眠らない詩人は、そこにいる、誰もが眠っている間に
手にしていたスプレー缶を空にした。
彼、彼女が去った後、無数に立ち並ぶ
壁という壁は痙攣していた。
何故って、シンナーの匂いのせいじゃない。
 ....
腹を空かした豚が
がつがつと餌を食べていた
すると私は嬉しくなる
砂利を、固い砂利を食わしてあげたい
実際のところ奴等は
口から火花をきれいに飛ばすのだ
そして私は砂利を拾い集めている
 ....
鉄橋の側で三十分間立っていた。
三十分前は十二時だった。三十年前も。
三十年前はなかった鉄骨がピーンと伸びていた。
甲斐性のない俺の影は砂鉄のように交わった。
磁力に音はなかった。音はなかった ....
こどもが歩いていた
老人も歩いていた
とおいところで
ぼくらは一人だった
がたがた震えているかもしれない
風のあとに目覚める
かわいた沈黙のなかで
心のなかの もう一つの身体は
泣いて ....
彼が唇をとんがらせると卑猥な感じがする
と、もっぱらの評判。やさしい女ですら
あっちを向いてしまうだろう。男を目の前にして
眼を閉じないのはマネキンくらい。
酒場で交わされた雑多な会話。その気 ....
舞台となった森は狭かった。
そのままの格好で、と狩人は言った。
少年が頭にのせていたリンゴは本物だった。
憎悪に燃える魔女の瞳。
ぐつぐつと煮立った鍋。
気味の悪い匂い。
眠れる森の―、そ ....
私たちは死ぬまで生き続ける。
幽霊は死に続ける。いつまで?

さまよえる幽霊が躓いた。その幽霊は
浮いているはずじゃなかったの?と、
困惑した表情。悲しいのかもしれない。
死んでいるのに? ....
深夜営業のレストラン。男は、ぼそぼそ声で
「ひじをついちゃいけないよ」と、女に言った。
彼女はコップに口をつけては目をそらし、
隣のテーブルに座っていた大男の足を
しげしげと見つめている。
 ....
おれは言った。風を語るには
新しい記号を使わなければならない、と。
けれど、気象予報士は覚えようとしない。
テレビを信じる人たちの意見も一致している。
 目下、おれの立っている場所には、
ヘ ....
深夜 ガソリンスタンドにいたのは
でぶっちょの店員と組織に入って二年目を迎えたチヤーピンと
そのボスがだった。
「ヘイ!ファッキュー!トイレはどこだい?」と、
チャーピンは水鉄砲を店員に突きつ ....
凍えた町。シャーベットの雪が降ってきた。
暗記の得意な少女が泣いていたから。
「大丈夫。ケルベロスは虫歯よ。」と、
スキンヘッドの女が笑った。
幽霊が迷子を家まで送り届ける話。をした
男の皮 ....
昼下がりに 風はなく

すすき野原の 道をいく

老人が一人 沼の水面を

ちょい、と眺めると

さかなのかたちの 葉っぱが 

ちゃぽん、といった 

老人は去ってった 
 ....
子守唄のおかげで眠ったばかりの男が、
夢の中でも子守唄を要求している―

部屋の中をさまよっては壁にぶつかり
青白い火花を散らすブリキのこうもり。
それと一緒に地下室にしまわれていた、
未 ....
少年は粘土でイカの化け物を作った。
「これは何?」と先生が訊くと
「バケモノイカ!」と言って、
あまっていた粘土をイカの化け物にぶち当てた。
ふっ飛ばされたイカの化け物は、
隣にあった「潜水 ....
シャンプーハットをかぶる男の髪が、
全部抜け落ちてしまえばいいのに―と、
ドリスは星に願った。次の日、その男が
頭を掻くと髪がごっそり抜け落ちた。
ドリスは彼が風邪をひかないように
毛糸の帽 ....
その公園にはたくさんの小僧がいる。
「ハナタレ小僧」に「ヨダレ小僧」
「お漏らし小僧」に「汗かき小僧」のせいで
地面はビッショビショ!
芝生が枯れるわ臭いわで、たちの悪い動物園みたい。
人足 ....
僕の魂は丸いサイコロのよう―
生まれた時は四角だったが、
成長するにつれ丸くなっていった。
そしていよいよ丸くなったサイコロは
「何歩進め」などと伝えることなく転がり続ける。
きっと砕け散る ....
電子レンジがチンと鳴る。
ウェイターはコックを呼んだ。
電子レンジがチンしましたよ、と。
   
 気持のよい料理、
 ワインを飲み過ぎて酔っぱらった料理。
 うっかり火を近づけてはいけな ....
魅惑的な迷路。誰が立てたのか、
→看板は上を向いている。
見上げると、雨粒が落ちてくる。
→看板は下を向いている。
傘があるかもしれない、と私は思う。
「もったいぶった言い回し!」で
学者達は、実に様々な靴を用意する。
お前に合う靴はないか、と―
結局、手に入れたのは片方の靴だけ。
もう片方は路地にぶん投げられている。
探しに行かなくちゃな ....
どうして夜遅くになると、街灯に
目を奪われたりするんだろう―

都市、男が細い路地からアパートに向かって
詩を暗唱している場面に出くわした。
  溝川の底がくっきりと見えたような、
しかも ....
都市の地下には、巨大なトンネルがある。
憶えておくといい。この地面の下にトンネルがあると。
「工事再開まで後わずか―、」一面を飾った新聞記事。
鼠たちは配水管のなかを走り回っている。男たちが
 ....
ガソリンスタンドの自動販売機は
ドリスのために置かれている、なんて話が
囁かれている人気のない小屋。雨風に曝された
プラチック板は、透明というより白濁色。
おぼろげな陽射しにあふれた―、そこに ....
今夜―、銀河は沸騰している
星雲は膨らみつづける
銀箔の輝きがゆれている
何光年も離れた向こう
完璧な真空の空間のうち

宇宙は決まって沈黙している
時には激しい爆発音もあるらしいが
 ....
ドリスは世界中の言語を使いこなす。アマチュア無線も。
電波の類はお手の物といった感じで、彼女は
星のあかりさえ消すことができた。
ドリスは注文する。「自画像を描きなさい」とか、
「表現する前に ....
トンボの羽に 孔雀の羽根と
あらゆる羽根を用意した帽子屋―。
客である老人は、帽子も買わずに
猫の付け髭を注文する。(その店は付け髭も用意していたのだ)
そうすれば、家を荒らす鼠たちが
たち ....
夏の朝―薄暗い夜明け。伸びてくる
陽射しとともに加波山神社の鳥居をくぐると
先客の爺婆達が、木陰で賑やかに笑っていた。
それから間もなく、鉢巻巻いた先達さんに
御呼ばれした座敷の上では皆、お茶 ....
御忠告通り、ついさっきカーテンを
付け替えてみました。いざそうしてみると
不思議なもので、あれほど嫌だったバナナの刺繍も
気になりません。ただ、近い将来
チンパンジーを飼ってみようかと思ってい ....
夕方近く、観覧車はゆっくりと周る。
空は水色、明かりを点けている。
もっと失速してもいいはず。男と女はそう思う。
その愛が叶うといい。いとも簡単に。
ゲートの外でこだましている―、恋は水色。
 ....
なるほど 天文学者の言うとおり。
見ることの半分は想像力が問題となる。

夜中に女は月を見ていた。
双眼鏡の形にした手のなかから。
あるいはそう―、恥ずかしがる少女のように
顔を覆ったやわ ....
プテラノドン(335)
タイトル カテゴリ Point 日付
壁、眠らない詩人と自由詩2*06/1/17 3:19
博士の夢自由詩1*06/1/14 4:10
鉄の自由詩4*06/1/10 23:43
「十二月のスフィンクス」自由詩2*05/12/31 17:01
「マネキン」自由詩2*05/12/22 10:12
守られたもの自由詩2*05/12/20 7:31
幽霊じゃない自由詩4*05/12/13 21:21
エスパー自由詩0*05/12/6 2:20
風をむかえて自由詩1*05/12/1 7:45
進行する詩自由詩005/11/26 5:12
うろおぼえのメロディーを口づさむ少女自由詩2*05/11/25 2:20
自由詩1*05/11/20 20:56
子守唄自由詩2*05/11/19 2:46
彼こそ天才!自由詩2*05/11/18 1:26
『ドリス、優しくて』自由詩2*05/11/15 21:19
「公園」自由詩2*05/11/15 20:38
丸い、サイコロ自由詩1*05/11/15 20:00
「電子レンジ」自由詩1*05/11/9 0:36
迷路の看板自由詩1*05/11/5 0:08
自由詩3*05/11/5 0:00
すこやかな夜自由詩3*05/10/21 23:35
「トンネル」自由詩2*05/10/21 1:44
『ドリス、ささやいて』自由詩3+*05/10/20 20:28
夜に呼ぶ名は自由詩4*05/10/20 2:16
『注文するドリス』自由詩3*05/10/20 1:26
かくかくしかじか、猫は今夜自由詩1*05/10/19 3:58
加波山自由詩2*05/10/19 2:03
チンパンジーの憂鬱自由詩1*05/10/19 0:47
水色の行方自由詩2*05/10/16 2:26
いつでもそこに、宇宙があるとしたら?自由詩1*05/10/16 1:23

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