家には
寂しい犬がいる
肩をすぼめた子どもがいる
ため息をつく大人がいる
私はそれに気づいた
クリスマスに灯された火は
次の日には消えると知っている
....
158時 @ハト通信
なつかしいひとに
あいました
さいごのはこの
ふたをあけると
かのじょはまんなかにすわって
わらっていました
いぜん ....
午前一時
俺のあのころが
反転する
ベレー帽かぶった美知子が
学生集会からとび出し
目の前に現れる
上気した頬に そばかすをちらし
瞳をキラキラ輝かせて
俺にささやきかける
....
156時 @ハト通信
とてもちいさないれものがありました
あめがふると
てんこん かん
おとをたてて
みずがそこにたまりました
すいめんで
....
バス停のベンチに
毎日のように
座り続ける男がいるんだ
超然と背筋を伸ばし
ただ一点だけを見つめ
来るはずのないバスを
ひたすら待っている
廃線になった
路線バスのベンチで
....
近所には小さな墓地があって
近所には野良猫がたくさんいて
墓地の奥は鬱蒼と暗く
木々が生い茂り
墓地を取り巻く壁は
どこまでも白い
その白さに毎朝
昇ってくる日の光が反射し
仕事に ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....
152時 @ハト通信
あけてもあけても
はこのなかには
また
ひとまわりちいさな
はこが
はいっている
ちいさくなっていく
どんどんちい ....
登校拒否をしようとしたのに
何年も前に卒業していたことを思い出した
しかたないので出社拒否をしようとしたら
数ヶ月前に退職していたことを思い出した
やけになって生きることを拒否しようと ....
貴方に会えなくなって
一年が過ぎようとして
最期に見た姿さえ
もう私の知らないあなただった
私から貴方を奪った
あなたの環境が憎いけど
それだって結局
貴方が ....
だんだん
君のことを忘れていく
忘れられないと思っていたのに
君の笑顔と泣き顔を最後に見た
あの日
いくら泣いても
涙が溢れてきて
いくら飲んでも
....
古い古い汽車を探して
僕たちが行きたい駅を探そう
心傷つき
疲れ果て
生きることがつらい
そんな人が集まる街
古い古い汽車ならきっとあるよ
その街に行くよ
....
夜中、目がさめて階下に降りると
君が僕を積み上げていた
たどたどしい手つきで慎重に積み上げ
途中で崩れると
ふうとため息をついてまたやり直す
時々どこか気に入らないようで
何か ....
153時 @ハト通信
べるがおちていたので
ならしました
からころん
どあがおちていたので
のぶをあけました
がちゃがちゃ
ことばがおちて ....
今日、拾ったんだ
あの川の輝くあたりで
あの空の疼くあたりで
あの山の轟くあたりで
幾つかの種を拾ったんだ
今日、種を植えたんだ
この氷のような胸に
....
明るい娘たちだ
美知子が寝込んだ今日も
夕食を作り、洗濯をし
ピアノに行って
キャッキャと笑って
ぐっすり眠っている
小学六年の薫は
ふくらみはじめた胸を
ホイホイとかかえて笑 ....
夢の中でも
君は居なくなっていて
私はお墓で泣いていた
夢にまで浸透していく
この哀しさは
どこまで私に浸透していくのか
もしくは
この哀しさは体を覆い尽くし
壊れて無く成ってしま ....
こんこん
こなゆき
ふりやまぬ
きょうも
あしたも
あさっても
こんこん
こなゆき
ふりやまぬ
闇はひどく疲れていたようで
ほとんど私の話しを聞いていなかった
私もひどく疲れていたので
そんな闇を思いやれずにいた
そしてやがて静かに私たちは
重なることなくそれぞれに ....
きみ
図鑑にのってるよ
知ってるかい
きみだけじゃない
ぼくも
きみの、
ぼくの、
おとうさんも
おかあさんも
きみの赤ちゃんも
さっき
赤ちゃんの手の甲をペロリとなめた ....
あおいだ ゆびさきから
つむぎだされる よるの とばり
その やみのなかで てらしつづける
ゆらめき つづける
ふかしぎな かたち
さまざまな ゆくえ
ねがわくば わたしの あとは
....
ひとりの夜が
こんなにも
悲しいなんて思いもしなかった
君といた時間が長すぎて
忘れていたんだ
昔の孤独を
今からでも間に合うのなら
白い羽根のついた ....
僕はブーメランを期待して
君にくさいセリフを言ったのだけど
ちっとも返事が返ってこない
心配して見に行ったら
しまった
君はイチコロでまいっていたらしい
昔住んでいた家の近所の円柱形のポストから
私に 手紙を出したいんです
近くには小さな神社 小さなトカゲが住んでます
土を掘って数センチ グレーの粘土質の柔らかい土が現れて
ころ ....
振り子時計をながめていたら
暗示にかかってしまった
コチコチと刻まれて
時の砂ほどになって
それをライターであぶって
思い出が浮かびます
ひとつ
またひとつと
燃え尽きてゆ ....
朝が注がれている
遠心力に張り付くようにして
坂道が、下るバスの下で
行き先を隠している
畑の向こう、隠された朝日が
ここが今日だと示している
繋がりのない誰かと
肩を並べて揺れ ....
正雄さんは 今日はいらっしゃるのかしら
律儀に今朝も 同じ時間に
サクさんは 二階の詰所にやってきて
繰り返し そう 尋ねる
わたし 頭がおかしいから 心配なんです
杖の先を遊ば ....
そこにあった かこに
おもいが もっていかれる けしき
わたしたちは ながれゆく ときの
だくりゅうに のまれて
ひきとめられず ただ やどる
やわらかな おもいで
あたたかな ....
ふかーい海の底へ飛び込んだら
途中で深海魚に出会いました
「深海魚さん、どこへ行くの?」
「なーに、わたしは夢を叶えに行くんだよ」
そう言って深海魚は浮上していきました
「深海魚 ....
ねむいのに ねむれないよるは
せなかから こごえている よる
あくびだけを つれだって
とけいの はりと おいかけっこ
しん、とした よるのなか
すきな おんがく ならしてみる
やみの ....
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