{ルビ五月蝿=さばえ}なす少女らは街を飛び回り制服だけが九月を待ってる
椅子の名はサヤカとソヨコ 練馬区の下赤塚にて少年の部屋
アルジャーノン、ネズミの名前は覚えてる。青年の名は忘れてし ....
駆け抜けてしまえないのがもどかしい屋上だった8号館は
まばたきをするたび更新されている影あり春の日は万華鏡
「ガイブセイ?」「うん、外部生。」
かんたんに友がつくれてし ....
小雨の降る
夏祭の夕べ
タキシードを着た中国人が
屋台と雑踏を縫って歩く
みすぼらしい電飾にきらめく
濡れたビニール傘の匂い
その中国人の着 ....
人恋し妖かし恋しカラスウリ
流れてく雲の先にも夏の空
炎天下無人の公園カンナ燃ゆ
土星環消失まっすぐ地球見てる
涼しさや蔑称幾つか引き受けて
スコールにはしゃいでる子ら ....
風信子鉱
ジルコン
ヒヤシンス色ってたくさんある
電気石
トルマリン
スパークしてる
パチパチ拍手
トパーズ
シェリー酒越しの曙光
黄玉
ルチルは
金紅石
ちるちる ....
患者相談室の看護師さんは
物品を受け取らない
公立病院だからね
規則上も実際もそれは厳しく守られている
けれどあまりにもいつも何でもないことを
どうしようもないことを
よしなしごともあ ....
風を浴びて暮らそうよ
室外機の熱風ではなくてさ
木々が日差しをさえぎって
しっとりと冷ややかな土が冷ました風
暗渠ではない川の水面を
きらきらと輝かせながら吹いてきた風
蓄熱するア ....
ポエケットではなくエアポケット
チケットのない旅を君と
母が亡くなって最期は点滴でも間に合わない
栄養失調のまま昏睡状態で逝った
体格のいい人で骨壷に入りきらずに
納骨の係りの方に
....
逆立ちすれば、
世界はただしく上下が上下になる。
光は網膜で反転し、
視神経に虚像を届けているから。
こうやって言えば、簡単。
それっぽい。
けど、
言葉で説明されても
それが本当 ....
★ 生徒のみなさんにお聞きします。
1.あなたの親は
普段は社会問題に対する関心が低く
何か卑近なテーマで問題が起こると急にいななくタチですか?
はい
いいえ
2.あなたの親は ....
歩いていました
水平線は見えません
とても見たかった水平線は
霧に隠れて 今日は いません
知っていました 本当は
ここは霧の浅瀬
いつもいつもけむっています
....
いやな唄
あさ八時
ゆうべの夢が
電車のドアにすべりこみ
ぼくらに歌ういやな唄
「ねむたいか おい ねむたいか
眠りたいのか たくないか」
ああいやだ おおいやだ
眠りたくても ....
ぼくむかし美術館に勤務してたことがあって、えと、その業務内容はといえばまず朝出勤して館内の蜘蛛の巣をとったり(ある通路の非常灯の下には小さな蜘蛛が毎日のよに巣を張っていた...)、それから学生、カップ ....
羽化するものを
手渡されたことがありますか
「これ、今日の午前中ね」
生物部の男の子がくれた一本の小枝には
冷蔵庫から出したてのサナギキアゲハ
「羽化する瞬間は見たことがない」
い ....
1.田村隆一詩集
四千の日と夜
一篇の詩が生れるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
見 ....
不意に、息子がおれの手を握った。
思い返すと、おれが父の手に触れたのは、三回、その時を、今でも鮮明に覚えている。
はじめて父に、釣りに連れて行ってもらった時、土を掘って、ミミズ ....
タケイ・リエの詩集『まひるにおよぐふたつの背骨』は、詩を書くときの自我、あるいは詩を書くときにかかわらず、人間が本源的に備えている自我の在り方について、詩という形式の持つ直接性を用いて我々に訴えかけ ....
ねぇダグラス
「たんぽぽのお酒」を読んだよ
ねぇダグラス
本当にタンポポを醸そうか
白や黄色やピンクなの
タンポポにもいろんな種類があるから
選抜育種とか品種改良とかして
タンポ ....
花体にもさくら{ルビ一片=ひとひら}にもさくら
一人にもさくら大勢にもさくら
木末にもさくら手のひらにもさくら
都会にもさくら陸奥にもさくら
野山にもさくら街ごとにもさくら
....
「知識の借り物競争」という言葉がずっと頭の片隅から離れない。
実体験を重視して読書で得た知識を軽んじる言葉は、一見もっともらしく聞こえる。しかし読書だって実体験の一部であり、読書によって起こ ....
起床から睡眠に至るまでにいくつもの粒子が整列していた。それらは貝や木の実や爪だったりしたが、あちこちを眺め回しては倦怠で門のようなものを開くのだった。年齢という数字が記号でもあり連続でもある、そして ....
皐月なり朝早く起き曇り空妻は疲れてまだ起きぬとき
早起きの習慣を付け健康に恵まれている妻とぼくたち
息をして深く吸い込む空気には春たけなわの清々しさ
傷を隠したような
雨の後の夜空
走り去ったバスと
針のように深く
胸を突き抜けた言葉
傘を閉じた人たちの
話声は弾んで
バス停に残された
僕はいつまでも ....
本日は、亡くなったあなた様の誕生日である
(果して何のための希望か
仄暗い空のもとをひっそりと
いきをする私の影は
ただのひとつの影となり、
青果しじょうに
実ってほどない ....
不器用な今日の夕陽が
きみの頬を無防備に照らしてる
絵に映える出来事もなく
通り一遍の言葉ばかりで、また
僕たちはサヨナラを示そうとしてる
駅へと寄せる賑やか ....
わたしは日々報道されている
あなたの目や耳の中で
再生可能なものとして
記憶されていく
ご飯の食べ方が汚いですか
歩き方がおかしいですか
そこにうつるわたしによって
わたしが形成される
....
地面とじかに触れ合う春は
たった一つの落し物をした
そのたった一つの落し物が
みるみるうちに散らばっていって
こんなに豊かな花々になった
花々は凍り続ける
大気が花々を許すその日まで
....
伊達直人は子供たちに贈るランドセルのために
今日も時給1000円で働いている
液晶テレビの組立ライン
8:30から17:15まで
休憩1時間以外は立ちっぱなしで
受け持ったラインのノ ....
桜のつぼみが口をひらいた3月27日は
遠藤周作先生の誕生日で、奇遇にも
結婚前の僕等が恋人になった日なので
府中の遠藤先生のお墓参りに行った
生後7ヶ月の周の、旅の始まり
....
装いして伝道奉仕に出る妻に声をかけては励ましにけり
病院の受付に坐す妻のかおどこか品ありこのましきかな
卯月きて半ばを過ぎて坐す机妻の歌をばつくりておりぬ
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