街路樹
草野春心



  歓びはなかった
  とはいえ哀しみもなかった
  わたしたちはベンチを分け合って座り
  冬の始まり、辺りに人影はなかった
  言葉はさっきまで……あった
  今は沈黙さえ、ない



  だが街路樹はあった
  陽の光も、わずかに残されていた
  あなたの巻いている緑色のマフラーもあったし
  それを揺らすように木枯らしも吹いていた
  わたしたちに魂などというものがあるのだろうか
  あなたが本当は何処にいるのか
  わからない わたしには 永遠にわからない




自由詩 街路樹 Copyright 草野春心 2014-09-28 21:59:37
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