猫 聞いて
きのう わたし
乗り越えた柵
おきたらまた
目の前に柵
猫 ねそべって
聞いてない
あした わたし
終わりをみに
いこうかな
猫 おまえ
やさしいひとに
拾 ....
愛と呼んでもさしつかえないくらいのきもちだったよ
朝おきて
顔をあらうまでのあいだに
147回おもい描いたり
季語のかわりに
きみの名前をいれたり
あんな
愛みたいな
ただの
鏡 ....
ノイズをもってこい
おれを食ってくれ
鳥が死んだんだ
だれにも知られずに
メロディーはいらない
ノイズをもってこい
思想はいらない
おれを食ってくれ
庭師は庭を焼いたんだ
....
枝まめのからをいちいち剥いて、煮立った出汁にいれてすぐに火を止める。つやつやした色のつぶ。おとうふはいちど湯がくと灰汁がでてやわらかな口どけになる。片栗粉を水で溶いていたら夫から電話があり、遅くな ....
それ以上どこにも行けない場所で
言葉をどれほどつみあげてもかたちにはならなかった
ささやいて
抱き合って
口づけあって
交わりあって
罵りあって
それ以上どこにも行けない場所 ....
さみだれは
あっという間に
食いつくされてしまった
季節の名のつくものは
だいたいひとがむらがって
食いつくしてしまった
けれども
初夏
涼しくわらう目元に
わずかに残さ ....
朝にそれは
にぶく光り
夜になると
横たわり眠る
昼まに
のぞいてみたときには
四年まえのわたしを
しずかに抱いて
泣いていた
あなたが息を吐くだけで
心は水びたしになった
そのまま寝そべると
目頭からあふれだし
それをみたあなたが
波のように笑った
ひとりで新幹線に乗るときの駅弁は寿司ときめている。新大阪からは巻き寿司、品川からは握り。東京からはめったに乗らない。缶ビールを買って、のみきる前に満腹になってしまう。
実家の庭に増えているす ....
愛しさをこじらせた朝
うらぎるように街は香り
なにも
知らないようなふりを
続けるほかになかった
押しだまる人びとのかげに
花水木がしらじらと開いている
ふせて
あきらめて
大事なことなどないと
みとめて
そして
とくに大事でも
必要でもないものとして
抱いて
胸のあたりに
なつかしいうたが溜まってしまい
病院へいったが
ておくれだった
それ以来
胸のあたりに
うたを一匹
飼っている
あの日とよく似た景色に
ぼくは取り残されている
すこしだけみじめで
信じられないくらい自由だ
長い髪をしていた
君がここにいない
「ゆうがたにも匂いがあるね
晴れた日と
雨の日 ....
ため池に立っていると
女たちがやってきて
きのうまで愛していた男を捨てていく
濡れた靴したをすっかり乾かしてやると
女たちは
ちがう男を釣り上げて
また
立ちこめる現実へ帰っていく
男たちに
愛していると言うと
とたんにやせ細ってしまい
女たちに
愛していると囁けば
とたんに膨れ上がる
鏡にむかって
愛しているとつぶやいて見たら
鏡は粉々にわれてしまっ ....
夫はわたしの手足を縛る、とても適切なやり方をしっている。どうしてだかはわからない。そういえば、最初からそうだった。どうしてだろう。他人なのに。
土曜日だというのに、部活動でもあるのだろうか、制服 ....
まちは固すぎるので
気をぬくとぶつかって死ぬ
あらゆるものが
手に入れやすくなり
あふれ出すようになると
昨日がどんどん遠ざかり死ぬ
やさしさが
一山いくらの値札をつけて
....
わたしたちはFEEDされている。
生きるには時間が経ちすぎている、
絶望は希望よりもすこしだけ早く感染する、
いるといないの合間を貪る猫。
不自由で浴びる、
嘘を吐くときは好きではないが ....
女の子は
愛で太るから
かわいいあなたを食べきって
次の季節に出かけるの
土砂降りの日に偶然出会った。(偶然以外の出会いがあるのかどうかはまた別にするとして)都会の昼間に雨が降ればにぎわう場所といえばコーヒーショップ。人まみれのこまごました座席を一瞥して隣にしましょうと ....
曇天に溶ける花びら 頬 目じり
花冷えに持ち寄る肌にふる夜よ
うち側に空を描いた傘、卯月
ぶらんこを揺らしてもなお遠のいて
あらしの夜は
あついお湯と
指を五本ずつもちよって
がたがた言うガラスにまもられながら
解体した
そとは
だんだんしずかになって
わたしたちも
きちんとばらばらになる
....
そらが高い日は
目は
あかるく乾いていた
とりかえしのつかない世界で
それは
神様みたいに
あかるく乾いていた
ティッシュ 血 生クリーム
爪 りんご ペントハウス
火ぶくれ 夜 バンドマン
泥船 シチュー 皿
前髪 くつ下 オイル漬け
タクシー会社 午後 螺鈿
うす緑 血 ポインター
ベ ....
しかくい箱のなかに
丸と三角を
ひとつずついれる
それをどうするんだい
と聞くと
どうもしないの
と答える
どうもしないの
と
答えて
かなしそうにしている
トロフィーは贈られなかった
拍手と罵声は
ちょうどはんぶんずつ降り注いだ
彼女のステップは
そういう類のすばらしさだった
トロフィーは贈られなかった
でもそんなの気にしなかった
フロ ....
尼崎を超える頃に日付は変わる
川をわたる鳥のむれも
一日分の年を取る
吊り革に群がる背広を押しのけて
酸素のうすい車輛で
どうにか息をしている
神様
今日が正しくなくても
息を ....
たばこの燃え尽きるかたちがきれいだったから、このひとのことを好きになってもいいかしらと思った。なるたけ注意深く、愛するものを選んで、だけど、とめられない。どんなに決めていても、かならず、(すぐに) ....
濡れ髪と匂い立つ夜に猫の恋
沈丁の香にしのんで肌を舐め
海明にうかべる白い朝と夢
曇天。呼び出しに答え、すぐに放り出されたあと、ひとりで水族館へいく。
締め切り時間間際にくぐるゲート。入ったあとすぐに、うしろでシャッターが閉まる音。
館内は暗く、ごく控えめな音量で歌詞のない ....
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