詩の一行一行に
花を咲かせたような
あの桜並木を歩く

僕には
名前を持たない
姉がいた

姉は木の行間をくぐり
幹の陰に隠れたのかと思うと
花咲き乱れる
か細い枝に立って ....
 
ぼくの街に
雪が降っていた

きみの街にも
雪が降っていたのだろう

受話器のむこう
きみが見上げた空から
言葉のない
声が聞こえた
 
 
そのひとの
本心があらわれた時
たとえばその人と
春に出会ったとしたなら
その時は
夏だと思う

わたしに遠慮なしに
草花は咲き乱れ
力のかぎり照りつける
太陽と
加減も知 ....
 
都会では
駅でたまたま友人に
会ったりするものなのかい
問う父に
そうだよと
わたしは答えた

セイウチみたいになった
友人にね
友人でもないのに
会ったりするものなんだよ
 ....
 
妻が百円ショップで
ナンパされた

正直いうと
僕もしたことがある
百円ショップで
ナンパを

妻がいないところで
その男は
どうしてどんな気持ちで
ナンパなんてことを
 ....
 
たしかなことではないけれど
自分を
ここではないどこかから
ふりかえることができたなら
それはたいてい
詩になる

たしかなことではないけれど
自分が
ここではないどこかで
 ....
 
夜行列車に乗って
行こうよ知らないどこかへ
そんなふうに
飛び乗ったのかもしれない
行き先も知らずに

何本も
列車を乗り継いで
生まれて死ぬよりも
ずっと長い
永遠のような ....
 
子供の頃の、僕と父の写真を指差して、四歳の息子が、
「お父さんがふたりいる」と笑ってる。
それから、今の僕を指差して「お父さんが、もうひとりいる」と笑ってる。
今度は少し、不思議そうな顔を ....
 
雪のひとたちが
亡くなってしまった
雪のひとの魂を
雪の中に埋めました

雪のこどもは
なぜそうするのか
雪のお母さんに聞きました

雪の中に埋めたのは
またいつか
雪に魂 ....
 
 仙台は変わった、と人は言うけれど、私はそうは思わない。たしかに、形而下の変化はあるにしても、変わったとすれば、それは人が変わったのだ。街を歩けば、古い地元の店は、休日だというのにシャッターが下 ....
 
それはいったい
どんな
かたちなのだろう

まるみをおびた
それと
さきのとがった
それの

いまそこに
あるかのようにしてる
それも

かたちのあるものと
ないもの ....
 
さよならは
しずかに
すぎてゆくから
せなかを
そっとおしてほしい

そんな
さしすせそが言えなくて
ふたりは
せなかを
むけたたまま

あいしてる
いまも
うたうよ ....
 
裏木戸が
閉じたり開いたり
冬の言葉で話してる

積もる
雪の音以外
何も聞こえない
意味の欠片さえ

さくさくと
家に帰る足音が
遠くからやってくる
もっと遠い
何処 ....
 
南国の木が立っている
わたしのように
雪国に生まれてから
ずっと

南国の木は知らない
自分が
南国の木であることを
雪国の木であると
信じている

雪国で生まれたなら
 ....
 
雪々が
列車の屋根に降り積もると
定刻どおりに発車する

人々が乗る
列車の屋根で
雪々は
いつものあの街まで

会えただろうか
その街で
伝えるべきことは
伝えられただ ....
 
夜ちゃんと
手をつないで歩いていた
夜ちゃんは
口を大きくあけたまま
何か話しかけるけど
その口は月なので
僕はその光をからだじゅうに
浴びている

夜ちゃんが
きゅうに無口 ....
 
もう長いこと
あなたと暮らしてきたけれど
もし今日が
はじまりの一日だったなら
僕はあなたに何を言えばいいだろう
と考えた

暮らしてきた日々とひきかえに
これからも暮らすための ....
 
何かをはじめるためには
何かを終わらせなければならないと
手紙に書いた

何かの本で読んだ言葉だ
と書いたけど
嘘だった
けれど
そんな気がしてるだけで
本当は言葉なんて
き ....
 
箱庭の蓋が
ぴったり閉まらない

出会った頃は
普通の箱と蓋だったのに
一緒に暮らしてると
角が立ってしまうこともあるから
そのせいかもしれないわねと
妻はまるで
人ごとのよう ....
 
ふれると
消えてしまうものばかり
見てきました

ふれる
ということは
案外
傷つけることかもしれないと
知ってしまってから

ただ
見ていることしか
できなくなっていま ....
 
あのひとも
このひとも
歳をとってゆく

歳をとらない
ものは何?

歳をとれなくて
生きたまま死んでる

せつなさの
思い出の中に
十九歳の
わたしとあなた
 
 
いつのまにか知り合って
いつのまにか朝を迎えていた
という状態は
どこか戦後に似てないだろうか

男と女
侵略するものとされるもの
その分け隔たれた
存在であるというだけで
戦 ....
 
やさしい眠りが
速度を上げて
朝の向こうへ離陸する

夢の中
街はまだ目を覚まさない
けれども電車は
定刻どおりやってくる

お雑煮を
まだ食べ終えてない人が
白組、白組、 ....
 
 
 大人は道化師のふりをして、子宮を配る。子供たちが記憶の中に、ゴムの匂いを思い出してることが、不思議でたまらないのだけれど、避妊された(あるいは否認された、風船からこぼれてしまった、命のは ....
 
ここで暮らしていたことが
夢のよう
いつかそうなる日が
来るとわかっていたから

やさしさは
やさしさでしかないことも
知っていたから
ただ祈るしかなくて
今も祈ることしかでき ....
 
かず子の外側から
年賀状が届く
地平線から地平線へ
わたしの内側へ

できるだけ
かんたんな言葉で
内側から溢れてしまうものが
零れてしまわないように
壊すことだってできたの ....
 
パンの人がいた
とてもやさしい人だった

パンの人は毎朝耳を焼かれ
いい匂いをさせて目を覚ます
家族をやわらかく包みこみ
ひとときの幸福をもたらしてきた

パンの人はどこか淋しい ....
 
手に触れると
時が止まりました
流れるように

途中なのに
同じ時に終わりました
同じ時にはじまったように

瞼が熱くなったのは
夕日のせいでした
温度もないのに

急降 ....
 
なぐさめ方が
せつなすぎるから
苦笑してばかりいたけれど
ちゃんと泣いてくれる君の横顔を
ろくに見ることもできないで
最後にはいつも涙が零れていた

北風が目にしみるね
ふたりの ....
 
いつからだろう僕のからだには
アルファベットと数字が記されている
いくつめかの恋をした時に
恋人により偶然見つけられて
それからすぐに彼女とは別れた
とても怖がりながら僕のもとから去っ ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
桜並木の詩自由詩709/1/27 23:12
雪の声自由詩209/1/27 1:12
季節は今自由詩209/1/26 22:44
セイウチ自由詩409/1/26 1:29
女類自由詩2*09/1/25 1:40
たしかなことではないけれど自由詩109/1/25 0:01
夜光列車自由詩1*09/1/24 1:12
今、ここにいる。自由詩709/1/24 0:00
雪の中に埋めたのは自由詩4*09/1/19 22:58
雪のひとひら散文(批評 ...7*09/1/19 1:48
かたちとせかい自由詩109/1/17 22:54
さしすせそが言えなくて自由詩4*09/1/16 21:26
裏木戸自由詩809/1/15 22:54
南国の木自由詩5*09/1/15 1:18
雪々自由詩3*09/1/13 23:14
夜ちゃん自由詩509/1/11 15:44
はじまりの一日自由詩309/1/10 22:52
日常自由詩309/1/9 22:36
六角の箱庭自由詩3*09/1/8 22:59
自由詩3*09/1/7 23:12
十九歳自由詩009/1/7 0:59
女友達自由詩109/1/6 22:53
やさしく眠る/急いで起きる自由詩4*09/1/4 22:25
サーカス自由詩209/1/4 20:39
帰省自由詩609/1/2 23:22
あけおめ自由詩2*08/12/31 21:23
パンの人自由詩208/12/31 3:06
自由詩308/12/30 1:39
友達自由詩708/12/29 9:42
R305自由詩4*08/12/26 0:46

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