひら
ふたひら
うろこのような
....
1
もしも私が生まれかわるとしたら
日の光だって届かない
深海を漂うクラゲになりたい
そこには悩みなどなく
苦にもされず
穏やかな暮らしができるであろう
生きているだけでほのかな幸せ ....
バターを塗ってちょうだい
きょうもぼく
朝からハチミツレストランで働く
レストランの朝って
きみが思うよりずっと早いんだよ
だってまずは蜂の巣狩りするんだもの
それがぼくの担当
まだ ....
・
駐車場で暮らす人と知り合いになった
駐車場の
車一台分に四角く区切られたスペースに
うまくお布団を敷いて
机を置いて
入れ替わり立ち替わりする車のヘッドライトを灯りにし
雨が降れ ....
【蛍】
綺麗だよと
撫ぜる貴方の掌が
無性に熱くて
二人を隔てる
皮膚さえ疎ましい
貴方は蛍
夏を照らした
光の欠片
カミサマお願いです
どうかこの恋を ....
【月と兎】
目を瞑り
耳を塞ぎ
口を閉ざして
貴方以外の
何もかもを
感じたりしなければ
このままずっと
二人で居られるの?
硝子の鳥籠
哀しいほど痛く
....
なめらかに幼子の
桃に染まった柔肌の
質感と光沢は珊瑚
或いは
とろり新鮮な濁りなき
真に最初の一雫
甘い乳白は象牙
真似て
何れ程焦こがれて
唯身を染めて桃に白に
....
【失語症】
嗚呼 宵闇に
涙するは金糸雀
その二つの金の眼は
ただ在るべき姿へ
還りたいと
白い頬を濡らすけど
涙を拭ってくれる
愛しき彼の人は
既に霞ん ....
夜:
彼女のダイアモンドを散りばめた黒貂のドームは
光年の彼方より来たれる私の星屑を溶かし去った
夜は私を胸に抱きしめその炭素の黒を広げ
時を超え私の内なる縦糸を引き絞る
私に「 ....
宝石を散りばめたような闇
この世で一番大きい水溜り
そこには彼らがいることが
絶対であって
世界の暗黙の了解であった
でも
時にはその場から消えたい
と
訴えているのを
私は ....
・
ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名 ....
空は何時か
還る人の為に在りますから
行き詰まって
流れるしか無い雲の
あんなにも柔らかそうな姿態
曼珠沙華は
意味を見失っている
紅くしか咲けないから
間接は曲が ....
雲間から射す光は空の
星がちらちらと瞬くのは
木々が揺れるのは風と木の
霧雨は雲の
私の涙は
あなたが私の手を握るのは
祈り
小さな祈り
ここに存在していることの
....
「つまんないの」
足元の小石を軽く蹴りながらサフィはつぶやきました。
小石はぽちゃんと音を立てて、サフィの目の前の湖に沈みました。
サフィはひとりぼっちでした。
友達はみな ....
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