生きものと光を
行き来する生きもの
真昼に飲む水 音になる水
静かな明かりの目をした子に
わたす音はふたつある
明日の朝 霧が晴れたら
望むところへ進めるように
....
百年の花が咲く
音だけの虹
昇る夕べ
鳴る穂を抱く
水の穂
指の穂
おまえを
おまえに与えられずに
叫びつづけた 水に映した
明るい貝殻
問 ....
ひとつのつづき
ひとつの雨
祈る者なく
響きは在る
青や灰の音
縦に巡る空
滴ひとつ
離れるうた
熱の歪みがさらに歪み
様々な濃さの黒のきれはし
羽 ....
足の爪 長いよ
切ろうよ
切ろうよ
おかし
草の原 はざま
追いかける
追いかける
おかし
波しぶき 砕け
ひらいても
ひらいても
おかし
....
道と緑 弦の脚
紙より重い ひとつの羽根
前へ 前へ
鳴りつづく
雨とはざま
空に触れない
遅いはばたき
銀の冬の糧
水は見えず ただ聞こえる
....
何かが落ち 水煙がたつ
鳥が空に背を向けている
滴がどこかへ着くまでの
光のふるまいを見つめている
夜が海辺の岩をつかむ
幾度も幾度も つかんでは離す
道のまたたき ....
生きものの光が震えている
音が 世界を回している
透明のなかの
ひとつの指
夢の終わり
饒舌と雨
とどまることのない
欠けた波
ざわめきは残され
空は ....
降るみどり 降るみどり
天の曲線
鏡面の黄泉
しずくをすぎる
たどりつかない重なりの
降るみどり 降るみどり
人はとどまり
音は昇る
響きは何を重ねたいのか
感じなく ....
曇と灰針
水の卵
暮れ無く暮れて
音は振り向く
投網のような鳥の群れ
共鳴の錆が降り
地に触れてむらさき
足跡の熱を吸い
無音をもとめ
発光する
....
もどかしく
朝は
窓の前に止まる
見えない器があり
ずっと何かに満ち
少しの揺れにあふれる
遠い声が来る
入ってこれない光
かき分けられてゆくかたち
....
闇のなかにしゃがみ
手をのばし
髪の毛に触れる
足音が
遠のいてゆく
水を
出しつづけるくちばし
透し 染まり
戻るもの
ふたつの天気雨
すれちがう
くち ....
雨あがり風の履歴の騒がしさ
煙ゆく光を原に削る冬
ふたつ膝ふたつの光だきよせる
見えぬ背の見えぬ行方を描く鳥
器からしずく持ち去 ....
輪には輪の渦には渦の溶鉱炉くべられし穂と冬空の青
金属を踏む左足火のかたち花のかたちにひらかれる指
もろもろの人の憎しみ浴びながらぴくりとも ....
空の火と唱斬る光ひらめいて水銀の音ひもとくもののふ
糸車投げ与えられる糸車ひとりの冬に燃されゆく夏
亡霊に起こされ散らばる骨を視る未明の標ゆらめく標
....
水のそばに
水の羽があり
四つの水を映している
ひとつだけ蒼い波が来る
ふいにひろがり すぐに消え
ふたたびふたたびをくりかえす
窓に打ち寄せ
つもる影
屋根のつら ....
右まわりに触れられ
そこにいると知る
笛の音の房
こぼれる鈴の輪
細い光がたなびき
夜を分けるのではなく
既に分かれて在る夜を
ふいに消えた家々を描く
....
矢は左目から入り咽に止まる
わたしは振り返りおまえを見る
今までもこれからも
ただおまえのそのままを見る
はざまにどれだけ
どれだけはざまに挿し入れようか
おま ....
水へ空へ振られる手
野に沈む鉄
鉄に湧く花
近づいてくる曇の光
すべてを縦にずらした景が
樹から樹へと伝わってゆく
氷と浪をくりかえし
光を光の外に置く
....
互いを圧し合う青のはざま
渦が渦を巡る陽の道
空の水たまりを数えている
浜辺の藪にころがる鏡
鏡に空が映ると
鏡は笑った
おまえは
空じゃない
水 ....
手首をすぎる風の先に
向かい合う双つの枯れ木があり
雨に雨を降らせている
夜が増すごとに
熱は辺をゆく
遠くも近くも ただ打ち寄せる
朝の裾が笑い
見えな ....
小さな緑の段差を踏む
声は低く
応えられないままにすぎる
切り落とされた枝から
離れない虫
おまえは
おまえがどこへゆくか
知っているか
火の前に途絶え ....
双子が
互いを呼ぶ
枯れ野
道ではなくなる道
枯れ野 枯れ野
追いすがり 追いすがり
とりこぼし
曇を燃す火
こぼれ こぼれ
大きく傾き
野に落ちる曇
....
影が動きに遅れてゆく
遅れては遅れては重なりつづけ
ひとつの歩みのたびに咲き
ひとつの歩みのたびにたなびく
海の終わりからはじまる砂漠で
影と涙は会話していた
....
ざらついた
明るさのない
明るい日
写真に
死者に
塗る色もない
そのままの日
岩と涙
価値あるものから伝わらぬ価値
あなたの漂着
あなたの波間
蟻と ....
雪はつもり
せわしなく落ち
寄生木と寄生木と寄生木の森
冬が虹を捨てに来る森
枝と鉱 黒と緑
はざまにはざまにそそがれるもの
響くうちは
水でいられる
....
音の闇があり
むらさきがあり
白い泡を染め
闇を抜ける
夜の会話が屋根を歩き
窓から入り
まばたきに驚き
再び出てゆく
夜に咲く花と脇道
小さく手を振る気 ....
土壁に
埋もれかけたものの目を見る
目はひとつ
緑に笑む
魂を摑まれている
銀の髪を見ている
無を動くたび
どこからか声がする
蜘蛛の巣の風
....
音の陰の音たち
ゆうるりと振り向く
何もない場所に
署名はかがやく
落ちそうな首を片手で支え
どうにか眠り
どうにか覚める
音を見るたび さらに傾く
....
景をついばみ
波紋をついばむ
ひとり顔をあげ
空白を呑む
昼の光が重なり
道の片隅で青になる
明るい壁に蜘蛛の巣は消える
音のたびに破れたなびく
水 ....
かすかな明かり
すぎる意志なく
すぎゆくもの
岩に記す波
幾重にも
風を模して
泉には窓が沈む
塹壕と青空
水の呼び名が飛び交う
空の怒号 ....
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