私は嘘をつき続けたが泥棒になれなかった。
ビーチでバカンスなんて夢のまた夢。
お祝いの葉巻はシガレットケースのなかで
来るべき時まではと死んだように眠っていたが、
ぱさぱさになったその肌はミイ ....
 装い新たに、春がまたやってくる。
けれどロープはロープとして、ロープのままで
ロープであることの命令を守り続ける。
庭先や、地下室や、納屋で、そのままの格好で。 
埃にまみれて 薄汚れて そ ....
 壁の無い部屋。隅っこに落ちているフライパンには
38口径の歯型が付いている。夜毎、俳優達の頭を
ハンマーで叩いてまわるという老人。彼にありったけの小銭を渡せば
修理してくれるという。
今日さっき、大海原に出航した私を 
海賊達ははなっから相手にしなかった。
あっちに行けと、手の平をひらひらさせるだけ
かねてから、船という船を海に沈めてきたという砲台は
一応こちらに向けられて ....
夜―コリアンハイウェイ。
広がるネオン 照らされた十字架のシルエット。
できることなら 僕はそこで祈ってみたい。
格子のすき間から チラッと見る神父。
椅子に座ったまま 声を喉に詰まらせる恋人 ....
私は通りすがりの人にカメラを渡し
何枚か写真を撮ってもらった。
…昼下がり クリーム色の歩道橋 
おとなしい道路― 
現像した写真を友人に見せると
「きれいだ」とか「うまい」とか褒められたの ....
 キリストの父親である男が、玄関の扉に磔となって帰宅する。
彼の三歳になる息子の「オモチャ!!」の叫び声が、戸棚の奥に隠されていた
ぬいぐるみの、スヌーピーのキンタマの後ろ、階段裏の水道管のなかで ....
 びしょ濡れの二人。川岸に這い上がった恋人達。
「永遠はカナヅチなので溺れてしまう」と彼は言った。
僕は、口から水を吐き出す彼女にハンカチを渡した。
すると彼女は「不条理の相方である可能性のよう ....
 こんな所に 靴を置いていったのは誰だ?―
道路脇の藪の中に くたびれた革靴が転がっている。
そこに一台の霊柩車が止まり、棺桶の中から少女が現れる。
彼女は靴に足をすべり込ませたが、いささか大き ....
 私はつかまえた。それからほっぽらかしにして
待つ事に↓死ぬまで鉄仮面をかぶり続ける男に
まつわる詩を。
 どれくらい経ったのだろうか。すでに
男は餓死していたが、小脇には たった今
帰還し ....
地中海といえど
地中に海はなかった
あるのは焚き火の跡のみ
煙は方角を知らない
はにかみながら
風の渦に飲み込まれる
まるでそこに
海があるように
飲み込まれてしまう
 ジョンガリアーノは囚人のために服を作った。
サーカスで焼け死んだライオンの葬儀と称して
ズボンには、尻尾が縫い付けられていた。
 彼らは看守がやってくると尻尾を揺らした。
すばやく振ったつも ....
机に座ったまま、休み時間を終える
子供たち―「角つけちゃえば?」とか
「宇宙へは行けないの?」とか、
誰かの助言によって思わぬ形で発展を遂げた、それら
ノートに描かれた未来の鳥たち。見たことあ ....
飛行場にキャリーカーを引く女が降り立つ。
搭乗口付近、首からプラカードをぶら下げた男が立っている。
「おかえり!愛しのミニー!」
まるっきりお姫様な気分!彼女はすっかり気をよくして
ホテルのカ ....
 退屈なのは自分のせい――と、かつて僕らは
それを殴っていた。うとうと眠りかけた時間を
時計のなかで凍っていく時間を、叩き起こすように。
おかげで今じゃ、僕らの時計はパンチドランク。
秒針は、 ....
 覚え書きの前提となる、万里の長城よりも長い語彙から
盗み出された建築方法。そのいくつかを私は知っていた。
例えば シベリアのスーパーマーケットの駐車場で
荷物をしこたま載せたカートを押す老婆の ....
まず
捨てられたままの
目くらのテレビの
スイッチを入れてみろ

おはよう と老婆が
自家製ジャムの瓶に向かって
声をかけると同時に、眠そうに目をこすった
孫たちが起き出すから

 ....
私は読まずにすんだ。さっき部屋にやってきた
詩も小説も読まない親愛なる友人が、
馬鹿共が書いた本に向かって、ピストルを弾く真似をしてくれたから。
私は本に開いた穴から世界を覗き見た。
 賑やか ....
路上で、ベルボーイ気取りの道化男が(※1)
呼び鈴を盗まれて、おろおろしている場面に
出くわした事がないだろうか?

ベルを盗んだのは僕の友人だった(※2)
そして彼に、ベルを返したのは僕だ ....
曇り空の一日に
土手を歩く僕は
ふいに 笑いかけて転んだ
鳥が一斉に飛び立った

僕は誰もいないマウンドに立っている
フェンスに向かって詩を投げる
一行きりの詩を投げる
フェンスの向こ ....
両目をとじて
庭に向かってぶん投げた
ぼくの目玉は見ていた

シートの上で上手にウェイトを
↑↓させているノーヘルの男を

ポストなかに
→←が届けられたことを
しっかりと見ていた
 ....
何度も書き消した事で、汚れていた紙の上に
ペンが刺さっている。
「近づく事なかれ!」
「進入許さず!」
案山子のように見守るつもりで?
見守られているというのに―。
「一日」

「歩」だけの将棋。
まるくてほそい盤面。
太陽の一手と月の一手。
ぼくらは見届けるだけ。

「ドリスについて」

愛していると言わぬこと。
永遠なんてありはしないと嘘つ ....
昨日、中国語教室のある、
ビルの入口から飛び出してきた小学生と
電車の中で席を譲る小学生を見た。
毛沢東よ。あなたの遺した中国は
こんな風に、僕の中で息づいているよ。
縫うように眺めるなんてよくいったもの
瞳をふちどるまつ毛は―針みたいに―貧弱そのもの
けれど私はそれをうまく縫えるのだろうか。
あの魔法の絨毯を。誰を最初に乗せる?どこまで行くの?
消しゴムだけで人物画を描く画家は
私に「見ろ」と言った。
私は鏡よりもそっくりだと思った
キャンバスは鏡だった。
先生の言うとおり!数学の答えはいっぱいあるし、
ワインは死人のために飲むもの。
しばらくすると、校門の前に汲み取り屋がやってきて
糞をばら撒いて去っていく。
一万匹の野良猫たち―。私はそれを
誰もいない地下トンネルのなかで見た。
小さい火花がパチッ、と弾けるのを
「―死ぬまで身体をこすり付け合うのさ。」
イギリス人の学者の亡霊が囁いた。
 まった ....
水底は、くぼませたぼくの手の平と同じ形
あるいは蜃気楼かもしれないそこに
フラミンゴはいない。一匹も。
もう、すでに?
ぼくの手の平には羽根がある。
「港は蒸気に包まれているよ
倉庫番の男はカモメに餌をやってるし
横縞シャツの丸太腕の男達は
朝から晩までせわしなく働いてくれる
一日中海の見えるベンチに坐り続ける老人は
二十年前に、船で出た ....
プテラノドン(335)
タイトル カテゴリ Point 日付
嘘つきは泥棒のはじまり自由詩1*06/4/6 5:16
装い新たに、ロープもまた自由詩1*06/4/5 1:07
自由詩2*06/4/2 2:14
出航する三月自由詩2*06/3/31 15:02
コリアンハイウェイ自由詩2*06/3/28 23:59
誘 惑自由詩3*06/3/28 12:26
「祝祭の夜」自由詩1*06/3/23 14:31
永遠の自由詩3*06/3/21 1:57
藪の中の靴自由詩3*06/3/17 1:49
帰還自由詩1*06/3/14 6:01
「地中海」自由詩2*06/3/12 1:20
「囚人」自由詩2*06/3/10 15:41
アンチヒーロー自由詩1*06/3/9 23:34
パレード中止、或いはカルフォルニアで自由詩1*06/3/9 18:08
Punch Drunk Times自由詩3*06/3/8 8:14
覚え書きの前提となる—自由詩1*06/3/5 2:44
ゴミ山とテレビの象徴自由詩4*06/3/4 1:49
本は必要か自由詩2*06/3/4 0:50
路 上自由詩1*06/2/24 9:23
土 手自由詩2*06/2/22 12:48
眼球自由詩2*06/2/20 8:47
「愛について」自由詩1*06/2/20 3:06
『ドリスの一日』自由詩2*06/2/19 7:49
毛沢東よ自由詩1*06/2/15 11:41
絨毯自由詩1*06/2/14 3:25
二月の肖像画自由詩1*06/2/9 23:06
轢かれた教授自由詩2*06/2/5 0:59
詩力発電[group]自由詩5*06/1/29 11:50
「オアシス」自由詩2*06/1/28 3:01
「アトランティス」自由詩3*06/1/17 3:41

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