今朝、手をつなぎながら 工場へと歩いていく
男女の姿を見た。顔はよく見なかった。
地下室工房へと向かう二人の足音は、
眠れぬ夜がまだつづいていることを報せた。
 しかし、ぼくは眠った。何世紀 ....
衛星カメラに映し出されたのは
列島を取り囲む工事現場の赤色灯。
そのせいあってか、今夜はとても静かです。
 それを描くためには、鉛筆では華奢すぎる。
骨はどうだろう?プラトンは幼少期、
クレヨンのかわりに指を、死んだ死刑囚の
指を与えられた。彼は作品を完成させるまで
幾度となく指と会話した。わたし ....
 ことが近づくにつれ剥がされていく、
壁に貼られた写真、枯れ葉。
壁には写真の跡が残り、太い樹の幹には、
男女の名前が彫られている。
今となってはどちらが若いか分らない。
宿り木に身を寄せる ....
 燃料係の私は、シャベル一杯に盛った 
  古すぎた印鑑を釜の中に放り込み、
   列車は走り続けた。煙は花びら舞うように、
    かかる風景を山間を 町を 空を
   紅く染めた―そこから ....
 街路樹の下を黙りこくって歩く
憂いのある者や、行く当ても無い者達。
もし彼らの言うとおりの 光無き夜が来るならば、
恐る恐るであれ僕らも、その目のなかに
宿すだろう。かつて面影と呼んでいた
 ....
「夜空に浮かんでいるのは、五千とんで二億ターブの声―」

最初からエンディングを撮り始めた映画のようだった。

明け方、公衆便所の鏡に向かって僕らは誰かの「声」で話しかけた。

出演者とし ....
空港に立つ君は、ベルトコンベヤーに乗せられた自分の荷物を待つ間に
荷物検査官の男は、真っ黒な犬を連れた男と共に、
レントゲンに映る不気味なシルエットに眉をひそめ、床の上には
首輪を首に食い込ませ ....
 朝方、工場へ向かう男たちの吐息は白い。
いないも同然、止まらない車のそれよりも、
高笑いする煙突の煙よりも、みぶるいしながら
道路の向こうでその身をこごめて掃除している、
女の吐く息こそが彼 ....
  突如、ファンファーレが鳴り響き、
歳月という歳月が、打ちひしがれた記憶が
―それは最後の葉を落とした冬の木々のように
私を丸裸にした。とはいえ、船長に任命された私は
真っ黒なボロノジャケッ ....
 一人ぼっちで 山小屋で過ごす 夜ってやつは恐ろしい。
 眠りにつくまであと少し。そこでまた再開するように
口火を切ったのは流れ星。真っ先に迎撃されたのは
真っ赤な唇―、吐き出された白い吐息は男 ....
  気の向くままに屋根を突き破って、
固い床の上で、くるくると回り続ける隕石から
拡がる光が部屋の中を照らしている。
  キキュロプスの瞳は、世紀末を迎えた
ミラーボールのようで、口から泡を吹 ....
「風は手で漕ぐよりも速い。」
と聞いていたが、それよりも
はるか先を行っていた。
小川を下る空のボートは―
かつて、ルーレットに記された言葉のみを使って
死ぬまで日記を書いたという
狂人た ....
 もはや、部屋の中にあるのは蝋燭だけ。
溶け出した蝋に固められていく、僕の頭蓋骨。
 最初に火を燈したのはきみだった。
―吹き消したのは誰だった?と、冷たくなった
マッチ棒に語りかけたのは、僕 ....
 もはやこれで最後というべきか、立ち並ぶ中古車。
看板のネオン。目に映るドブ川の泡。と、
おそらく強盗が捨てたジュークボックス。
はじけた泡から聞こえる、途切れ途切れのブルース。
片腕のアコー ....
割れた爪をぱちんと切る 君の音と
呼び鈴の音がかさなる。
そんな一瞬って、永遠になるかもしれない。

描かれた以上に、物事は動いていた。
ベランダに干されていたストッキングも
風に迷い込ん ....
 たとえば真夜中に、テーブルの上で
作りかけのパズルを再開する老人のように、
未完成であることだけが唯一の完成形であると
―仮定できないだろうか?
オーディオから流れている夜想曲を。
棚を埋 ....
洗い立てのかるい

ネルのシャツにでも着替えて

家を出て行けばいい

そして袖口を泥で汚したなら

帰ってくればいい

風に洗われながら

道端の小石とおしゃべりしながら
 ....
赤道直下の交差点を往来する、プラスとマイナス。
鉢合わせとなった影像から、流血沙汰の騒ぎへ。
切断面から溢れる磁力を嗅ぎ付け現れたのは、
若い詩人のセーラー。交差点の真ん中で、
―バッバッバッ ....
 耳という耳を串刺しにして歩く避雷針。
レコードの針。世界を夕暮れにするための音楽。
 
 夕闇の中で僕は、蝙蝠と一緒に飛び回る
真っ白な一羽のニワトリだった。梁から梁へ
飛びうつる大工のよ ....
積帝雲の奥には うずまっき
孵化した数万匹の おさっかな
はじめて口にする餌は つきあっかり

(骨のなかには 記憶 があるぜ
(骨のなかには 未来 があるぜ

金魚鉢の頭 ぐっるぐる
 ....
 パイロットサングラスを頭にのせた、
巫女たちが夢に見る黙示録―
 蜘蛛の巣一つない大広間。シャンデリアの上、
タキシード姿でシルクの手袋を咥えた燕が
フィアンセの現れる柱時計の 時が打たれる ....
 春夏秋冬の地下へ戻っていく 盲人たちの楽団。
揺れる地面。マンホールの蓋が吹っ飛ぶんじゃないかと
塞いだままのぼくの耳。それを差し出せば、ひょっとしたら
立つことが許されるかもしれない―
  ....
 額に血を滲ませ、倒れこんだ若い兵士が伸ばした手の先に
身体じゅう芝生で覆われたオウムが着地する。正式名称は分からない。
でもまだ赤ちゃんだ。一つも言葉を憶えちゃいない。そして
テープに遺言を残 ....
 私は一人でバスに乗った。乗客は私だけだった。
バスはバス停のない民家の前で止まった。庭先から、
喪服を着た大勢の人達が車内に乗り込んできた。
そして皆一様に、最後部に座っていた私の前に来ると
 ....
 一面緑の草原に囲まれていた、人気のない路上で私は
太っちょの男と一緒に、真っ白な車のボンネットを
ぐいぐい押している。それを車内から美しい娘が見ている。
心配そうとも申し訳なさそうとも、そして ....
 注文と同時に、鳥かごの中に手を突っ込み
乱暴に足首を掴み上げたのは君。引っ張り出された
のは僕。店内でたった一人席につくホーキンスは
「上海は遠いかい、それとも近かい?」と、
店員である少女 ....
雲雀がさえずる青空の下、春のこと。
トラクターに乗っていた祖父は
時折、貝殻に耳を当てた。
蝶のように舞うのか蜂のように刺すのか
黒板消しを片手に、
アルファベットの「b」を脅す少女。
俺の靴がゴスペルをしている
扉の向こう、
掃除夫のモップに合わせて
プテラノドン(335)
タイトル カテゴリ Point 日付
「Poluca」自由詩3*07/1/21 21:43
イリュミ・ネーション自由詩5*07/1/21 3:10
「real」自由詩5*07/1/21 2:48
ランプ自由詩4*07/1/9 2:26
「S・L」自由詩3*06/12/31 14:02
ブライト・アイズ自由詩3*06/12/30 15:54
「WE」自由詩2*06/12/29 2:48
エア・ポート自由詩4*06/12/29 2:20
「McDonald」自由詩4*06/12/23 9:44
ボ・ディ自由詩3*06/12/10 16:17
「山小屋」自由詩3*06/11/23 2:09
キキュロプスの涙自由詩4*06/11/20 2:34
ボート自由詩5*06/11/6 21:45
「暗闇」自由詩2*06/10/29 0:11
finalset自由詩3*06/10/22 1:22
情事自由詩2*06/10/8 14:15
日々界隈、あるいはぼくらの自由詩9*06/9/18 18:38
「秋分」自由詩4*06/9/16 23:31
赤道直下で感光される九月自由詩2*06/9/16 0:15
自由詩3*06/9/3 21:03
毛虫自由詩3*06/8/31 1:57
逃れられない自由詩1*06/8/25 4:15
ワンダーグラウンド自由詩1*06/8/21 5:53
country girl自由詩0*06/8/11 2:30
バス自由詩0*06/6/7 17:51
初夏の救出劇自由詩3*06/6/7 17:18
「北京ダック」自由詩1*06/4/28 9:14
こうして祖父は七つの海をまたいだ自由詩1*06/4/26 9:02
Re:自由詩4*06/4/18 3:32
アーネスト自由詩2*06/4/17 7:54

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