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+8月19日
背が高くていつも
自信がなさそうにしてる
優しい普通の女の子
美しい横顔で
声を出すと歌になる
大切なことは
いつも最後に
こぼしていった
....
渚を歩いていたときのことだ。
波打ち際に、細くなめらかな黒い曲線が描かれていた。
それは波の姿を象って視界の及ばぬ範囲へと延々と続き、
足元に目をやれば無数の点の集まりで、なにかの種を思わせ ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた
そんなものだよね
近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ
人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
もうやめて
わたしの前に居ないで
抱きしめるのも手を繋ぐのも君への誤魔化し
ごめんね。
見放して
でもきっと、今頃は私のことなんて忘れているでしょ?
いまでも夢みた ....
文鳥は
帰ることができませんでした
あんなにうとましく思えた
ステンレェスが
今では
こんなにも
いとおしく想えるだなんて
文鳥は
....
暑さにうなだれている名も知らない花は
剥がれかけたマニキュアと同じ色をしていた
使われているひとつひとつの配色が
くっきりとしたものばかりなのは何故だろう
まぜこぜしないのがこの季節で
....
おおきいひとと ちいさいひとと
こっちの部屋に集まって
大騒ぎで追いかけっこしている
あっちの部屋の
ちいさくなったおおきいひとが
熱心に見ている
かたつむ ....
ひとつの季節に産まれる光と
ひとつの時間に死にゆく魂
脆い光の骨組みは
腕のなかで息づく命
消えゆくぬくもりへの道筋を辿る
いつかの日
煌く頬のあたたかさを守るため
いくつもの灯りを燈 ....
かたく凍った夢を砕いて
画用紙に宇宙を描いて暴れだす
果てのない星々の海は瞬き、
チビけた鉛筆が一本
煌く銀河を縦横無断に奔る
つめたく凍った言葉を融かして
原稿用紙に文字を紡いで ....
6月25日 0:17am
パパとママが罵りあう声が床を転がってる。
なんで朝まで帰ってこないの、からはじまって
どんどん醜くなる言葉たち。やがて高周波に達する。
悲鳴は床にたた ....
傘はどうしたの?
由紀さんに言われはじめて気づいた
昨日買ったばかりの雨傘
ガーリーとは思いつつも華やかなレースに一目惚れしたんだよね
教室に置き忘れたのじゃ無いだけは確かなんだけど
....
たなごころに
すとんと収まるその笛は
尊い土の重さと
ほのかな内空の軽さを
同時に伝える
私は
澄んだ森の気配に
肺胞を湿らせ
惹きつけられるように
ほっこりとしたぬくもりに
....
曇り空のしたを歩いている
電車に乗っている
お客様に挨拶している
仲間にメールしている
六月の闇は深くなる
雨に濡れた髪はひじきになる
宇宙のからくりをふたつ考える ....
父のベッドのところまで
凪いだ海がきている
今日は蒸し暑い、と言って
父はむくんだ足を
海に浸して涼んでいる
僕は波打ち際で遊ぶ
水をばしゃばしゃとやって
必死になって遊 ....
くるおしいと泣きながら
少女はおんなを殺した
触れていたいと叫びながら
汚した手を嫌った
繰り返した言葉を呪い
耳を塞いだ
くるしいくるしいと心が軋んで
去りゆく少 ....
喧騒のなか
細い雨のメロディ
梢にしがみついて
姿を変えてみる
みんな
どこへ向かうのだろう
遠い、稜線をこえて
あしたも、あさっても
きゅうに
手をつなぎたくなって
あなたの ....
口喧嘩したとしても
仲直りの機会とか窺うでも無く
当たり前のように手を貸してくれる
たとえばそれは
洗濯物でふさがった両手のかわりになってくれたり
ちんちん鳴り出したやかんをコンロから下 ....
水槽の底の
薄く撒かれた石床を
胸に抱えたまま
いつまでも
眠りにたどりつけない
硝子の鏡面に映る
瞳の奥、の奥
私は
銀色のマトリョーシカを
組み立てる
+
あなた ....
ノックをしても返事は帰ってこない
薄暗い井戸に落ちていくのは
諦めた人達
安心したくていつも命綱を
硬く身に付けていた
辛うじて意識があるうちに
君に会いに行こうと ....
大切かどうかわからない記憶は
抱えていた膝小僧のかさぶたにある
転んだのは最近のことだったか
それとも遠い過去のことか
鉄さびのようなすすけた色は
かつて赤い液体であっただろうことを
....
ただ思い出してほしくて
その腕を掴んだ
心の中にきらきらひかる世界があって、
その続きをあなたが話してくれるのをずと待っていた
けれども、あなたはそれを忘れてしまったから
わたしは暗 ....
月ひかる波
うつる姿に
手をのばせば
とおくかなしい雫が手のひらを濡らし
近付けば
姿を壊す
本当に欲しいのは
あなたによく似たその水面
光る姿を目蓋に焼いて
日が昇る ....
車がたくさん通る
高速道路のトンネルに
住んでみたい
非常電話の扉の中
さらにその奥
誰にも開けられない
硬い硬いコンクリートの内側
誰にも見つからないように
こっそりと部屋を作っ ....
つめを噛む
黙っていてものびてくる
そのつめを噛む
噛み切ったぎざぎざの切り口を頬にあて
自らを削ぐように滑らせるとき
痛みとともに描かれる白い線には
まるで罪などないのだ ....
予定のない日曜日
雨続きの週末
部屋の隅あぐらかいて
六弦をいじり回す
干せずに湿った布団みたいに
身体がひどく重いんだ
代わり映えない毎日
部屋を満たす湿度
そのせいか愛猫は
....
私とはひとつ違いだった
先生の評判を聞きつけて遠方から通ってくる
いわばミーハーな生徒さん同士
どちらからともなく話しかけると
すぐに古くからの友だちみたいに親しくなって
いわゆる「気の ....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
....
演劇部の先輩のふくらはぎに
さくり、と突きたつ
矢文になりたい
長閑な朝の通学路に
あらっ?と気づかれて
さらさらほどかれたい
演目は
「草原とピアノと少女と」
そんなガラス球 ....
雨の匂いがする
埃っぽい陽射しの名残りを弔って
闇に隠れ
秘密裏に行われる洗礼は
いつしか
もっと内側まで注がれるはず、
そんなことを
どこか信じている
陰音階の音だけ降らせ
目に見 ....
写真にうつっている僕は
満面の笑みでカメラを見つめていた
でもそれは過去の遺物
その写真にライターで火をつけて
灰皿になげすてる
今なら言えることは
昨日は言えなか ....
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