二月末には毎年わたしの誕生日がある。ことしは、実家にいるので、そして妹も帰ってくるというので(姉は仕事のため帰ってこられないのだという)、安心してホールケーキが買えるわねと母が笑った。
妊娠のためと ....
0が1を
たべつくして
朝になっても
明るくない
うすく凍りついた水たまりを割ると
世界の底で
あなたがスープみたいに眠っている
みてあのこまだ
舟なんかつくってる
とさされたゆびを
はじから折って編み込んでいく
わたしはかなしかった
夜でも朝でも
ま昼にはいっそおそろしかった
からだじゅうに溜まった水が
....
あなたはいちども
わたしを愛さなかったけど
あの
朝とも夜ともつかない暗がりに
わたしともあなたともつかなくなったどろどろに
手を抜いたこともなかった
かわいそうに
いつまでも
....
こわくない
冬なので
こわくない
ビタミン剤あるから
ぜんぜんこわくない
花柄の靴したを
いつもばかにされても
構わないで履きつづけていた
ななちゃんは9歳だったのに
勇敢だ ....
夫の恋人はわたしよりすこし背がたかくて聡明な肌をしている
恋人の妻はアイロンがけがうまい それしか知らない
鳩も恋をするんだろうか
箪笥や窓枠も恋をするのかな
わたしの目はどうして
いつ ....
音は雪に食べられてしまい
部屋は
かえって生きものの息づかいでみちている
台所の戸棚のなかで
じゃがいもの芽が伸びてゆく
張りつめた胸の皮膚のしたを
薄くなった血がめぐっている
....
あなたがむかし
わたしにつけた縄を
こんどはわたしが
あのひとに結びます
雪は屋根のうえでだらしなくなって
白がすこし疲れたようす
毎朝 沸騰する
わたしの身体を知らないでし ....
夜中
息をひそめて
折りたたんだ気持をひろげていく
広げきったら折りたたみ
わたしが
きのうのまま
朝を迎える
1000日まえに
あなたがはじいた額のうぶ毛が
わたしの下腹であわい振動となって
いまではすっかり花のよう
つぼみとも種ともつかぬ時間が
おいしい毒になって
いつかあなたにも届くと ....
夜に
徐々に黒は
春に犯されている
そうと知りながら
花を賛美した
泣いているひとを知りながら
眠たい酒樽たちに
よごれた指を一本ずつ沈めていく
抱きしめてなおやさしいために
....
しかくい青さに煮出されるみたいにして泳いでいたあの子がいまはほんとうに
ま緑色になってしまった、泳ぎはかわらないが
ちらちらと遠くみえるのはかなしみだけであった
あんなに、なんども
きれい ....
ほしかった
ものをまえに
気持をうしないそうで
驚いている
驚いている
わたしがわたしを
うしないそうで
ねむりなよ
あなたが
言うものだから
泣くよりさきに
ほほえ ....
雨の日に彼女はピクニックへでかける
ぐしょ濡れのボンネットのうえでキスするために
アナウンスが不在を告げる
(あなたが誰かわかりません)
ため息で重たくなったバケツ
動物園で産まれた猿が山で ....
ひとを好きになって
はずかしかった
目も口も鼻も手足も
はずかしかった
話すことも黙ることも
さわってもさわられても
泣きたかった
赤くて青くて
欲しかった
あふれるまぎわの気持 ....
はす向かいの煙草屋から2メートル借りて
となりに住む大学生から4メートル借りて
街頭募金を装って6メートル借りて
それでもたりなかったから交番へいって3メートル借りた
夜爆発して
住人が ....
それでも二人は
かわいていた
恋はいくつも死んで
錠は錆びきって
まだ出会ってさえいない心持をして
よごれて
あなたは笑っていた
ちかちかする電灯をつけて
陽気な詩を読んでいた
「星がながれるころ」、
歌いだしたとき
詩だと思っていた
( )を忘れたい
ほとんど白い ....
ひかりはやみとあらそいながら
ちいさな点を穿つのだ
愛の横でみたされながら
永遠にあしたは来なかった
きれいな線をひきながら
境目づいたからだのなかで
ひかりはやみと抱きあいながら
....
ここがどこかわからなくなってしまう
眠っていたわけでもないのに
あなたはわたしと太陽のあいだにたつので
そうか、いつも
ちょうどまぶしい
とにかく熊は
とてもつかれて
泳ぎはじめた川の途中で
夢をみることにした
川を渡りきる夢を
熊は
夕やみは
あ と言うまに夜へ伸びて
人びとを愛へ仕向けます
....
夜はごうごう
手足はしろく
わたしを売って
あなたを買おう
頭のないロボットが
あざやかなシュートを放つ
鍛えぬかれた一秒が
光ることなく埋葬された
どうして鏡には
こんなに知らないような女ばかりうつるのだろう
手垢のついた壁にかこまれて
言いたいことがある、と
思っていた
そればかりを覚えている
冷えた砂漠になげだされた夜だ
....
雪は降らなくていい
長い詩もいらない
部屋には
湯沸かし器があればいい
わたしは臆病すぎるだろうか
ねえわたしたちは
なんて滑稽なかたちをしているのだろう
角のまるい三角をつみあげる
角砂糖のような几帳面さであなたは
猫も飼わなかったし
お揃いの刺青も彫らなかったね
あなたはもう
しらない人になった
前髪をきれいに切りそろえて
あなたはそれから日記を書かなくなって、たぶん唇はかわいている。
テレビは消音のまま点けっぱなしになっているから、部屋のなかの光と音のバランスは悪い。視覚的な喧噪と、それを拒否する沈黙。でもカーテ ....
あなたに何て言おうか
ずっと考えてた
あなたを愛してはいない
みていちょうが
こぼれるように
色づいている
愛しているといった
あなたの名前をしらない
いったこともない外国の街の名を知っている
冬は雨ばかり降るということも
あなたがそこでどんなふうに目を細めるかも
嘘をつかないあなたが ....
寝息もかたちを持つ生々しい夜に
生きていることははずかしかった
熱と湿りを帯びるからだが
その振動や重みが
やがて夜の裾がめくれはじめ
青と赤が互いを超える
はじまりとおわりを混ぜ ....
やがて水が
熱を帯び
傷んだ管のひびわれは
取り返しようもなく波打って
かつて海であった記憶をたぐる
かなしみはコンクリートをふちどって
どれだけ抱いても減らない全てに
途方にく ....
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