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もう何年も前
遠い北国に{ルビ嫁=とつ}いだ姉が
新しい暮らしに疲れ{ルビ果=は}て
実家に帰っていた頃

日の射す窓辺に置かれた
白い植木鉢から緑の芽を出し
やがて赤い花を咲かせたシク ....
陽だまりの中
少女が一人
しゃがみこんでる

大きすぎる麦わら帽子
涼しそうなワンピース
テカテカ光る赤い靴

少女はじっと見つめている
朝からずっと見つめている

まだ芽は出な ....
付け足されてゆくことがあって
それはとても
喜ばしい

差し引かれてしまうことがあって
それはとても
痛ましい


あなたの暮らしは
わたしの暮らしでもあり

わたしの途は ....
夕暮れのバス停で
バスを何本も見送りながら
いつまでも尽きない話をしていた

木枯らしに吹かれて
君が吐き出す白い息が
ダイヤモンドダストに見えた

教室も ....
その指先がこの涙をぬぐうことは
もうないのだ、と
うすうすは わかっていたよ

その手がこの手を握ることは
もうないのだ、と
うすうすは 気づいてはいたよ

その腕がこの体を抱 ....
足先の温みが一つ消える こんな夜は

君が 遠い目をするものだから 


私は 少し寂しくて

シャリ シャリ シャリと 梨を剥く


窓辺にもたれて 膿む月を

仰いで君は  ....
化石を拾う
改札口は静かで
足跡ばかりが通り過ぎていく
ぼくはそこで案山子になっている

へのへのもへじ
通り過ぎてく人に
顔は何気にそう書かれてしまったけれど
何か無限のようなかなし ....
ヘドロ化した日常に膿んで見上げる

ちっぽけなあたしから 
    ぽ
    と
    ん
    と
  散った恋心

真っ青な空に溶けて行く

気の早いケヤキは紅 ....
何時ものように口ずさんだ歌は
受けとめてくれるはずの
君の笑顔をすり抜け
秋の日の溜め息となる


少し言い過ぎたのかな
でも一度口にした言葉は
もう取り消せなくて
気まずい思いを残 ....
わたしの空より
青い青いその先に
あなたの見ている空がある


夏から二ヵ月毎のカレンダーを剥がして
こころの奥まで秋が染みた日


それぞれの手に触れる温もりは
少し哀しい距離感 ....
夜がやって来た

挨拶がわりに
手元にあったまたたびをさしだすと
なんと 長い舌を出して べろっとなめ取った

裏返しになってよだれを流し
でろでろになったところを見ると
どうや ....
生足は季節のアンテナで
感じる微かな蠢きを捕らえては
白い小箱に忍ばせる

真夜中のブランコ
揺れる君のくるぶしは
季節はずれのアンクレット
楽しかったはずの映画も
楽しみだったはずの ....
貴方の瞳があまりにも
澄んだ色をしているから 
向かいあうと俯いてしまって
貴方の爪先ばかりを見ている

眩しいと感じるものが苦手で
目を逸らしてしまうのは
自分の穢 ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた

雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている

物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた

栞を
 ....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった


等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
赤が 赤く見えること
青が 青く見えること
それが不思議 だから それは魔法

花が 雪が 光のきらめきが 夕焼けが あの人が 
美しく見えること
それが不思議 だから それ ....
手のひらに感じる暖かさがあれば
他には何も要らない


日々思い出を積み上げても
それは単なる一里塚
それは儚い夢幻
振り返れば跡形もなく
積んだ記憶さえ残ってはいない


手の ....
神経質な夜に
まじないではなく
欲しいものは
精神安定剤と
ただ話を聞いてくれる人と
主の祈りと
虹の記憶と
腹をかかえて笑うカエルと
あの人のやさしさと
壮大なうねりの如き黒潮と
 ....
君と
真面目にふざける
キラキラと手をちらつかす
星の音を辿って歩く
水銀の様な川沿い
硝子玉握り締め
夜空に贅沢にばらまいて

やっとわかったことがある
僕らどこへでもゆける
臆 ....
{画像=070222142254.jpg}

{引用=
小さな水たまりは

はしゃぐ子供達の
泥足を受け入れて
玩具である自分が
うれしかった

何台もの車が走りすぎ
 ....
おやすみの挨拶に
朝目覚めた時に
会社へ出かける前に
君は僕に言って欲しいらしい


機嫌の悪いときもあるし
朝は何かと忙しいから
毎回言うのはめんどいなあ


本気じゃなくても ....
あの子がとっても憎いのは
真っ赤なリボンが似合っているから。
「パパとママに買ってもらったのよ」

わたしはせっせと働いて、働いて、働いて。
お母さんもお父さんも嘘つきだから、
歪んでいた ....
ローヒールでリフティング
重たい空気のこの季節
人工芝はもうめげて
なよなよなよなよ笑ってる
彼はというとお空から
カワセミみたいな声だして
あたしのことをからかうの

リクルートスー ....
おおはくちょうざ が ひかっている 。 後ろには あんどろめだざ が ひかえている 。 おりおんぼしも  意気 ようよう 。 ほっきょくせいは 泣いているよ 。 麦藁帽子に 白いワンピース
ブランコに 揺られて

夏の雲を
見上げたら
鳥が飛んでいたね
 
木漏れ日のなか
燦めく緑と 君の白い影

 せせらぎが聞こえる
 川べりの道に ....
予想外だった
こんなにも簡単に爆発してしまうなんて

 *   *   *   *   *

掌の中に包み込むようにして隠していたグレープフルーツは
レンタルビデオ屋の万引き防止センサのゲ ....
母の小さな手が
ざわさわと高菜をもむ
塩と合わせる音が
その歴史を刻むリズム

器の底に横たわる思念
そこには計り知れぬ
脈々とした息遣いがある

その高菜を味見した母が
{ルビ辛 ....
 僕は季節の花を知らない
 風に乗って飛んでくる 
 その日その日の荒波の日常
 生きていくのに四苦八苦

 でも死に憧れるほどでもない
 それほど深刻でもない
 共有する時間だけが ....
光が 走る為
私の 光源は
泣かないで
戯言の 偽善

泥に 撒かれた
泥を 撒いた
花が 咲く
石の 花だ

光が 走る為
妄想上の 虚偽
笑って
悪人の 言動

泥の ....
贅肉のついた比喩を乗りこなして
ぼくの頭は蛍光灯に刺された
きみをミリ単位では計算できない今宵
骨に染み付いたほほえみ

知り合いもしくは友人らしきひとに
強要される愛想なんて5円くらいか ....
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