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ほんとにあなたに会いたくて
阿佐ヶ谷とアムステルダムが 草続きだったら
走って行きたい と思います
足をとられるのは
たんぽぽのつるではなく
カマキリの白い糸で
血が流れると
あなた ....
「探し物はなんですか?」
と聞かれて
「見付けにくいものです」
と言う人も
まぁそれ相応の年なのだろうが
「探しものはなんですか?」
と聞かれて
「今それを思い出 ....
咲くものを追い
影は葉のように落ち
描かれた歌を隠した
ふと混じりあい
ふと離れ
振り向き
微笑む日
影は速く
光は遅く
まわりつづける
....
誰もいなくなった教室で
同じ図形をノートの端にひたすらに書くということを止められなくて
一本の線で四角をどんどん連鎖させて黒くなるまで
はじまりがどこだか見えなくなっても
鉛筆の先に終わりはま ....
深夜、バスに乗る
乗客もまばらな車内
運転席をのぞくと
濃紺の制服を着た父が座っている
昔、一度だけ
大人になったらバスの運転手になりたかった
という話を聞いたことがある
どこかで何 ....
堂々巡りの話が止まらないのでいっそのこと
回り回って溶けてバターになってやろうかと思ったが
パンのカリカリの表面の上できれいに塗られずに固形のまま
押しつぶされたりするのが嫌だったのでとにかく反 ....
夕べどうしても読みたかった本があって確か俺は持っていたはずなんだけれど今思い出してみると、別れた女に貸しっぱなしになったままであったりする。もう15年も前の話になるので時効は成立しているんだろうか?そ ....
冬納めの儀式は古来より西院にて執り行うものとされている。その間、本尊は伏せられ、黒いラシャ布が被せられる。これを本尊隠しと称する。永年、雪守家の末子の役目とされてきたが、鴉葬以来、毎年、隠し役を選ぶ ....
花が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川にうつる枝のなかに立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った
蝶が来て
狂いたい
と言 ....
何処か知らない 浜辺
の砂の上に座りこんで ぼんやり
海を眺めていたようで
すぐそこの岩屋の蔭
から蟹が一匹
ちろっと動いた ように感じて
眼を凝らそうとしている
つもりが逃げ ....
六畳の部屋には僕がいた
君がいた
ソファーもベッドもない部屋に
僕らは日がな一日そこにいた
そんな日がよく在った
雲が空を覆う夜には
僕は君の瞳に電灯の光を集めて月を ....
川の向こう岸にあなたがいて
手のひらにちょうど収まる薄っぺらい石を
丁寧に丁寧に磨いています
わたしは何度も手を振りながら
早くこちらへ投げてよこしてと
大声で叫びます
そのたびあなた ....
北京秋天
見上げる空はひたすら青い
空港へのびてゆくまっすぐな道
あかしや ぽぷら まつ 三重のトンネル
豊かにひろがる畑
樹木に囲まれた家
点々と
丸くなる地球
ビール 白ワ ....
喉の奥を製本したような風邪をひいて
いっそのこと美しく装幀されて図書館でカビ臭くなりたいと夢見て
布団に入るといつのまにか17時間半経っていた晴れた午後4時に
炊いたお香でひとつ咳をして
....
美しい憂鬱
高貴なる倦怠
曇り空の下のチューリップ
仔猫は路地を駆け出し
大きな黄色い車に轢かれた
子供たちはチョークで人型を描き
死体を学校の花壇に埋めた
その土によってしか咲けなかっ ....
彼女からの手紙が
炊飯器の中で見つかった
もう
ほっかほかの
ぐっちゃぐちゃで
炊きたてのご飯はうっすら黒く
食べると微妙にインクの味がする
時おりぐにゃりと繊維をかんだりもする ....
夏に捨てられた蝶が
ひらひらと自転車の前輪に身を投げようとしている
これ以上ペダルを重くしないでおくれ と
黄色いはねをかわす
崩れそうな空
地響き
空鳴り
....
テーブルの格子模様に
グラスの底を当てて
君はその大きさを測っている
今週末は雨が降っていて
僕達はまるで
晴れ間をうかがうような顔でしか
会えない
八重洲の長い地下道を歩いて歩いてきて ....
舞台の中央には透明な攪拌機がありまして
僕によく似たピエロが登場します
ピエロは無言で虚空を凝視めると
両手をひらひらさせて様々な八月を取り出します
粗末なリュックに詰め込んだサツマ芋 ....
今年の年明けすぐのこと
愛犬が死を迎えた
老死
人間の年で言えば
100歳近くにもなる
彼は
僕のほとんどの記憶に
存在している
最期を迎える彼は
見るにも耐え難く
あ ....
いまひとひらの蝶
ゆっくりと私の眼を奪って
流れ着いたのは何の彼方でもなく
オフィスの私のデスクだった
電話の喧騒の中
不意の来客は用件を語るでもなく悠然としている
よく見ると胸に社章 ....
痛みさえ今の俺には狂気に変わる
踊りあかそうこの夜を
抜け殻のように揺れる空虚なカラダ
あぁ、滑稽じゃないか
幾千もの肉塊を抱いて
奇麗事の世界で眠ったままの眠り姫
....
生まれた街は遥か遠い被膜に遮られ彼方に霞んで
そこに戦火があり七歳の僕は大人たちに囲まれ鉄
路を支える土手に鍋を被せられて伏せ夜空は花火
大会のように明るくて騒がしいその夜焼け失せてし
まった ....
家族が
微笑みあって食事をしている
目の前に出された献立はみなそれぞれ違うのに
年齢も性別も所属団体も違うのに
それぞれがそれぞれの話題を
提示してかきまぜて咀嚼して
家族スープになって
....
神戸についたその夜に
変な老婆に捕まった
彼女は白骨化した頭蓋骨のような顔をしていた
まるで髑髏だ
月から垂れた灯りは
鬱蒼とした大地に降り注いでいる
老婆は僕の行く手を塞いだ
....
ニュージーランドにいるキウィという鳥は
羽がすっかり退化してしまっていて
空を飛ぶことができない
夜行性のその鳥は
夜になると木の穴の中などから出てきて
えさを探す
もちろん飛ぶことが ....
こわばる 二重線 傾ぐ 喘息性 の 羽虫 そぶり は 従順 に 丁字路 に すべる 解氷 とおざかりして 響く 多穴 反射角 織り 食傷する 隘路 速度 齧って 綴じ込む 標識 削り 映写 の 反復 ....
夏休みが終わる
子供達は山へ行くのに忙しい
夏休みが終わる
細いホームを電車が通過する
夏休みが終わる
かすかに水の流れる音
携帯にひり付くメールが大量に運び込まれる
飛行機 ....
アブシの涙を忘れない
ミスター・アブシの
ベイルート市
ハムラ通りを
エトワールから海岸通りに向かって行くと
左に折れる路地があり
道なりに坂をだらだら登って行くと
右手にケントホテ ....
つま先から頭のてっぺんにかけて
ベクトルがそのまま垂直方向に伸びて太陽
果物と同じくらい孤独
瑞々しさの極致がほったらかしだよ
ある日南の島の販売人に出会って
ポイントもつけるし安く ....
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