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5歳の僕は風の中にいた。
底の町から吹く風は暖かかったが、
上の町から吹く風は冷たかった。
底の町から吹く風を顔面に受け止めて
膨らんでゆくと
僕は虫になって舞い上がった。
谷の反 ....
わたしがたたずむゆりかごは
なにものよりもあたたかく
やわらかいものですから
たとえば
すずめのあしおとが
みみもとでなったとしても
わたしはきづかないことでしょう
あさ ....
玲瓏の雲がたなびく
岸辺
ゲノムを運び終えた生き物たちが
崩れた山のように
積み重なって倒れている
おびただしい数の
生き物たちの目や口や鼻
牛や馬に混じって
人の体も横たわってい ....
{ルビ東風西指=とうふうさいし}七日間
見えない時間に手を引かれ
終りと始めを繋ぐ日に
白猫、黒猫、青猫は
私を人だと思わない
私の穴は猫達の誰も知らない隠れ{ルビ舎 ....
{引用=故モーリス・ベジャール氏に捧ぐ}
魂が徐々に
輪郭を帯び
しなやかな闇の
波を抜けて
姿をあらわす
共に
時の砂はおち
動脈をめぐる
....
夜は静かだろう
なんて思うのは
私の耳がどんなに外に傾いているのかということ
胸のうちでは本当は、どれだけ沢山の働き蜂が、働き蟻たちが
せわしく流れていることだろう
私の子供 ....
きのう
飛び去った飛行機のように
蛾が震えていた
取り残された最後の技師が
数値を記録し続けている
薄汚れた窓硝子の向こう
森を走っていく少年あるいは少女の白い素足が
境界を飛び越えなが ....
丘を走る老いたランナーの濡れた額
君は見たことがあるか
皺だらけの手に
まとわりつく子どもの手
を払いのけ
上手く駆けられるだろうか
疑問は
ランナーの背後に残されるのだ
最後に拍手
....
ガラス越しに会いましょう
必ずしも世界を共有しない方がいい
わたしはこっちへ
貴方はあっちへ
それでも感情だけは疎通する
わたしが笑えば
....
あなたに贈るこの花は
あなたの為に咲いている
あなたに気持ちを伝える為に
わたしがせっせと育てたの
毎日毎日水をやり
大事に大事に育てたの
一生懸命咲いている
花はわたしの気 ....
恋人たちが
裸になる夜は
計算が合わない
数が音に
なってゆくから
建築物の息づかいも
聞こえてきたよ
スポンジみたいな
緻密なリズム
さびしさの背中に
スプーンを落として ....
あなたは書かれた事のない手紙
いまだ出された事のない手紙
封を切られないまま
大切に言葉をしまい込んで
わたしはそっと考える
その言葉がどんなに心を震わせるかを
わたしは夢を見る
....
090105
九官鳥を起こしてから
夜具をたたむ
昨夜、飲み過ぎてしまい
エスカレーターで蹌踉けて
危なく転落するところだった
すぐうしろの ....
砂丘から砂が流れて来たら
それは夜の始まり
私は眠る準備を始める
天井を通る赤い水流を
電灯から白い汁として引き込む
煤けた電球の先から、光りながら
とめどなく溢れる白い液は
黄色い ....
かもめよ、教えてください
埠頭をかすめて海に消えたひとりひら
海雪の行方を
海峡の雪雲に隠れたプロキオンだって
待てば姿をあらわすでしょう
その、抱く思いに揺れていたとしても
....
きみはひどく咳き込み
すぐに踞った
今日は風がつよいね
手をつないで
髪を
なでた
すきだよ
あまく
湿った声は遠く
いつも
おびえているみたいだった
....
空色のスモックを着て
如雨露も空色だったから
お空のかみさまになった気分で
プランターに雨を降らせた
ミニチュアの森を作り出す
背丈の小さなこのぐん生が
何という名前を持つのか
お空 ....
音楽と光が止み
(ひそ、ひそ、)
雪など降らぬ、ましてや星など降らぬ
最初から諦めて、無数の
ただ、咳が
ただ、冬が
最初から諦めて崩れ落ちた白い灰の気配で
見知らぬマフラー ....
翼を張ってゆくものよ
あたたかな地に
まひるの陽に
なびく
しなやかな草たちに
昼から夜、夜明けから夕べへと
金色の弦が鳴る
翼は 風を抱く
....
忘れていって
生まれてまた
呼吸を覚える
雪にのまれて海を探す
枯れた花が埋められたら
そこからはもう逃げ出すしかない
白の中をゆっくりと
その中から生える手に足をとられても
白の ....
タイル張りの部屋の中
あたしはひとり うずくまっている
泣き疲れて呼吸は浅くなり
あたしはひとり うずくまっている
そばでは水槽とテープレコーダーが
変化のないあたしに {ルビ倦=う ....
{引用=
? 薔薇中毒
愛しい薔薇の
深紅の花びらが
狂おしく息もつけぬほど
降りそそいだ
あの頃
夜毎の夢の中でさえ
貴女の馨りは
深く ふかく
....
ふと あなたのことを思いだしたので
こうして手紙を書きました
あなたがこれを読んだら
筆不精なわたしにしてはめずらしいと
腹を抱えてわらうのでしょうか
お元気ですか
わたしは元 ....
あかるくなった
校庭の
真ん中で
ともは
膝をむきだしにして
そのあかくなったところに
悲しみをまぶして
いました
夢ではない
山に登り
芯の太さが、花が
格調高く
ひ ....
たやすいのだと
気にしないで
昼間のデパートに
捨てては、
そのわりには
道がわからなくなるような
そう
多く
かちきな人たちが
地域へと
なだれこんで
じっとしている
そ ....
問題に答えると
答えから問題が生まれる
右ですか?左ですか?
右へ進んでみれば左が
正解のように思えるし
仮に右が正解であり
正解を歩んでゆく自分が
生まれれば どこからか
別 ....
ゆらゆら纏う月の色
ひらひら翻る小夜衣
ほろほろ嘆く花の影
ふかふか見遣る片心
名もなき{ルビ憐恕=れんじょ}は風に消え
杞憂も蕩ける{ルビ玉桂=たまかつら}
....
A
趣旨がよくわからない格好をしたあなたは
私の家の前を通り過ぎてしまって
罰が悪そうなのと恨めしいのがまざったような顔で
ちょっと笑いながらこっちを見てたのを覚えてる
慣れてないのがバ ....
もうおやすみ とつぶやく こえは
あなたに とどいたのでしょうか
まぶたを とじる しゅんかんに
あなたは なみだをうかべていた きがしたのですが
ろくがつむいかの あめはふりつづいていま ....
あのはなをつんで、ときこえた
もうすぐ枯れそうな野花、を
そのはなをつんだ
ずきり、 「気のせいか」
ふりかえる
だれもいない
雨はどしゃぶり
雨はどしゃ ....
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