騙されたくて朧月夜を散歩する
踏まれて香る芽紫蘇の死
液体化するわたし 麗らかで
春眠の教室窓から光こぼれる
米が汗をかいている
汗のようにおちる言葉
....
言うまでもなく潰瘍
腕痛めた 腕があるから痛い
服を畳み自分を畳みお休みなさい
夜の中で記憶を石にする
ひつじをかぞえるゆめのよう、に。
太古のこのわた ....
[な]
――懐かしい泣き虫さんへ
長雨のなか
なけなしの茄子がなったので
撫でまわして和んでいます
仲間にはなじみましたか
訛には慣れましたか
ないものねだりの
涙を流 ....
[た]
谷あいの棚田に
焚き火して
鯛焼き食べながら
たまさかの煙草を楽しみながら
大義だなあと狸親父
タナバタさんの竹いるか?と
訊ねるがはやいか
竹林から
たっぷ ....
我々はバカなことをしたかったのである。
否、バカなことをするべきときだと信じたのである。
夜9時から翌朝7時までチャットをするとか
明け方4時に大音量でヘビメタを聴くとか
あてもなく売れな ....
考えてみたら・・・オレオレ率と吟醸度は相反するものなのかもしれず、オレオレ率と吟醸度をともに低くするなんてすごく難しいんではないか。実作者はオレオレ率がひじょーに高くてもかまわないと思うし、逆に純読者 ....
髪の乱れを気になさるな。
血濡れた衣も気になさるな。
そなたは美しゅうござります。
この身はすでに腐り果て
ところどころに穴ひらき
覗く腐肉に蛆が這い。
しかあれど
まなこはかっと見 ....
早起きに過ぎる。
セミのくせに早起きに過ぎる。
年寄りみたいに早起きだ。
それとも年寄りなんだろか。
夜勤が明けて、
眩しい日射しが鬱陶しくてたまらない朝、
それでも眠らなくちゃならな ....
堕ちる 堕ちる 堕ちる どこまでなんて知らない
視界は真っ暗ってわけじゃなくて
パチンコ屋のネオンやらスナックの看板やら
妙に見慣れた景色や知人の顔が通り過ぎる
おおい ウォッカ・ライ ....
窓ガラスがかたかたと鳴るのは
風のせいではない
カーテンが明るさに焦げているのは
西日のせいではない
窓に背を向けて本を読み続ける
誰かが肩に手を置く
焦げた風が髪をちぢらせる臭い ....
{引用=私イコール作者だと信じる純朴な読者は、読むな。}
夫のいびきが隣の寝室から聞こえる
ここは私の部屋で ここにあるのは私の取り分
大きな書棚 たくさんの本 オカリナ ちゃちな顕 ....
どうしましょう
幸せなのです
幸せでたまらんのです
涙も出ます
あ
それは煙草の煙のせいかな
とにかくとてつもなく幸せなのです
不思議な気分です
ほしいものがありません
必要なも ....
ものすごく
おなかがすいているらしい
そりゃそうかもしれない
今日はバニラアイスをひとつ食べたきりだから
食欲ってどんなだっけ
胃がしくしく痛い気がするけど
これがおなかすいたというこ ....
焚き火の火を見つめながら
煙草を吸っているから
涙もくしゃみも煙のせいにできる
焚き付けの新聞紙にはテロのニュース
世の中のもめごとみんな燃やしてすっきり
なんてわけにはいかないけど
....
子どものころの私にはロールモデルがなかった。こうなりたい、という目標がぜんぜんなかった。高校生になってからは国語教師(女)に憧れたり、パティ・スミスになりたいなーと思ったりしたこともあったけれど、現実 ....
なぜか怖いもの気色悪いものが見たくなり、グロ画像を探してまわった。でもあまり怖くない・・・気持ち悪くさえない・・・これはいけない。と思って楳図かずおの『漂流教室』を読みかえしたらやっぱりいつものように ....
だとしたら、方法は一つしかない。笑い転げてのたうちまわるのだ。「最高最高いいわーっ」と叫んで痙攣するのだ。理解しなくてもできなくても、そもそも理解とか知性とかからほど遠い場所に棲息するどうしようもない ....
「ケメ子の歌」を聴いて笑うのはかっこわるい。「帰ってきたヨッパライ」を聴いて笑うのもかっこよくない。音楽聴いて笑うなら「君だけを」だ。マジメに歌ってるやつを笑って愛でるのだ。それがキャンプだ、と鈴木い ....
そのむかし、「キャノンボール」というオールスター総出演の大バカなカーアクション映画があって、バカにしながら見れば楽しいが、本気で楽しみにしながら映画館で見たら悲しくなるようなシロモノだった。本国ではど ....
ぜいぜい息切らして走る土手に
意志ころ犬ころ石っころ
どけよ邪魔なんだからどいてくれよ
川底にきらりと光った真空管
俺がほしかったのはあれなのだ
長らく探し続けていたのは
あれにまちが ....
壊れかけたラジオが
なぜだか中国語の放送だけを受信する
意味はまるでわからないが
聞き覚えのある声だ
演説口調に冒されて
空間は異次元的に歪んでゆき
西壁はすっかり半透明の灰色の寒天に ....
センパイ綺麗ですよねなんで結婚しないんですか
などとほざく後輩の頭をこつんとこづき
それじゃ明日ねとあっさり告げて
農協の裏手の墓地を抜け
コンクリ舗装のきつい坂を登り
唐突にある扉をあ ....
ここで赤い魚の話をしてはいけません
最初の貼り紙は公民館のドアに貼られた
誰が貼ったのか
誰も知らなかった
次の貼り紙はあちこちのスーパーで見られた
誰が貼ったのか
店員も店長も知 ....
かあさんは裏庭にチガヤを植えなかった。
壁を緑に塗らなかった。
とうさんは健康的に山を登り、
かあさんは家で本を読み、
かあさんはおもての庭に紫陽花を植え、
家の壁は地味な灰色に塗られた。
....
誘蛾灯の下でバサバサ
大きな腹を揺すぶって
分厚い羽をバサバサ
まるでモスラみたいにバサバサ
記憶のなかのオオミズアオは
そんなふうにとっても大きかったのに
こうして見ると
意外に小 ....
赤らんでゆくトマト、
緑に染まってゆくピーマン。
畑のトマトはトマトくさい、
畑のピーマンはピーマンくさい。
八百屋で買ったピーマンを台所で切る、
ピーマンの匂いがしない。
当たり前かもし ....
一日に一回
空は夕焼けに染まる。
晴れていたなら、だけど。もちろん。
夕暮れてゆく世界は私の手の中にあって
私は一杯のコーヒーを飲み干すみたいに
簡単に
それを飲み干す。
でも確 ....
シェルターの中は安全なのよ と
おかあさんはいう
外に出たらみんな死んでしまうんだ と
おとうさんはいう
てんじょうによじのぼって
あけちゃいけない外も見えないまどに
そっとほおをあて ....
手を伸ばせば届くところにいる
わたしのかげ
ううん
見えるところを探しても だめ
窓のそとの闇に
いくら目をこらしていても むり
ひとりで銀河に立って
ひとりで爆発して
わたし
....
夜風に杉の葉が揺れる
誰かの約束が
ほろり
足先に落ちてころがる
さあ 準備はOK? わたし
夜露でつめたいブルーシートに
さかなたちの影が泳ぎくる
さらりひらり木の葉よりかるく ....
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