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海底に直立する卵には もうひとつの海が詰まっている
明け方の海に 平板なアルミニウムの光
その皮膜を剥げばダイナモが唸る
液状化した肉質の中心で 黄濁する眼球は閉ざされたまま
瞼の裏側で ....
前を横切る人は
高らかに今宵を謳う
横で凭れる人は
とりとめのない今を送信する
見限るよりも密やかに
夜は悲鳴を上げて
人々に目を凝らす
ああそして
....
足首を辿って
くるぶしに座って休憩したら
かかとの頭が見えてきた
地図
それからブルーの手紙も
鍵色のドライフラワーも
あの岩砂漠で
すべての証を
かかとに集めて
炎で燃 ....
家に 帰ろうとしてるのに
じてんしゃ こいで 浮遊する
わたし 街灯がともり 青白く
青白い わたしの骨は
木枯らしに 透け
境界線を 浮遊する
わたしのにおいは 地面のにおい
湿っ ....
深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
自分が横たわった
気付くと夫が隣に寝ていた
空が少し高く感じた
深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
何かを待ちすぎたのでしょう
からだが どうん、まばたきしたときの
あのせかいが まっぷたつ から、ゆうぐれて
頭から 地球の中心に ぐん、と押されると
わたし、いつも きまって あやまってしまう
ごめんなさい、ごめんなさ ....
雨曝す心ひとつ
待つ身の程の隅々へ
ゆっくりと
行き渡るのが
夜の毒だから
ケチャップの夜は
泣き止まず
ただだらしない雨を
ひそかに運ぶ
可愛いひとを
手品の箱に
詰め ....
縁側に座って祖母が勧めるように
スイカに塩を振ってみると
甘くなった
これは使えると思って
僕は彼女を呼んだ
彼女に塩を振ったけど
僕達の関 ....
あまりに懇願されるので
試しに小指を与えてみた
男は急いで口に運び
コクリと飲み込むと
生あたたかい求愛がわたしに届く
唾液に光った男の喉をうっとりと通りぬける
わたしの小指
満たさ ....
いくら扇いだところで
忘れることなどできないというのに
いつまでもうちわで扇いでいる
自分の周りだけ
他のところより夏めいていて
ほんのりとしょっぱい
何本平行線を引いても
必ずどこ ....
五月の終わり、六月のはじまり、雨、雨上がり、雨上がりの、街。
咽る光、光、に、蜂鳥、蜂鳥がゆらぐ、ゆらぐ、かすかな影、その残響、翳る、光、黒揚羽。
揚羽蝶、焼く、焼ける、焦げる、黒く、霞む、目 ....
今朝
物音で目が覚めました
風が
寝返りを打った音
でした
ぼくがひとり
窓を閉めている
ぼくがふたり
雑木林をあるいている
ぼくがひとり
床を掃いている
ぼくがふたり
ゴミ箱をあさっている
ぼくがひとり
湖畔 ....
夜半の網戸に
数回、アブラゼミは体当たりをし
ジジジッと最期を知らせた
アブラゼミも網戸もぼくも
誰も悪くはないよ
かなしみは 今、
いつかの記念日の時計
いつかの8時を告げた ....
学校ひけたら
駆けていく
あの駄菓子屋は
今も そのまま?
鬼ごっこした
松ばやしは
いつの間にか
駐車場
それでも
ここは あの頃の匂いがする
初めてキスした
公園の ....
人恋しさを巻き付けて
八月が
扇風機に踊っている
遠く水玉に散る
記憶の夏たちにシャララ
と手を振って
分からず屋な夢の中へ
颯爽と君に
渇きに行こう
この真夜中の
この静けさに
チラチラと
狂気は降って
闇の秒の遅さと
生の流れの速さに
僕は怯える
明かりを付け
異国の古い
映画に紛れながらも
こ ....
ああ、酔ったままにどうしようかと思う按配の惨事だ。ファイヤーワークス、うなだれて。世界から消える準備は出来ているんだ。起き上がってすり抜けてこのまま、窓をかき開け抜けるイメージでほら、飛べるかもしれな ....
照りつける地上に映すダビデの髪
雲
中抜きの空と光
デイジーの花びらが
からみつく野球キャップのつばに湿気の沼の飾り
足からしたの下水道
割れたアスファルトとともに
最後の光を見せてくれ
グラス ....
指、で押す
蝉のお腹の柔らかさのことを
私はぼんやり考えている
お腹、を
開いた人は
仰向けになり空の方角へ開いている
光、の直進は
結局ことごとく挫折し ....
陽射しがシャワーの音
蝉
人の向こう側に横たわる人よ
横たわる人を跨ぐ人よ
潰された眼は見ていただろうか
白く透ける少女の抜け殻を
地下水脈の夜光虫を
皮膜に隠された結晶体を
地は焦げるほどではなく ....
このままどこかに行ってしまおうか
帰りの車中でそんなことを言っていた二人は
どこにも行けないことは知っていたけれど
その言葉だけで十分満足だった
今、僕らは三人になって車も一回 ....
自らも足音を立てぬ盲目の猫は、泣き砂にのみ足を下ろす。
風紋に食らわれる足跡に、可能な限りの夜を映し、銑鉄の水盆に月を盗む。
青く凍てついたまま水没し、日々に焼ける砂のみが、ただ残る。
....
夕方、最後の蝉がベルを鳴らすけれど、
秋に蝉は消えて、秋に蝉は失われるわけでなく、
ただ土に埋められて、
土の下から遠い声がして、
草が土を覆い、
それでも遠い声がして、
使われな ....
真夏の渓谷の薄暗い木陰で
川音を聞きながら
ひっそり息をしていた
ひとりといっぴき
濡れた岩のうえ
つんとまっすぐに伸びた胴
行儀よく揃えて閉じた翅
その黒曜石の輝き
日の当た ....
トンボならギンヤンマ
ぎらぎら青光りする腰
淡い緑の腹に飴色の尾
それからあのぐりぐり動く目玉
生まれ変わるならギンヤンマ
青々と輝く水田のうえ
セロハンの羽音響かせて
軽やかに飛ん ....
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