丘の上の工場から
午后のサイレンが聞こえて来る
いつもそれを待ち侘びていた君
遠くまで行きたくて飛び乗った電車
あれは過去のこと
海を見ていた
太陽は焼け付くようだった?
白 ....
グラス一杯の
ぼくの血は
だれも
救えやしない
一篇の
ぼくの詩と
全く
同じように
それらは
ただ、
そこに在るだけ
うん。
そうだ例えばね。
歳の離れた少女に、尊敬の念を感じたり。
歳の離れた、おっさんの人生を心配したり。
また。
そうかと思えば。
歳の離れた青年のケツを、思いっ ....
ことばの世界
は、白い
深い霧のよう
に、白い
白くて
何も
見えない
手探りして
手を伸ばすと
君の心臓の
感触がした
クリ 「美咲、結婚しよう」
美咲 「ああ、嬉しいっ、夢のようだわ!」
クリ 「君は夢など見ていないさ」
夢を見ているのはもちろんクリだった。
....
静物画の
バナナだけが
浮いている
林檎と比べたら
色気がない
けれど
バナナ
の皮を
脱がしたら
甘い香りが
漂った
完熟の林檎を
かじると
腐った ....
何か掴まなければ と
恐れなくてもよいのだ
いつでも繋げるように
私の両手は空いている
嘗て星々に触れたとき
驚きながらも微笑んだ
一秒よりもはやく
私たちは老いてゆくから
....
かた かたん。
取り付けの悪い、古びた窓を開けると、
鮮やかな色が目に飛び込んできたものだから。
かたん
すっと、手を伸ばして
触れようとして 気づいたこと。
かたん ....
誰かが言った 蒼穹は大地を抱きしめていると
月まで行かなければ空に抱かれる地球は見えない
遠い星まで行く気がないのなら
僕らが何に抱かれているのかは いつまでも分からない
....
惑星探検隊は、その星の生物に囲まれてしまった
探検隊の周囲でひざまずいて祈りを捧げ始める生物
「俺たちを神か何かと思っているのか」と隊長
「翻訳機のスピーカーを入れます」と隊員
「神よ、い ....
暮れていく夏空に似た恋をして大人になったつもりでいたの
言わないでほんとはもうね気付いてるあなたは優しいだから辛い
どうしても言えない言葉を胸に抱きあなたとわた ....
北極星までの距離は430光年だそうで
ということは 今 あそこで光っているのは
430年前の北極星なわけで
もしかすると とっくの昔に北極星なんて
なくなってるかもしれない
そう考えたら ....
その喧騒の中にあって、ミス・ブランチだけは異次元にひっそりと佇んでいる
ようだった。水槽の中で絶えずうごめいていて他のものはひたりと動くのを止
めている。彼女は金の魚ではないのに金魚という種類だ。 ....
アイツは昔
とにかく馬鹿だったんだ
バナナが大好きで
いつでもどこでも
バナナを齧ってた
食べた後のバナナの皮は
大事に持って帰るんだ
で
そうやって集めたバナナの皮を
クロゼットに ....
暖かな雨に追われて迷い込み君と出会った六月の町
徒に花びら数え占った恋の行方を君も知らない
花は花やがて綻び散るものの定めの前に花鋏有り
裏庭でか ....
家に帰ってきた瞬間に雨が降る
そんなことで
ちょっとした幸せを感じるのだから
たぶん、いや、確実に
僕と言う人間は
非常に単純にできているのだろう
ベランダに出て
雨にぬれた犬を見て ....
何十年 経てど心は 角だらけ
朝おきて のっぺらぼうが ひとり居る
ふんばって 何も出て来ず もう四日
乳酸菌 喉にぎざぎざ 突き刺さる
預言で ....
千年前
好きだった男がいた
自分の名前が
世界で一番嫌いな名前で
あたしの名前が
世界で一番好きな名前だ、
ということを
いつも言っていた
薄すぎる
珈琲を飲みながら
男の ....
なんだか嬉しくて
嬉しい詩を思い浮かべました
なんだか悲しくて
悲しい詩を思い浮かべました
書いていると
まったく違う感情なのに
まったく同じ色の涙が流れてきて
それは嬉しさ ....
自転車にひょっとこ
荷台ボロボロ
俺、激しくペダル
自転車にひょっとこ
走れ
俺号
うおーっ、うおーっと雄叫び
おまえの背中が春に似ていて、俺
自転車にひょっとこ
泣けるねえ ....
大阪駅前のな
でっかいスクランブル交差点
アンタもよく知ってるやろ
あそこのド真ん中で
赤信号のド真ん中で
車がブンブン走っとるド真ん中で
けったいな婆さんが踊っとったんや
ピンクと緑の ....
終わりの時には
しっかりと眼を開けていたい
そこに見えるすべてを
記憶に焼き付けて行きたいから
おとといの午後
娘と二人で近所のスーパーに行って
お菓子売り場でかれこれ30分近く
ハ ....
僕らはいつまで子供でいるというのか
100メートル競争に出場したままゴールから帰って来ない少年
給食を食べ続けたまま昼休みの教室から帰って来ない少女
草原では僕の生家が新たな生家を産 ....
明日
一日だけ
生きる
いい訳を
今日
考えて
いる
雨上がり湿った空気
屈折した気持ちで見上げる空に
描かれた虹の橋
一つ悲しみを乗り越えるとき
失くしてしまうものがあるとしたら
それはある種の光なのかもしれません
吸収して拡散 ....
また一つ
約束を破った
夕涼む縁側
うちわ
ねつ
におい
笑うしかないと
娘は知っている
殴り合ってケンカして、言い争いもしてみたり
時には涙もしてみたりで、本当に嫌いになることがあっても
僕らはまだ、幸せだよね。
君が居て、僕が居るんだから。
時計をなくして、太陽も頼りにでき ....
背筋伸ばしてごはんを食べる
お百姓さんありがとう
米、野菜、肉、魚、卵
残さず全部いただきまして
残らず排泄いたしまして
丈夫な身体を創ります
背筋伸ばしてしゃにむに働く
食うための ....
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
争いは銃からではなく
言葉から始まることを知らなくてはならない
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
言葉の扱いが ....
コップ一杯の冷たい水
そんなささやかな願いさえ
叶わないまま
死んでいくこどもがいる星
きっと百万年前も今も
あんまり変わってないんだよ
この星は
せめて
冷たい雨が降って
その唇に ....
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