1.日没

私はラセンウジバエ(雌)である。
私には名前がない。
ラセンウジバエ(雌)の群の中から
私を識別し同定することは誰にもできない。

二枚の羽があやうくふるえる。
ホルモンは ....
闇に紛れてゆらり現れ。
夜だけ這い出る砂浜に見えぬ風紋。
太い蛇身にアンバランスな白い細首、
音も立てずに進む。

誰が姿を見たというか。
その身を見れば命はないというに。
赤いであろう ....
きのう
生きている友に手紙を書いた
行かなかったけれど
忘れたわけではないと

きょうは異常乾燥注意報が出ていて
どこかの土手が延焼したと
広報が単調に喋っている

どうせ誰かが消す ....
繕っても繕ってもほつれてゆく
こたつぶとんのはじっこの糸のような
きみのことばに耳を傾けている
そとはつめたい雨
ポストに届いたばかりのハガキには
あと三十分で春がきます と
楽観的な文字 ....
{画像=080307003733.jpg}

翼もないのに太陽に近づいたので
どこにも行けなくなってしまう
尾根伝いにやってきた
自分の足跡をふりかえる と
笑い出しそうな風が耳元でさわぐ ....
わからないものに質問しても
たぶん答は得られないので

秋の初めの風のように
いくぶん鋭い金属質の響きで

愚かしくみえる沸騰には
整った和音で対応すること

冷笑じみた混乱には
 ....
禁忌は真っ白にほどけてゆく
きらきらと
あたりいちめんにひかる黄砂
爛れてゆく頬に
焦げ縮れてゆく髪に
明るくかがやくプルトニウムをかざろう

これで終わりなのだから
やり直すこともな ....
{引用=お月さんいくつ じゅうさんななつ}

月齢は十一、
若潮の波、明け方の空に低い低い月。
月齢は十一、
大きく切り分けた夕張メロン。

{引用=あの子を産んで この子を産んで
だ ....
夜に投げたる我が声は
君に届くと思はれず
夜に唄ひし我が声は
夜に砕けて散るがよし

朱夏の恋路の急坂を
上り下りも覚え得ず
ただひたぶるに足掻きをり
ただ愚かにも足掻きをり

君 ....
春は名のみのきさらぎの
未だ温まぬせせらぎの
橋のたもとの裸木の
わづかに赤き冬芽かな

春は春とてきさらぎの
未だ冷たき春の風
襟立て歩く川筋に
ちらほら青く下萌ゆる

我の窓辺 ....
軽やかにリズムをきざみ
一定の速度で
急ぐこともなく停滞することもなく
あなたにむかう
天体の音楽は
微妙なバランスの調和を保ち
わたしたちのうえにある
そこまでうつくしくはないにしろ
 ....
ここがどこかわからない
灯りは煌々と道路を照らしている
壁のように積まれたプラスチックパレット
無人のフォークリフト
コンテナ
なぜここに来たかわからない
すこし伸びをすると
手が届きそ ....
結局のところあなたについて書くほかはないのだ。
選択肢は常に目の前にぶらさがる。
埃だらけ蜘蛛の巣だらけのシャンデリアみたいに、
ぶらりぶらりと。
肝臓の色をした月に腎臓型の雲がつかみかかる。 ....
何もない空からゼロがふってくる
ならばいくらかマシだったかもしれないけれど
真っ黒な空からはマイナスがふってくる
はっきりとしたベクトル
明確な方向性を持つマイナスが
あたまのうえからふって ....
あのひとの汗は鮎の匂いがした
もしかしたらキュウリウオの匂いだったかもしれないけど
げんみつなことは問わない
鮎はスイカの匂いがして
スイカは汗の匂いがして
汗は鮎の匂いがするのだ
結露に ....
{引用=(私の砂男に)}

描いたようなみどりの草原、青い空、
白い雲がにじむのはカメラの曇りのせい、
すべて出来合のうるわしい風景、
できる限り倍率をあげてみよう、
くるくるまわる水素原 ....
彼女は彷徨する
宇宙のもっとも昏い場所で
輝度分布と力学的質量分布の不一致を求めて
五次元を通り抜けるために
 

彼は停止する
宇宙のもっとも冥い場所で
客観的には停止した時間のなか ....
たとえば外が見渡す限りの草原で
はるか遠い地平線のうえ
まろやかな月が重たげに光っているなら
外は月夜で
という古い唄をうたってもいいとおもう

あるいは外が見渡す限りの大海原で
薄暗い ....
正月を過ぎたら
なにがなんでも
(たとえ気温が零度以下であろうとも)
春がきたと決めている。
占星術師は
(ひどく寒いのにもおかまいなしで)
窓を開けて夜空を仰ぐ。
深夜の冬空はすでに春 ....
十九の生首がの、あったと申すよ。
小さな川のほとりにぢゃ。
昔お前がよく焼き芋を買った店の向かいぢゃ。
あのころお前はしじゅう鼻の具合を悪くしての、
あの店の裏手の病院に通った。
雑貨を並べ ....
羊たちが目覚めて草原をさまよう、朝の陽は山々にさして、青みがかったきみの虹彩に映るのは昨日落としたまま忘れてしまったきみの幼年時代だ、きみは蜂のように騒ぎながら羊たちと踊る、朝の食事の合図が聞こえてく .... 弱い者は、弱い者を痛めつけるものだ。

***

おそらく、鈍感に見える人間も、それほど鈍感ではない。むしろ意外と鋭敏だったりする。実際に毎日会って話したって、そのひとが鈍感か敏感かはわからな ....
その扉は
鍵がなくても開くのです
もちろん
鍵を持っていても開きますが
鍵の存在を知る人は少ないのです

鍵がなくても開く扉の
鍵のありかはいずこと
おたずねになりますか?

虹の ....
暖かきペチカの前に佇み、
爪弾くは古きバラライカ、
人の涙振り絞るその哀歌、
されど汝が知るは人の世の上澄み。

冬も凍らぬ我が泉、
彩るものはすみれか百合か、
されど汝が明日は如何にか ....
マリンスノー
ふりつもる死骸

わたしというイキモノのうちそとで
生きたり死んだりしている生物たち

顕微鏡下の冬の水は活発な動きを示さない
微動だにしないとうめいな殻
わずかに繊毛を ....
型は確かに反射的だが、型を反射にするまでには鍛錬が必要だ。
だから野球選手は素振りをする。

***

ものを書くと自分の知らない場所で自分が動きはじめる。

***

誰一人救われ ....
もっとドアホになりたいのだけどなかなかドアホにならせてもらえない。

***

身を捨てたって浮かぶ瀬のない今日この頃。

***

自虐史観の対語は自慰史観なんだと知った。
自虐も ....
格言らしきものを裏返すのはらくちんすぎるな。つまり禁じ手と思われる。禁じ手万歳。

***

できないことをやろうとしたから今の人類がある。

***

言葉は見える。聞こえる。さわれ ....
罪を憎んで人を憎まず、
無知を憎んで人を憎まず、
誤解を憎んで人を憎まず、
えーいとにかくなんでもいいから、
人を憎まず。

駄作を愛することはできる。
駄作の作者を愛せるかどーかは定か ....
世界は終わってる。破滅も終末も過ぎた。生きてたくないけど生きてる。少なくとも意識がある。対象のない欲望がある。願いが叶わないのは当たり前。この状況下で絶望を歌うのは安易な選択です。絶望だって嘘なんです ....
佐々宝砂(882)
タイトル カテゴリ Point 日付
ラセンウジバエ(雌)の独白自由詩1*08/3/13 20:19
濡女自由詩408/3/12 4:15
春の闇自由詩608/3/7 0:42
はるのいと自由詩708/3/7 0:41
闇もまた遠く自由詩208/3/7 0:38
ニ長調で憎しみを唄おう自由詩208/2/28 15:10
ハ長調で破滅を唄おう自由詩708/2/26 2:34
お月さんいくつ[group]自由詩308/2/17 23:55
今様習作 朱夏の恋伝統定型各 ...508/2/7 3:10
今様習作 きさらぎの伝統定型各 ...708/2/7 2:42
うたのように自由詩008/1/31 2:10
月のない夜[group]自由詩5*08/1/30 9:10
あなたについてのモノローグ自由詩908/1/26 2:23
ベクトル自由詩508/1/24 3:53
雨の匂い自由詩208/1/24 3:52
みどりの草原、青い空自由詩408/1/21 3:25
Dark matter, Black Hole自由詩108/1/20 3:33
外は月夜で自由詩2*08/1/20 2:39
占星術師の春自由詩308/1/17 22:14
十九首・・・じゅうくしょう・・・自由詩2*08/1/15 4:00
羊の朝自由詩1808/1/13 1:59
カモノハシのパンセ9[group]散文(批評 ...008/1/6 22:52
扉を閉めて[group]自由詩407/12/31 23:47
ルサルカが乙女に唄ふ唄自由詩107/12/29 5:04
呼吸自由詩4*07/12/24 5:37
カモノハシのパンセ8[group]散文(批評 ...1+*07/12/24 2:34
カモノハシのパンセ7[group]散文(批評 ...1*07/12/24 2:03
カモノハシのパンセ6[group]散文(批評 ...307/12/23 2:04
カモノハシのパンセ5[group]散文(批評 ...207/12/23 1:57
カモノハシのパンセ4[group]散文(批評 ...107/12/23 1:56

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