ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった

ベッドのなかでもブーツ脱が ....
終電のすいてる車内の空席に 
リュックサックを放り投げ 
{ルビ転寝=うたたね}をする僕に 

(ちょっと・・・邪魔)と言い 
わざわざリュックをどけて座り 
{ルビ草臥=くたび}れスーツ ....
ぽかり ぽかり
夜のしじまに打ち捨てられた浮子



私たちは空っぽで
球殻状の胴と櫂そっくりの腕を持ち
従順なコンパスで無の瞼を開く

それは
大気と水の触れ合うとき
底無 ....
{引用=
水色やピンクのパステルカラーが
溢れる街に暮らしてるから
お前がどんなに腹を空かしてるかは
わからない}

thank you
遺言は thank you

運命を飲み込ん ....
今あたし男の人と住んでる

あんたじゃない男の人と

店から帰ってきたあたしに

彼は今日はどうだったか必ず聞くの

あたしは答えるの

   今日ものすごく嫌な客が来たの
 ....
きみのことだけをかんがえていたら
くるしかった
いたかった
こわかった
いろんなひとにこいをしたら
愛だってなんだって
ぜんぶフラット
うすまった感情全部に名前を棄てさせて
ただ埋まっ ....
{引用=

はんでいるさいちゅう
わたし、どうしてもとめているのかしらっておもった
おなかがすくからって
はんでいるさいちゅう
ねぇどうしてこんなにもあごをうごかさなきゃいけないのかしらっ ....
{引用=純
粋世
界の君
が笑う9ヶ
月前にこの
夢ははじまっ
た、はずの夢
*
はじまったもの達
のはじまらなかった
”名前”をひとつずつ
乾いた舌先で声にうつし
て消し去る ....
「妖」


熟れた日常を引き剥がし

馴染んだ名前を脱ぎ捨てて

あなたの熱は儚く溶けた

残り香だけを朝に置き忘れて




「怪」


仄暗い四辻を右へ折れた ....
黒い空だけが
、羽をひろげられる
あかしだと想ってた

すすけた煉瓦の路地裏
12の時に踊りを ならった ◆―◆―◇
誰もがあきれて 笑っていた
黒煙のあがる炭鉱の街で、

他の子達 ....
綺麗な砂漠の真ん中で

オンボロなギターを弾き

ラクダと戯れながら

ゆっくり歌を歌っていた

蜃気楼は今日も未来の都市を

ぼんやりとうつしていた

壊れたラジオからは
 ....
耳のある一輪指しのようになって
猫は出窓から空を仰ぎ見て居る。
空にはポッカリ 雲が
白くてポッチャリとした雲が浮かんで居る。

猫は飽きる事なくそれを眺め、
それに付き合って居る飼い主も ....
夜更け前、救急車のサイレンは
すれ違いざまに記憶の淵を削っていった
虚無感に包まれてしまって
悲しくないのがなんだか悔しい
まずは壊すところからやり直そう


終わった話を詮索するのは
 ....
………
…ねぇ

ん…?

あの人なんて名前だっけ
ほら…大統領の……




オバマ?
違う

………

プー…
プーチン?
それだ!
プーチンはもう大統領じゃ ....
{引用=

風に想う
均等な枝は垂直に ―▲ 
はてなく
天蓋にむけられ

無数の曲直はいまだに葉をもつ さかさまに立つロンバーディア
やせた巨人がゆれ、かしぎ 街のどの家よりも高い身 ....
在り合わせにかえって思いやりを感じる
わざわざ捻り出さなくても
無ければそれで誰も責めやしないのに
お節介なのは今に始まったことではないので
いつもの舌打ちに心を込めた


昼間の月を見 ....
最近 喉の調子が
めっぽうよろしくないのは
僕の満足いく唄を
歌わせてあげていないから

天に向かって放つ
祈りに似たただのワガママ
地から離れない二本足
踏みしめてるのに不安定

 ....
私の勤めているキャバクラ店は明日おでんデーらしい

ボーイの寺田君と内緒でつきあってるレナさんが
おでん作んのダルイ、と
セッターの煙と一緒にはきだした瞬間
明日の昼に私服にノーメイクで ....
文字ということばと
手紙ということばは
どうしてどちらもletterなのか

この国でも
それはやはり文と呼ばれていましたが

すべての文は/文字は
もともと
ひとに宛てて書かれて
 ....
{引用=

約束したのに
やっぱりあなたが
来ない日は、

  ばかな女でいることが、
  ひどくつらいから… 》》》》》
  さびしい秋色の街に
つよがって つくりわらいを
   ....
{引用=

黙ったまま
  静かにしていなさい
     それが、生きのびる{ルビこつ=骨}なら

誰もがそうしているのだと 信じてた
どこも見ようとせず
何も言わずにいたから、
 ....
{引用=

秋、なのですね

久しぶりにみる陽の
海峡の水の色は、
遊び心を誘った紺碧から
秘密をとりもどし/もどらされた ―◆■□
群青色ににぶく一変していました。

夏を泳いだ ....
末期だ
既に末期だ
寝ても覚めても
末期だ
色々と末期だ
蓋を開けよう


四六時中の痛痒
光に拒絶反応が出て
頭部は痺れ
痛みが鈍く蜷局を巻いていた


末期だ
色々と ....
広い広い空に

声が枯れるまで叫んだ

実験室のビーカーを覗いて

華麗な幻想に驚き

ガラスはただ割れて

僕を傷つけてしんでいった

もう咲かないのかなと

うえきばち ....
捲っていた世界は
去年描いたスケジュール
それに気付かずに
新しい世界をさがしていた

君を絞ったら
苦い味がしたので
わたしはすぐに舌を離したのだけれど
もうその時には既に
夜空の ....
鳥を探して
走り続ける

ごおごおがつがつと
びくびくがるがると
僕の体の音が聞こえてくる
耳の奥で
耳の奥で
目に見えない僕の音
個性とかアイデンなんとかとか
アプリオリとかDN ....
早朝
タイヤチェーンの着脱場を通過
車は
白河から羽鳥湖高原へ疾走する。

すれ違う車両はなく
道路上には数羽のカラスが
カラスはよく肥え
このあたりのもの生りの良さを示す。

態 ....
著者二十代で刊行した第一詩集から第七詩集まで、
半世紀に渡る鋭利な感性の詩編とエッセイからなる一冊である。
この凝縮した水野ひかる氏の世界は、
幾重に年月を経ようとも衰えない「女性力」を感じる。 ....
夜更かしの羊飼いは大層身軽で
わたしの寝室へ夢のように舞い降りては
夜毎数字をひっくり返す

空がまるで海なのよ


わたしはちぎれながら泳ぐ
よれた真夜中を
雨に打たれるカラス ....
{引用=

 こまかく

  こなごなに
くずされるのです 

 支払わなければならない 代償に
 大きく それをさしだせば、
 残ってやってくる 手にするコインの
 ざらつく 他 ....
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