硝子の音
草野春心



  積まれた雑誌のうえに
  毒茸がひとつ置かれていたはずだが
  きょうは、かげもかたちもない
  隠したのが彼女だということはわかるが
  肝心の方法がわからないから憤懣やるかたない
  それはそれとして彼女は時折わたしの意識の間隙に
  ビードロよろしく稚気にみちた息を吹き込む
  まぬけなわたしのくちびるからころがりでる
  硝子の音は片田舎の煤けた路地に誂え向きだ




自由詩 硝子の音 Copyright 草野春心 2014-10-23 23:14:00
notebook Home 戻る