青白い殺虫灯に
まっさきに誘われて
バチバチと音を立てて
まっさきに死ぬ。

燃え上がる火を見つけると
後先知らず飛び込んで
一瞬火の粉を吹き上げて
あっというまに死ぬ。

光に惹 ....
山ブドウのつたに
寄生しているから
ブドウムシと呼ぶ。
冴えないちっぽけな芋虫。

それがどんな成虫になるか
私は知らない。
たぶん冴えないちっぽけな蛾か蜂に
なるんだろうと思う。
 ....
自然の草の色に似ている。
たとえるなら稲科植物の
たとえばエノコログサの
淡くやさしい新芽の色。

人工的な色にも似ている。
たとえば小さなころ大切にしてた
プラスチックビーズのネックレ ....
水埃にすっかり覆われて
ほんのすこしも
動きそうになかった
実際さわっても動かなかった

二本の前肢は
がっちりとハヤをつかまえていたが
そのハヤさえも
半ば腐っているように見えて
 ....
やがて埋め立てられる小さな沼のうえ、
イトトンボが飛んでいる。
二匹繋がって。
澱んだ水面をいくども叩きながら。

沼からちょぼちょぼと流れ出すどぶ。
そのそばにある休耕田。
その脇を流 ....
どうせなら
綺麗な水に浮かべばいいのに
ほんのすこし先に
飲めそうな水流れる小川があるのに

にごった水たまりにいる
無数のアメンボ。
そのものすごい密度といったら
日本の人口密度もか ....
ふあんふあん。ふあん。
重力よりも
風力を強く感じていそうな。
ふあん。ふあんふあん。

糸みたいに細い八本の脚は
這っているのか飛んでいるのか。
脚のまんなか吊り下げた胴は
浮いてい ....
夏盛りの真昼の山奥で
輪唱するのをよく聴いた
山奥で暮らしたことのないあのひとに
そう言っても信じてもらえないかもしれないけど

夕暮れどきに街中で鳴く
ヒグラシはあまりにものがなしいけど ....
しんきらと冷えた冬空からこそ出発する
はずだった

真冬ならばきっと
乾燥した肌は粉を吹いて水を求めただろう
夜空の河の湿度はきわめて低い
のどが乾いたなら
お姉さんにあげるはずの牛乳を ....
ここに俺がいると思うか思うなら挙手せよ
インターネット上に俺がいると思うか思うなら挙手せよ
あるいは印刷された紙に印字された文字に
夕方の台所に夜明けのシャワー室に
ビールが臭う真昼間のネット ....
十八歳のころから
ひそかに考えてることがある
考えるだけで実行には移してないが
裏山の防空壕跡に入るたび思い出す

そこにはそれはそれはすごいヤブカの大群がいて
それからちょっとしたコウモ ....
すい とやってきて
吸い と刺す
すい と逃げる
吸い とまた刺す

吸ってるのがわかりにくいんで
腹が立つ
痒くなったときにはどこにもいないんで
腹が立つ

いまどき
日本脳炎 ....
こいつの針は
いかにも太すぎる。
刺したらバレバレだってのに
気づかれてないと思ってる。

すでにかなり痒いのだけど
私は片手にキンカン持って
知らないふりしてあげてみる。
腹の赤味が ....
玄関脇の柿の木の下
アブラゼミの抜け殻はきれいに光る
クマゼミの抜け殻もてかてか
ヒグラシの抜け殻ときたら繊細な芸術品

なのにニイニイゼミは
ニイニイゼミの抜け殻だけは
{ルビ胞衣=え ....
ぶちあたる。
とにかくぶちあたる。
光ってはいるけれど
安っぽい弾丸。

蛍光灯の傘にぶつかる。
窓にぶつかる。
壁にぶつかる。
いちいち音を立てる。

緑金色の背中は
あれでな ....
つまんない虫だよ。
臭いし。
強いったって
スズメバチには負けるし。

天然のやつは栄養不足で
ツノが貧弱だし。
羽根の艶なら
カナブンのほうがいかしてるし。

でも幼虫のときは最 ....
この時刻にこれほど眠いの
悪くない話だと思うよ
さっきメラトニンたくさんナイトミルクnemuを飲んだから
それで眠いのかもしれないけど
睡眠薬は飲んでない 飲んでないんだ

肩凝りがずいぶ ....
いつもあのひとのことを考えているわけではないから
たまには大目に見てやってほしい

外は爽やかに水色の夏の朝
汗で酸っぱいTシャツを脱ぎ捨てて窓辺に立っても
田舎の農道に車一台通るでもなく
 ....
夏休みの宿題は終わったのと
かあさんは訊ねる
私はもう学校卒業したんだよと
何度説明しても

かあさんは言う
おまえはやく宿題をやんなさい
ツクツクホウシが鳴く前に
とっとと宿題を終わ ....
早稲田にも
青山にもなれなかった
予備校の街で
私はその年の夏を過ごした。

現役生のフリしたまま
講義を受けて
教室を出ると
ミンミンゼミの大合唱。

ミンミンゼミは
ミンミン ....
そのひとが来ないことは
わかっていたけれど
約束からもう一年過ぎてることも
わかっていたけれど

盛大なアブラゼミの合唱の下
私は待っていた
夕暮れがきても
まだ蝉は鳴きやまず

 ....
真夏の渓谷の薄暗い木陰で
川音を聞きながら
ひっそり息をしていた
ひとりといっぴき

濡れた岩のうえ
つんとまっすぐに伸びた胴
行儀よく揃えて閉じた翅
その黒曜石の輝き

日の当た ....
トンボならギンヤンマ
ぎらぎら青光りする腰
淡い緑の腹に飴色の尾
それからあのぐりぐり動く目玉

生まれ変わるならギンヤンマ
青々と輝く水田のうえ
セロハンの羽音響かせて
軽やかに飛ん ....
蜜柑色した西空を探るように
行ったりきたりするのは
連れ添いを求めているから。
でなければ飢えているから。

しかしその飛翔の優雅なこと!
ヘリコプターのホバリングも
グライダーの滑空も ....
僕は十二番目の牢舎にゐる
僕は二零三と呼ばれる
僕は自分の名前を忘れつつある
僕は粗悪な食事に馴れつつある

君の庭の卯の花は
今頃はもう満開だらうか
此処にゐると季節が判ら ....
1.

もうどうしよーもなくスランプなのよッ。
ああどうしたらいーのかしら、夜までにひとつ
歌つくんなくちゃ怒られちゃう。
あたしこれでもけっこう買われてんのよう、
まあうちんとこの姫は歌 ....
騒ぎ立てる目覚まし時計を手探りでなだめた。
カーテンを開けようとしたが開かない。
しょうがないから灯りをつけた。
俺の部屋はジャングルと化していた。

実をつけたヘクソカズラがカーテン全体を ....
わたしのからだは
出来損ないのモンタージュで
つぎはぎのでたらめの
パッチワークのモザイクで

ちゃんと機能しないもんだから
子宮にできるはずの内膜が
肺にできちゃったりして
月経の時 ....
花壇のマリーゴールドは
みごとにおひさまの色
おひさまを
いっぱいに吸いこんで

ハナムグリのベッドは
おひさま色の花粉
ハナムグリのごちそうは
おひさま色の花粉

夜なんか知らな ....
エアコンのない、
中途半端に古い家にいるものだから、
ほんとに蒸し暑くってかなわない。
料理なんかする気力ないし、
食欲ないし、
おまけに、
部屋のなかがへんになまぐさい。
生ゴミが腐っ ....
佐々宝砂(871)
タイトル カテゴリ Point 日付
ヒトリガ(百蟲譜45)[group]自由詩6*04/8/10 2:14
ブドウムシ(百蟲譜44)[group]自由詩6*04/8/10 2:13
ワカバグモ (百蟲譜43)[group]自由詩304/8/8 23:14
タガメ (百蟲譜42)[group]自由詩4*04/8/8 23:12
イトトンボ(百蟲譜41)[group]自由詩6*04/8/8 23:11
アメンボ(百蟲譜40)[group]自由詩204/8/7 4:18
ユウレイグモ(百蟲譜39)[group]自由詩304/8/7 4:07
ヒグラシ(百蟲譜38)[group]自由詩204/8/7 4:06
スクリプターレス・スクウェア自由詩104/8/7 3:54
トリプトファンレス・トリプル[group]自由詩10*04/8/6 5:42
ヤブカ(百蟲譜37)[group]自由詩604/8/6 4:15
アカイエカ(百蟲譜36)[group]自由詩104/8/6 4:01
ハマダラカ(百蟲譜35)[group]自由詩4*04/8/6 3:59
ニイニイゼミ (百蟲譜34)[group]自由詩304/8/5 4:14
カナブン(百蟲譜33)[group]自由詩7*04/8/5 3:58
カブトムシ (百蟲譜32)[group]自由詩1*04/8/5 3:56
夏の深夜、午前2時、自由詩204/8/5 3:51
夏の朝、午前5時半、自由詩604/8/4 5:33
ツクツクホウシ(百蟲譜31)[group]自由詩1304/8/4 3:35
ミンミンゼミ(百蟲譜30)[group]自由詩704/8/4 3:34
アブラゼミ(百蟲譜29)[group]自由詩304/8/4 3:33
ハグロトンボ(百蟲譜28)[group]自由詩704/8/3 3:32
ギンヤンマ(百蟲譜27)[group]自由詩404/8/3 3:31
オニヤンマ(百蟲譜26)[group]自由詩304/8/3 3:30
往復書簡[group]自由詩604/8/1 3:33
スランプの天使[group]自由詩204/8/1 3:30
考える以上に萌え萌え。自由詩204/8/1 3:16
わたしのからだは……自由詩804/7/30 1:06
ハナムグリ(百蟲譜25)[group]自由詩504/7/30 1:03
夏のナイフ[group]自由詩7*04/7/27 14:04

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