行き場の失くなった
、想いは
身体中から染み出して
白いブラウスを
きれいに汚した
だから今夜、
彼女はカウンターで
一杯のカシスオレンジを
注文した
彼女 ....
新幹線の方が楽だろうに
母はいつも
鈍行列車にゆられてやってくる
孫娘の成長のたびに
少ないけど
と、袋を差し出す指先は
黄色く乾いている
風邪ひいてないか、とか
おまえは季節の変 ....
きみにそっくりな犬が
くさりにつながれていた
きみの名前を呼びながら
頭をなでたら
涙がボロボロ流れて
止まらなかった
やっぱりきみが好きだった
なぜ湖がよいのか
一望にできる姿をしてゐるから
瞳のやうに澄んでゐるから
四囲の風景をとかして
もう一つの世界をつくつてゐるから
おそらくそれら諸相に根ざして
....
僕には
愛の密度が足りていない
あの日
深海に落とした欠片が
隙間風を招き
iは
破れた質量を繕いながら
失った体積を埋めるため
きぃきぃと泣いている
錆びた窓が
風に揺らいで開い ....
きれいな物はなんでも好きよ
雪が積もった時の睫毛や
私の口づけを求めるときの
少し荒めの白い吐息は
まるで水蒸気の妖精の舞
歩いた後にほわっと匂う薫りや
私を抉るときの指の ....
時が動いているから
飲みかけのコーヒーの熱は
どんどん放れてゆく
時が動いているから
人を愛する気持ちが
どんどん高まってゆく
時が止まってしまったら
花は散らない
時が止 ....
心の叫び声を
ロックで歌い
やり場の無い
思いを弾ける
悪魔が起き出し
メトロノームが
突然騒がしくて
太鼓の速い連打
外を見ると星の声
外は寒く風が吹く
家にはタバコの匂 ....
たとえば
あたしがこうしてパソコンに向かっている間
森林がものすごい勢いで消えていって
いくつもの種類の生き物が絶滅していたり
たとえば
あたしがタバコを一本吸っている間
死を決意する ....
今日、久しぶりに実家から荷物が送られてきた
中身を開けてみると、食材がぎっしりと詰まっていた
料理は今までのバイト経験で得意だから
一様レシピと手紙が添えられていたが
自分 ....
今
ここ
自分
俺が自由にできることさ
確かに俺はスーパーSが強いかもしれないな
こうあらねばならぬ
こうしなければならぬ
そんな想いが強いのは確かだよ
誰か ....
いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つ ....
狂おしいまでに
自分が自分が自分が自分が自分が自分が自分が自分が自分が
自分は自分は自分は自分は自分は自分は自分は自分は自分は
と言い続ければいつか
じぶんはいくつにも名づけられ瓶 ....
生まれたばかりの言葉は
まだ何も見えなくて
朝の光と音だけを
感じるままに反応する
言葉は意識を持ちはじめ
ようやく言葉は
言葉として目覚める
言葉は
見えるところへと
届く ....
1
ホームの後ろに錆びた茶色の線路があります。
線路の枕木は腐りかけ、
雑草が点々と生えています。
線路は使われなくなってどれくらいがたつのでしょう。
わたしは線路に耳を当て ....
【#1 巡礼】
赤く
熱く灼けた砂に跪き
空と大地は
逆さまのまま
おまえは
まるで祈るかのように
うずくまり
彼方には陽と
境界線が ....
等しく平等に
その波は来るということ
私たちに
夜半の警報は
ちょっぴり
大げさだったけど
海面が
ほんの数十センチ
浮き沈みしただけだけど
等しく平等に
その波は来る ....
床に線を引いて、
彼女は国境を決める。
彼女はとても怒っているので、
とっても横暴に決める。
彼女は地図を作ったので、
ぼくらの部屋は地図になった。
彼 ....
怖かったんだろうね
風が死んでたりしたろうから
ビルヂングが アロガントに まばたきもせずに
夜空を おまえを 無視したりしてたろうから
今日 ....
今だってこんなふうに並列される風景だから
昔はもっと、単純だったように思う
思い出したいことは泡に溶けていくように
雨よりも深いところで打たれてみたり
風に引かれていく後ろ髪だったり
....
子猫を飼いたい
小さくて
あったかい
なんにでも
目を丸くして
追いかけて
いってしまうんだ
そんな光景を見て
ふたりで笑うんだ
日曜の朝から
早起きして
しあわせだねって
....
遥か遠い昔
この海は空だった
雲の上を魚が泳いでいた
魚たちはいつも
海を見下ろしていた
遥か遠い昔
この空は海だった
水の中を鳥が飛んでいた
鳥たちはいつも
空を見上げていた
....
こんなことを言われたのは、何年振りでしょう?
純白の雪の上に、赤い滴が落ちたとき
お父さんとお母さんが星になりました。
私の心に穴が開き、代わりに星が二つ増えました。
お父さんとお母さんを ....
どうせ全ては
なしくずし
風に吹かれて
ブロバリン
98錠で
あの世ゆき
夢は夜ひらく
煙草の煙の
行く先で
明日の行方を
占って
風向き一つで
死にもする
夢は夜ひらく ....
何かが去ったあとの高鳴り
大きなひとつの花になり
たくさんの小さな羽になり
微笑みながら消えてゆく
ひたされたとき
見えるかたち
雨はすぎて
胸とくちびる
....
古人に武士道あり
忠誠を誓い
勇敢に生き
犠牲を厭わず。
信義を守り
廉恥を慈しみ
礼節を重んず。
....
・
しゅんじゃく神社
と云う神社をみかけた
春寂神社と云う字である
煮過ぎた菜っ葉を
噛んだときの音みたいだ
と思った
神様も春は寂しいんだろうか
・
教習所の帰りに
落ち ....
本当は大好きなくせに
本当は抱きたいくせに
「そうしない方が僕等の為だ」なんて
シラフなのに言わないで
噴き出しちゃうじゃないの
ねぇ
本当は抱きしめたいんでしょ?
髪を撫でて匂いを ....
{ルビ銀=しろかね}の雪が空より
舞ひ落つる冬枯れの森
侘びしかる風の音聞けば
時移る草葉の思ひ
細やかに流るる川は
透き落つる冬枯れの森
悲しかる水の音聞けば
時映る雫の思ひ
....
ママが死んだの
私が高校を卒業して間もなく
ママが死んだの
ママと二人だけで生きてきたのに
そのママがこの世からいなくなってしまったの
ママはパパのことを私に教えてくれなかった
私 ....
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