僕の頭上にある雲は

世間の役に立つ人間になりたいと
思えば思うほど

鈍色に重く広がって行く

僕の胸底にある海は

誰かを喜ばせる人間でいたいと
願えば願うほど

昏く荒れ ....
透明にて頬をつたい
ほろりと落ち袖元を濡らし
貴方の元へ行ければと
恋しき心彷徨い途方に暮れれば
能の面のようになっていると
囃し立ててた貴方が浮かぶ

嘗て泣くこと弱さと思い
感動悔 ....
水がめから
水を出して
米を炊く

水がめから
水を出して
みそ汁を作る

水がめから
水を出して
魚を洗う

いろりで魚を
焼く
顔が黒くなる

水がめから
水を出 ....
蛍光塗料で
発電したような、
剥き出しのエポック

僕は感動して
いやらしくニヤけていた
ここが先端

ひき裂かれ
乖離した阿吽が
子作りをしていた

終焉の人々は
自由に蹂 ....
冷たい風が吹く
誰もいないススキ野原で
遠い音を聞いていた
はるか彼方から聞こえる
俗界からのメッセージは
幼い僕の心をとらえた
 遠くで車が行きかう音
 汽車の行く音
 夕方のチャイ ....
小林君が97個のハンバーガーを10分で食べたのは知ってるけれど
僕は君を一時間食べても食べ飽きない自信があるよ
 見上げる夜空はどこまで続く?
 見果てぬ夢は地平線の向こう側

 牢獄に監禁されし脳味噌は
 時代のエスケープに染まっていくし
 便りを一向によこさない女は
 ネオンの街で夜に遊ぶし
 ....
風船が
高い木の枝にひっかかり
君が
届かないって言って泣くから
わたし
よじ登って
取りに行ってきたのに

帰ってきたら
君はいないの

いつまで待っても
もう
取りに ....
天井がずいぶん高いなって思ったら空だった
わたしはいろいろ忘れてしまった
エレピの音が恋しい

必要ないのに笑うのはやめようよ

遠くでたくさんの音が聞こえる
とても賑やかだ
コーラ飲 ....
紡ぎだされる現実は苦しくも
様々な色を添える

深紅が飛び散れば
花となり やがて枯れゆく茶となりて
貴方を包み

布はみるみるうちに思い込みにまみれ

煌びやかな虚栄がそこ此処 ....
紅葉の気配が深くなった
山の端も入れず
ただ 高くなる青の中に
馴染めないこの身の
煩わしさを
どのようにして
拭えばいいのだろうか

右端から赤とんぼ
群れをなし
やがて青に融け ....
雨が止んだので
図書館に行きました
誰が書いたのか
忘れてしまいましたが
旅行記に読み耽っていたことは
覚えています

雨が止んだので
靴屋に行きました
どこの会社の製品なのか
覚 ....
夜明け前 ぼくらの宇宙(そら)では
屋根ではじけた流星が うるおいの濃紺に飛び散るんだ
プレアデスの向こう 溢れ出てくる流星を
君の瞳に刺しゅうして
対になった星の光が ちかちか燃えるのを見て ....
四角いビルの建物が
窮屈なので
海を見に行きました
岩がビルの尖った角を
削ってくれました

パソコンデスクが
狭いので
海を見に行きました
波がキーの叩く音を
飲み込んでくれまし ....
雨は降る
無情の
恵の



日は注ぐ
旱魃の
神の



一本の幹に触れる
真っ直ぐな
曲がりくねった



別れた妻を想う
不肖の息子を想う
置いてきた過去 ....
言葉には、意味と別に音そのものがもたらす印象があります。
例えば「こんにちは」は明るく強い印象なのに対し「さようなら」はやさしい印象を与えるといった具合にです。
そこで、音のもつ印象を独断で分類し ....
小さな手をクルクル振り回して
何か一生懸命に説明してる男の子の言ってることは
結局何を言いたかったのかわからなかったけど、どうやら
その子にとって一大事らしい。


私の手を必死に引っ張っ ....


西野が平原を歩いていると、前方に小さな小屋が見えた。小屋には東西南北に四つのドアがあった。

西野は南側のドアから入ろうとしたが、小屋の中には入ることができず、そのまま東側のドアから出て ....
 遠い宇宙の彼方から
 地上に穏やかに落ちてくる夜なべ

 静かに皆は眠りについて
 昼の喧騒を冷ましている

 艶やかな青紫の中で
 輝く笑顔を自分の胸の中で探してみる

 孤 ....
2年前 
中年夫婦で営んでいた 
ふっくら美味しいパン屋さん 
大洪水で流された 

跡地には 
独り身の{ルビ若旦那=わかだんな}が一人で開いた 
手打ちの美味しい{ルビ蕎麦=そば}屋 ....
 この町が余りに寂しそうなので
 一人遊びする 例えば


跳ね橋の上でドリアンが食べたい

皆に嫌われているので
誰も居ない明け方食べたい

橋のあっち側に好きな人がいるから
 ....
あの方は死んでいるのですか?
眠っているのですか?

私はさっきから
何も身にまとわず
赤いスカーフを波打たせて

その中で軟体動物みたいに
なっているのです

私は人間の思考がで ....
鬻ぐ女

貰った鞄は質に入れ
貰った熱はすぐ冷える

縫い取り縫い取り
骨を探し呼吸を刻んでゆく

日が落ちたら
そうね今から
初めて出会うあなたの側で
あたたかいかなしみに埋も ....
学校の校舎に
雨が流れてゆく
自然のままに
上から下へ
黙って教室から
外を眺める
雨は
流れるままに流れ
一日が終わる

自然は自然のままだから
自然がそうあるべきことが
正 ....
夜中、リビングに降りると
テーブルがひとりで
テレビを見ていた
外国の戦争映画だった
たくさんの人が
次々に命を落としていった
リアルなくらい
みな清潔な最後だった
突然テーブ ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く

けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです




ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く

しかし幼稚園は日曜日に ....
緑濃い{ルビ山陰=やまかげ}から
ひらりと紋白蝶がさまよひ出た
断崖の下は海の群青
湧き上がるすでに夏とはいへぬ
冷ややかな風を器用に避けつつ
蝶は陸に沿つて舞ひはじめる
波打ち際には
 ....
あこがれは一番星の良きひかり
    いかにはかなく夜が来ようと


人は行くランボオの詩を胸にだき
    人いきれへと振り返りもせず


鳥は飛ぶただ啼きながらひたすらに
    ....
今日も仲良くけんかする 
何の変哲もない 
親父と母ちゃん 

日々
腹を抱えて笑ったり
頭に{ルビ角=つの}を立ててしまったり 
からかいあったり
愉快な職場の仲間達 

両親や ....
泥棒のような前傾姿勢で
妹の洋服を
箪笥から引っ張りだして纏った
ふわわ、と甘いにおいが漂った

わたしは服を持って居なくて
だから何時も裸で暮らして居るのだが
この頃はとみに寒く
や ....
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