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煙る午後に
まどろむ陽光が
研磨された鋏刃の隙間
さわさわと開放し行儀良く
沈静し少し乱雑に
定着する
鼓膜を突き抜け
仄暗い床板の軋みに
胡坐を掻いて青い影を落す
女の ....
稲妻でみんな酔って終われるって言うから此処に来た
だから早くそれを出せばいい
そう言いながら手を傷つけて血を流しながら
貝殻を握りつぶしている友達を笑って見ている
俺たちはライトアップ ....
僕の気持ちをよそに町は変わっていく
メーデー、メーデー
僕の聞こえてますか?
メーデー、メーデー
応答をまっています
空は青空でどこまでも突き抜けている
メ ....
「1÷3=」と問われて
「はい、1/3です」
「小数点第二位を四捨五入して0.3です」
「0.33333333…で、循環小数です」
級友はいろいろな正しい答えを出し
そして問いを忘れてい ....
池袋とか新宿とか
そんな
詩みたいにきれいな響きを持った名前の街は
おれたちの暮らす街にはないので
とりあえずできることといえば
コンビニの前にたむろしている若者にビクビクしながら
そいつ ....
女にふられたので、
まぼろしの、
影を慕って死のうと思った。
もうほんとうにそう思った。
タイムマシーンにお願いしたよ。
ビジネスホテルのエレベーター前の鏡の前さ。
俺は五年後から来たつも ....
じゃれ合ってたら 噛み付いたー
にらめっこしたら 噛み付いたー
ポッキーゲームで 噛み付いたー
肉球つまむと 噛み付いたー
足に足掛け オスになるー
くちびるめくると 黒 ....
上司のお母さんが亡くなったので
お通夜に行くことになった
周りの人の香典をいくつか預かり
初めての列車に乗った
これから何度乗る機会があるのだろう
列車は住宅街を抜けるように走った
民 ....
花に水を
料理には愛情を
ゴリラにはバナナを
ネズミにはチーズを
愛犬にはぺティグリーチャムを
週末には家族でドライヴを
カーラジオから聴こえてくる 懐かしいメロディ
街の向こうに沈む真 ....
ピンク通りにゴムホースの束
豚かと思った
人間の半身が転がってればいいのに
抱いてやる
「新宿は庭みたいなもんだ」と言った男が死んだので
あたしはなんとしても新宿を庭にする
....
何度壊す勢いなのですか
核融合と分裂の果てに
何が残っていると思うのですか
太陽を手に入れたからって
試す術は無いのでしょう
もし試すのならば伝えてください ....
エンバリーさんは その日も青をつくっていて
もう一体 いくつめの青になるか 自分でもわからなかったけど
それでも いつもと同じように青をつくっていて
赤だとか 黄だとか 緑だとかが もて ....
一人佇む夕暮れに
春を呼ぶ風通り抜け
時の移ろい見えたなら
春待つ喜び湧き出でて
畑の中の土を見る
土の匂いは春の声
歌はなくともリズムあり
その鼓動は夢語り
遠い空まで飛んでゆく ....
朝起きるとボスだった
眉間に深い皺が刻まれていたが
特に不満があるわけではなかった
煙草をつまんで深々と吸い込む
ブラインドはない
のでカーテンから覗く
何ということのない休日の朝が広 ....
あなたと私の距離は
うすべに椿
あなたが振り向くと
私が立ち止まる
そんな静かでもどかしい関係
あなたの穏やかな黒い瞳に私が映る
迷子のように泣きそうな顔をして
私は私をじっと見ている
....
僕らは空を飛べないんだって
小4くらいの時から知ってたよ
ウルトラマンになりたいって言ったのは
普通の子どもを演じるため
最後には全て忘れてしまうなら
それが明日でも大差無いは ....
きみの吐く
藍色の空気につつまれるたび
わたしはぺしゃんこになる
圧縮されたわたしは宇宙をとびかう電波みたいに
ひらひらと空を舞い夜を見渡して
みどりの泉でからだをふやかし
きえない炎 ....
郵便受けを屑篭にする三文広告
枯れ葉だったらいいのにな
枯れ葉だったらいいのにな
虫の声といっしょに、
君の手紙があればいい。
あたしの彼氏はタイガーマスク
推定年齢三十前後 未詳です
職業はプロレスラーだと言い張ります
でもこないだ路地裏で中学生にお金取られました 未詳です
割合料理とか得意みたいです
生鮮 ....
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まあ俺が言えた義理じゃねえが
詩を書きなぐっていい奴と
だめな奴がいる
書きなぐっていい奴
そいつは小物しか釣りあげられないが
次々にかかるやつをどんどん捕まえて
当然小物だが生きがい ....
夕焼けは決して終わらない
さっき、オレンジのストローで
おもいっきり膨らませておいたから
輝く小石たちのいるポケットの輪郭
指先の土は、もう、乾いた
工事現場の重機の群れは
拳を打 ....
1.
男の精液ってさ タンク一杯の梅酒みたいだよね
タオルを集めていると香恵ちゃんがつぶやく
なにそれどういうこと
上の部屋に オーナーがおいてった梅酒があるんだけど
....
毎日、夕方になると世界が溶け出す。誰もがみなとっく
に気づいていることなのに、誰もそのことを口に出さな
い。(それは、おそろしいことだからだ。)たとえば、
あらゆる文体が溶け出して、誰が何を言っ ....
いえでします
と書き付けて机に置いた
小学校に とりあえず向かう
誰に叱られてだったか
何故か知っていた 家出というものを
はじめて決行した 小学一年生の時
きょろきょろみた ....
いつか君の病気が治ったら
どこにでも行こう
そのときまでに俺は
いろんなところを見ておくから
いつか君の病気が治ったら
カンパイしよう
缶ビールでいいよ
もう薬はいらない ....
雲は月を受胎して
ひどい{ルビ悪阻=つわり}に苦しんで
涙を流す
真冬の夜に雨が降る
真冬の夜に雨が降りしきり
町は{ルビ水浸=みずびた}し
大粒の雨は道路に幾千粒幾億粒も叩きつけ ....
咳をしたらたまたま側にいた
隣の課のえむさんが
フルーツのど飴をくれた
えむさんがフルーツのど飴を好きだなんて
初めて知った
えむさんは僕より十歳くらい下の女の子だけど
背は僕より十セ ....
乾いた体に、胃に、口に、耳に、心に、正義に、夢に、舌に、腕に、指先に、爪に、髪に、瞳に、鼻に、眉間に、
罵倒の水でもいい、知らせてくれ。
ぶちまけてくれ、吐かせてくれ、俺を殺してくれ、自分 ....
何から書いていいか分からなくなるのはいつもと同じ
僕は水の上に立っている
神様からそういう力を与えられたのだ
こういった永久に続くであろうゆるゆかな時間が世界に充満していると
僕は ....
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