早稲田にも
青山にもなれなかった
予備校の街で
私はその年の夏を過ごした。

現役生のフリしたまま
講義を受けて
教室を出ると
ミンミンゼミの大合唱。

ミンミンゼミは
ミンミン ....
そのひとが来ないことは
わかっていたけれど
約束からもう一年過ぎてることも
わかっていたけれど

盛大なアブラゼミの合唱の下
私は待っていた
夕暮れがきても
まだ蝉は鳴きやまず

 ....
真夏の渓谷の薄暗い木陰で
川音を聞きながら
ひっそり息をしていた
ひとりといっぴき

濡れた岩のうえ
つんとまっすぐに伸びた胴
行儀よく揃えて閉じた翅
その黒曜石の輝き

日の当た ....
トンボならギンヤンマ
ぎらぎら青光りする腰
淡い緑の腹に飴色の尾
それからあのぐりぐり動く目玉

生まれ変わるならギンヤンマ
青々と輝く水田のうえ
セロハンの羽音響かせて
軽やかに飛ん ....
蜜柑色した西空を探るように
行ったりきたりするのは
連れ添いを求めているから。
でなければ飢えているから。

しかしその飛翔の優雅なこと!
ヘリコプターのホバリングも
グライダーの滑空も ....
僕は十二番目の牢舎にゐる
僕は二零三と呼ばれる
僕は自分の名前を忘れつつある
僕は粗悪な食事に馴れつつある

君の庭の卯の花は
今頃はもう満開だらうか
此処にゐると季節が判ら ....
1.

もうどうしよーもなくスランプなのよッ。
ああどうしたらいーのかしら、夜までにひとつ
歌つくんなくちゃ怒られちゃう。
あたしこれでもけっこう買われてんのよう、
まあうちんとこの姫は歌 ....
騒ぎ立てる目覚まし時計を手探りでなだめた。
カーテンを開けようとしたが開かない。
しょうがないから灯りをつけた。
俺の部屋はジャングルと化していた。

実をつけたヘクソカズラがカーテン全体を ....
わたしのからだは
出来損ないのモンタージュで
つぎはぎのでたらめの
パッチワークのモザイクで

ちゃんと機能しないもんだから
子宮にできるはずの内膜が
肺にできちゃったりして
月経の時 ....
花壇のマリーゴールドは
みごとにおひさまの色
おひさまを
いっぱいに吸いこんで

ハナムグリのベッドは
おひさま色の花粉
ハナムグリのごちそうは
おひさま色の花粉

夜なんか知らな ....
エアコンのない、
中途半端に古い家にいるものだから、
ほんとに蒸し暑くってかなわない。
料理なんかする気力ないし、
食欲ないし、
おまけに、
部屋のなかがへんになまぐさい。
生ゴミが腐っ ....
【シーン1】
舞台は海外。時代は現在。学会の会場のようなところ。会場は満員。夜。カメラはまず会場を俯瞰し、それから屋根に近い高く大きな窓へ。その窓を外側から割って、光り輝くような女性がスローモーショ ....
窓を開けてそのとき
小さなひとりの神を殺したかもしれないと
タマネギを刻んだとき
取り返しのつかない何かを断ち切ったかもしれないと
悩んだ詩人がいたけれど
それは確かに真実だったと思うんだけ ....
(1)

高校生のとき、
まだJRが国鉄だった時代、
三十日間三十万円日本一周鉄道の旅を計画した。
青春18切符があれば、不可能事ではなかった、
東京を通過しないとどこにも行けない関東圏、 ....
ゴキブリ夢ネタです。小説にしようと思ったけどできなかったゴキブリの夢。
なんでこんなものを載せるかというと今ネタに不自由しているからです(笑

***

 畳はすっかり腐っていた。だから、踏 ....
今から土手の草刈りに行かねばならない。各世帯担当の区域があって、そこはそれなりに綺麗にしておかないと近所の目が怖いのだった。しかし、ものすごく、行きたくない(笑)。だって真剣な話、あれは恐ろしくハード .... オニグモは働き者です
毎日夕方に網を張ります
まずはゆるりと何本も糸を流して
どこかに引っかかったら網張り開始

手始めにいちばん外側をくるり張ります
真ん中から放射状に足場を張ります
 ....
逆巻きなさい、酒巻よ

我らが主人公の名は酒巻である。これを読んでいるあなたの氏姓が酒巻であったとしても、またあなたのお住まいが埼玉県行田市酒巻であったとしても、それは単なる偶然の一致に過ぎないの ....
私の庭は荒れています
ほとんど手入れをしないからです

桑の木の下にはほら
すっかり黒ずんだ実がいくつもいくつも落ちていて
むくどりたちが啄むのです
ときどきひよどりもきます
あたりまえ ....
批評だ批評だ批評が必要だとネットで吠え続けて、おそらく数年になる。私自身は、地方同人詩誌での合評会や蘭の会内部でのわずかな批評と、詩集そのものに対するいくつかの批評をのぞき、自分の作品に長文の批評をネ .... リサイクルの許可が下りたと
役場から連絡がきました
申請してから
ずいぶん待ったあげくのリサイクルです
とても嬉しいです
数人の友だちに連絡して
今夜はお祝いです

現在の地球は本当に ....
人生に必要な言葉はみんな
「カラマーゾフの兄弟」に載ってる
でもそれだけじゃ足りないんだって
村上春樹が書いてたけど

ドストエフスキーはドストエフスキーで

人生に必要な言葉はみんな
 ....
しりん。
しりいいいいいん。りいいん。いん。
しりん。


水が滴り落ちるこの洞窟で
俺は縮みきったおまえの顔を見ている。
瞳は薄くなった瞼に閉ざされ
口は半ば開いているが
そこから ....
家にある薬箱のなかの服用薬を全部飲んでしまったことがある。19のときだ。頭痛薬からキャベジンから風邪薬から、とにかく服用薬は全部飲んだが、水虫の薬など外用薬は飲まなかった。死にたくはなかったのだと、思 .... 本当のことを言いましょうか。たまには、ね。

私が本当の本当に愛しているものは、ひとつの作品ではなく、ひとりの詩人ではなく、私自身ですらなく、詩そのもの。私という小さな詩人と、私という小さな詩人が ....
いま、右手首がひじょーに痛い。うちの飼い猫の血膿をふきとろうとしたら、ズタズタに深くひっかかれた。場所が場所だし、猫の爪は鋭くてカミソリみたいなものだから、自分で見てもリスカの傷に見える。おもしろがっ .... 私が人様にはじめて認められた文章は、詩ではなく評論であった。それは静岡県民文学祭で芸術祭賞を受賞した。今の私からみると暴論みたいなところもあるし、古くなっているところもあるし、そもそも「評論」と名乗っ .... こんばんは今夜も恐怖をお伝えします

拉致チューハイ戦争ワイン虐待ビール

電流を流そか それとも殺そうか

白状なさい楽しんだでしょ虐待を

事件性持たぬ殺人? なんだそれ

虐 ....
静岡に生まれて静岡に育ったから、新茶の香りが漂ってこないと初夏がきたような気がしない。ちなみに新茶の香りは茶畑の香りではない。茶畑そのものは、あまり新茶らしい香りを持たない。まあ少しは香る。私の実家で .... 戸口を開けると
死んだ祖父が
母と一緒に居間に座っていた

母を呼びだして
おじいさんって死んだよね?
と耳元に囁くと
母は快活に頷いた

夕暮れだか朝だかわからない
中途半端な靄 ....
佐々宝砂(882)
タイトル カテゴリ Point 日付
ミンミンゼミ(百蟲譜30)[group]自由詩704/8/4 3:34
アブラゼミ(百蟲譜29)[group]自由詩304/8/4 3:33
ハグロトンボ(百蟲譜28)[group]自由詩704/8/3 3:32
ギンヤンマ(百蟲譜27)[group]自由詩404/8/3 3:31
オニヤンマ(百蟲譜26)[group]自由詩304/8/3 3:30
往復書簡[group]自由詩604/8/1 3:33
スランプの天使[group]自由詩204/8/1 3:30
考える以上に萌え萌え。自由詩204/8/1 3:16
わたしのからだは……自由詩804/7/30 1:06
ハナムグリ(百蟲譜25)[group]自由詩504/7/30 1:03
夏のナイフ[group]自由詩7*04/7/27 14:04
多重化してゆく夢の記録散文(批評 ...2*04/7/27 13:31
無数のあなた、ひとりの私自由詩104/6/19 16:13
停車場自由詩1204/6/16 15:05
自作小説冒頭、つまり失敗作のかけら散文(批評 ...204/6/15 11:55
土手のギシギシと格闘する前に散文(批評 ...404/6/3 10:06
オニグモ(百蟲譜24)[group]自由詩304/6/2 13:13
逆巻く酒巻[group]自由詩5*04/6/1 14:17
聖女ドロテア自由詩1*04/6/1 14:12
やりたいことがあるんです散文(批評 ...30+*04/5/20 2:18
人類解放[group]自由詩3*04/5/19 0:29
人生に必要な言葉はみんな自由詩204/5/18 20:52
愛していると言ってくれ自由詩204/5/18 20:47
自己を愛するための散文(批評 ...1404/5/18 20:34
危険な話散文(批評 ...1004/5/13 2:27
外に出て行くためのリスカ散文(批評 ...27*04/5/11 2:22
批評という暴力的愛情表現散文(批評 ...2204/5/8 4:15
即興川柳猟奇未満ぱーと3川柳204/5/5 20:08
新茶の季節<散文編>散文(批評 ...4*04/5/4 21:05
新茶の季節<実家編>自由詩304/5/4 2:14

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