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にょきにょきと…背丈がのびる
パキラの樹は、天井にふれ
窮屈そうに
緑の背骨を曲げている  

――私ハモット大キク…ノビタイ

音の無いパキラの声は、不思議なほど
対面する私に内蔵さ ....
生きていれば、時折 
苦い薬を飲むような一日がある 

目の前を覆う{ルビ靄=もや}のような 
掴みどころの無い敵が 
心の鏡に映っている 

靄の向こうのまっさらな 
日々の舞台は、 ....
コンビニの銀行にカードを入れたら 
先月よりも数日早く、今月の給料が入っていた 

新たな職場に移っても 
相変わらずの安月給ではあるが 
ATMの画面に増えた金額を見た時 
今迄とは違う ....
繰り返される日々の只中で 
長い間{ルビ蹲=うずくま}っていた私は立ち上がり 
澱みきった自分の姿に 
力一杯ひとつの拳を、振り下ろす。 

言葉にならない叫びが 
青い空の鏡を、震わせる ....
少年の頃 
食物をせっせと運ぶ蟻さんを 
踏んでしまい 
何故か無性に、胸が痛んだ 

大人になった今 
嫁さんは家の中で虫をみつけると 
つまんで窓外へ逃がすので 
僕も見習い、ある ....
降りしきる、夜の雨に身を濡らし 
{ルビ蝸牛=かたつむり}は真横になって 
塀に、張りついていた 

通りすがりの僕は 
(君は退屈そうだなぁ・・・) 
と思ったが 

ちょっと待て  ....
金曜に夕暮れる、街の人波。 

白いステッキを手に 
太った盲目の女は、影を伸ばす。 
黄昏の凸凸道をたよりに 
まっすぐ駅の入口へ吸い込まれる、
後ろ姿 

目には見えな ....
今日も{ルビ賑=にぎ}やかな 
職場の仲間は 
跡形も無く姿を消した 
残業の時刻 

静まり返った部屋で 
ぱらぱら 
書類の{ルビ頁=ページ}を{ルビ捲=めく}りつつ 
手にした判 ....
ふいに目の覚めた深夜 
妻の亡いひとり暮らしの老夫は 
布団から身を起こす 

サイドテーブルに置いた 
リモコンを探りあて 
ボタンを押す 

テレビに映し出された 
モノクロ画面 ....
スタンドの明かり一つ 
扇風機の音が聞こえる部屋 
木目の壁に映る 
後ろ姿の影は 
黙って首を振り続ける 

明日 
どんなに騒ぐ人がいようと 
やる気の無い人がいようと 
ぼくは ....
日々の砂漠に 
埋没された 
わたしは一本の指 

墓標のように立ちながら 
指の腹にひろがる指紋は 
いつからか 
一つの瞳となり 
遠くから荷物を背負い 
こちらに向かって歩いて ....
わたしはわたしの 
根深い業から 
解き放たれよう 

闇に咲き誇る{ルビ薔薇=ばら}よりも 
道の{ルビ日向=ひなた}に飾らず咲いた 
一輪のコスモスの前にしゃがもう 

何も語らず ....
車椅子に座る 
小さいお婆ちゃんを 
前から抱きかかえる  

少し曲がった 
「 人 」という字そのものに 
なれた気がする 

ごめんなさい、ごめんなさい 
と繰り返すので
な ....
テレビをつけると 
瓦礫の山から掘り出され 
額に血を流した中年の女が 
担架から扉を開けた救急車へ 
運び込まれていた 

その夜 
テレビの消えた部屋で 
歯を磨き終えたぼくは 
 ....
犀川の 
芝生の土手に腰を下ろし 
静かな流れをみつめていた 

午後の日のきらめく水面には 
空気が入ってふくらんだ 
ビニール袋が浮いていた 

近くで
ぴちゃりと魚が 
跳ね ....
よく晴れた日 
玄関を開くと 
小さい{ルビ向日葵=ひまわり}の植木鉢が 
倒れていた 

恋に傷つき震える 
君のようで 
ぼくは{ルビ屈=かが}んで 
倒れた鉢を両手で立てた 
 ....
路上に{ルビ棄=す}てられて 
崩れた米の{ルビ塊=かたまり}  

割れた破片のまま 
空の雲を映す鏡 

何事も無い顔で 
わたしはそれらを通り過ぎる 

遠く置き忘れた 
砕 ....
ふいに 
{ルビ痒=かゆ}くなった腕をかいたら 
思いのほか 
しろい爪は伸びていた 

( 窓の外には風が吹き 
( 緑の木々が  
( 夢を{ルビ囁=ささや}く声がする 

はた ....
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

 ....
空の曇った暗い日に 
ざわめく森の木々に潜む  
五月の怪しい緑の精は 
幹から{ルビ朧=おぼろ}な顔を現し
無数の葉を天にひらく 

わたしを囲む森に{ルビ佇=たたず}み  
ベンチに ....
仕事でヘマをして 
渋い顔で始末書を書き 
残業の書類の山に囲まれ 
気がついたら午前0時 

職場のソファーで
目が覚めた日曜日 

さえない朝帰りの道 
降り出した雨に 
傘も ....
目の前はすべて  
煙に覆われていた 
幾層も掻き分けた向こうに 
握った拳を突き上げた人影が 
腕を下ろすとこちらへ歩いて 
すうっ と 
わたしの内側に入った 

  * 

 ....
長い間 
「 わたしなんて・・・ 」 
と{ルビ俯=うつむ}く影を 
地に伸ばしていた 

ある晴れた日 
緑の{ルビ掌=てのひら}をいっせいに振る 
背の高いポプラ並木の道で 
ふと ....
仏のようなよい人に 
ゆるせぬ人がいるのなら 
わたしに誰がゆるせよう 

あの人がわるい 
わたしがわるい 
と 
手にした糸を引き合い 
こんがらがる 
日々の結び目 

力 ....
私は無人の都市を歩いていた 
 
見上げた無数の窓の一つから 
青い小鳥が堕ちて来た 

{ルビ掌=てのひら}で受け止めた
{ルビ痙攣=けいれん}する小鳥の青い羽は 
灰色へと変色し 
 ....
信天翁さんの服部 剛さんおすすめリスト(25)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
樹ノ声___- 服部 剛自由詩115-10-23
鏡の世界_- 服部 剛自由詩311-10-6
給料日_- 服部 剛自由詩311-10-6
目を開く_- 服部 剛自由詩311-8-5
虫をはなす_- 服部 剛自由詩111-7-18
蝸牛の時間_- 服部 剛自由詩211-7-18
夕景- 服部 剛自由詩108-5-31
パレード_〜年の瀬の夜〜_- 服部 剛自由詩807-12-28
深夜の老夫_- 服部 剛自由詩407-10-31
扇風機_- 服部 剛自由詩407-8-13
雲の船_- 服部 剛自由詩607-8-12
野の花_- 服部 剛未詩・独白407-8-12
「_人_」_- 服部 剛自由詩18*07-7-18
掌の上に_- 服部 剛自由詩13*07-7-17
犀川_- 服部 剛自由詩18*07-6-12
白蝶_- 服部 剛自由詩13*07-6-5
門_- 服部 剛自由詩707-6-2
爪切り_- 服部 剛自由詩9*07-5-26
ゆげのむこう- 服部 剛自由詩19*07-5-21
森ノ潮騒_- 服部 剛自由詩13*07-5-18
朝帰り_- 服部 剛自由詩9*07-5-6
夢の人影_- 服部 剛自由詩9*07-5-4
空の波紋__- 服部 剛自由詩7*07-5-4
「_扉_」_- 服部 剛自由詩14*07-4-7
「窓」- 服部 剛自由詩9*06-6-3

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