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檻ごしの瞳の圧倒的な力を知らない娘は
不遇な出会いを恨めず
ただ無邪気にはしゃぐしかない
不憫な娘に、私は
一体何を伝えられるか
空間が違えただけで
私たちは安全に包まれる
遠く離れ ....
叱るつもりが
感情に身を任せ怒っている
自分の醜い姿に気づく
ひとは誰でも
誰かを叱ったり怒ったり出来ないはずなのに
自らの思いを通そうとでもするのか
声を荒げてみたり
ときは手 ....
月のきれいな夜に ひとり帰る
金木犀の咲く季節はどうしてもうまく生きていけなくて
鞄の中のお守りを何度も確かめた
あまいあまい香りはわたしを狂わせる
満月の光にふるえながら
まだ温かい ....
月を遠ざけるものを捜して
迷い込んだ森
薄紙で封印された
わたしを引き裂いて
生まれてくるものがある
皮膚がわたしを押さえつけていた
だから、だ
破りとられて流し続ける
温かい ....
いつもの河川敷を歩いていたら
昨日まで咲いていたコスモスが枯れていた
僕は君にそう言われるまで
コスモスが咲いていたことさえ気付かなかった
何の気なしに繋いだ君の手は
思っていたよりずっ ....
手の届く範囲で
窓を開ける
遠くなった人のことを思いながら
一日を傾ける
窓枠には白い花と
手紙を添えた
白猫が通りすがりに連れて行ってくれる
そんな風景を完成させるため
....
恋の火種は
線香花火のように
きらめきをおびて
静かに輝いていたのに
あっけなくポトリと落としてしまった
もう戻れない儚い想い
ひと夏の恋にさようなら
・
仕事帰りの街灯の下
夜がひたひたと打ち寄せている
その波打ち際に立ってふと
えッと吐き気を催した
げぼッと咳き込んだ口から足元へ落ちたのは
幼いころのお友達だ
あの頃いつも遊んでいた ....
今月なのは間違い無いのだけど
確か二十日頃だったよね
金木犀の甘い香りは
あのひとの痩せた背中を映し出してくれるようで
ひとたび心離れてしまうと
あれほどに固く結ばれていた思いまで
....
「つきの夜の歌」を歌ってと君はいった
そうじゃなくて 第二楽章のほうよと君はいう
ららるあ つきの
夜にすむものたち
うたをうたいなさい
ららるあ
つきの ひかりの
うたを ....
いまは雨がやまないの
あるいて帰りたいけど
まだとおいから帰れない
いつか晴れたら
行きたいとこがたくさんあるよ
目をとじなくてもそれがうかぶから
いまは雨で濡れてても ....
私はすべてを脱ぎ捨てて
黒いシーツに横たわる
陽炎のように立ち上る
あなたの熱に身を任せる
愛情を形にすれば
こんな交わりしかないのだろう
あなたの抱擁にむせびながら
限 ....
死を決意した人が創造した作品は
不思議と人を惹きつける
死ぬために遺す形あるものには
必ずあるはずだ
目を逸らすことの出来ない共通項が
遺書というものは
あまり人目には触れないが
遺 ....
濡れたブロック塀のうえに
一頭の蝶がとまり
雨のなかを飛び去ってゆく
あとには重い記憶だけがのこりつづけた
長く雨は降りつづいた
塀のうえに
忘れられたスイカズラの花のうえに
眠 ....
立ちすくんだ私の頬を
ゆっくりとつたう
何かが、わからなくて
くわぁっと声が漏れる
※
あなたの電話の声は、
どこか戸惑いの輪郭を描く
触れることのない寂 ....
終わりは
すべて哀しいものだと
いつかあなたは
示したけれど
確かにわたしは
時刻をひとつなくしたけれど、
なくさなければ
始まることのなかった
時刻のなかで
わたし ....
点と点を結んでも
直線にならない
揺らいだ線を描き続ける人がいた
好きだった、らしい
景色は額縁に飾られ
憶測は掠めるように
いつまでも引き摺って仕方がない
会議は思い出についての議論に ....
目頭にこびりついた
ノスタル自慰を
擦り落としたら
液晶で描かれた
瑞々しい少年は
皮肉っぽい脂身になっていた
買い置きしすぎた
ファンタ自慰を
解凍し損ねたら
活け作りのつ ....
見知らぬ少女
素敵に涙を流して
「私を愛して」
と叫ぶ
激しい雨の中
冷静過ぎる頭が
鼓動の数を数えている
早くなる朝が
ゆっくりと通り過ぎる夜を見送って ....
どこか信じてた
どこか疑ってた
でも
なにもかも
おしまい
どこまでも信じてた
再起を願ってた
でも
繋いだ手は
....
私、瞼が無いから
眠れないんです
いつも夜は
虚空なのです
少女のころ
だったかしら
お花を摘んで
恋を占った
好き、嫌い、と
最後の一片
剥いだとき
私の瞼 ....
世界の果てへ
何かを求めて彷徨い歩くあなたのいない世界は
とても広くとても果てしなく
私にはとうていはかりしれないもので
誰かの名を呼んでも 届くことはない
幾日も幾日も霧の中 ....
あなたと過ごした日々を愛だと錯覚した
それはお互いの淋しさを埋めるだけのわがままだった
シーソーのように二人の気持ちのバランスはとれなかった
傷つけあうことさえも愛だと思った
すべては風に流そ ....
悲しい歌を忘れられない
あなたがいつか手をのばす
その先に何があるのか
指先は語る事を知らず ただ
まばたきもせずに一心に見つめる
あなたのあの眼差しが欲しいと思う
風さえも忘れる束の間の ....
夜は夜のままずっとそこにあって
満ちていくほんの少し前で静かに息を潜めてる
キミの予感は外れたみたいだ
だから安心して眠ればいい
それくらいのことならオレだってできるよ
だから先に目を閉 ....
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砂浜の風が
朝夕に向きを変えるように
君は気分で風を変える
冷めている空気が
暁の光に変色する時
君は急に大人びた表情を見せ
自足の笑 ....
好きかもしれない人は
好きな人になり
好きな人は
好きだった人になり
好きだった人は
苦手な人になり
苦手な人は
嫌いな人になり
嫌いな人は
知らない人にかわって
わたしの体に ....
いつか語っていた景色だったら
巣食っているのは本当なんだろう
少しだけ多くの時間をかけて
誰よりも歩いた気分になれる
腕時計、を外して
その跡を順番になぞる
縛られた指先が千切れると
....
静けさを呼吸して
ふくらんだ悲しみをはく
そんな自分を少し可哀想だと思う
今日も一日、雨だったから
なんて、理由にもならない
何となく電源を入れた
パソコンがウィーンっていいながら ....
「逃げる」を見つめてました
ある時は空腹から逃げました
耐えきれずに食べてしまったのです
あんパンは美味しかった
すぐに食べられることの幸せで
逃げていたことを気づかないふりをしまし ....
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