すべてのおすすめ
惑星をつなぐ鉄道の中継地
真空チューブが
弦のように延びている
定刻をすぎても宇宙嵐で
発車の目処はない
電気石で火をつけて
炭素を吸う
外壁で散るホログラムの桜
....
祖母の喫茶店では
スティックコーヒーを客に出す
食事のメニューは
近くのベトナム料理店のものだし
自慢の紅茶はどこか酸っぱい
ゲートボール日の店番は私
お客さんは足の悪い染吉さんだけ
....
言葉が砂みたいにつまって
詩はもうなくなった
わたしは砂袋
されたキスは
ぜんぶ覚えてる
黒ずんで腐ったところ
いまは眠たい
砂袋になってしまったのに
眠たくて眠たくて
....
明かりの少し落ちた町で暮らしていたとき
身近にいる友だちと会うことがなにより恐ろしかった
だからこの街に引っ越してきたときに思った
あの人もあの人も果ては両親さえももう誰もいないのだと
....
浅い息の淵をたぐって、人混みのほどけた場所へ、同じハッピに同じサンダル、出場の順番を待って、盆踊りの夜は凍える。アルコールの傾斜を滑り、秩序や光が失われる場所へ、根源的な連帯が訪れる瞬間へと、 ....
浅い息の淵をたぐって、人混みのほどけた場所へ、同じハッピに同じサンダル、出場の順番を待って、盆踊りの夜は凍える。アルコールの傾斜を滑り、秩序や光が失われる場所へ、根源的な連帯が訪れる瞬間へと、 ....
柔らかい光から逃げようと
藤棚を下から眺める
滝のよう流れる花びらが
春の喜びを押し付けてくる
地面いっぱいに散らばる藤を見て
また俺だけが生き残ったのだと思う
春を感じすぎたのだ
....
神話が語らない
占いの及ばない
誰の願いも届かない
遥か遠く
暗く冷たい空白に
在って
在るからこそ放出する
己の核から外へ外へと溢れ
続け 続けて
やがて尽き果てた
非在の残像
....
戦いがはじまれば
君は何と戦うのだろう
ゴジラであれサイバー攻撃であれ
何と戦っているのかさえ知らされず
戦う日々が来るんだろうか
蜩が鳴いているから
この、
暑い夏を思うのかもしれ ....
#ダフィーダックの憂鬱
洗濯機を回すとあなたのにおいが
しんでしまう。
ごうんごうんと音を立てて
昨日のあなたとの時間を
ころしていく。
それでも私はいつもより多めに
洗剤を入れては ....
背中にへばりついて取れなくなった
アノマロカリスは気付けば苔むしながら
僕を覆う全身の鱗のようになって
まるで貴女を忘れたみたいに
背だけが伸びた針葉樹を
なぎ倒す最後のダイナソーに
なっ ....
ああ 蟻の体で
君の思考をあるいたら
どんなに気持が良いだろう
意味や理由から赦されて
わずかでもたしかな重みをもってあるいたら
でもこれは
ぼくの罪で
いつまでも脳を出ない
....
とおくの海から聞こえる
漁船のエンジン音が
夜の上空にどんよりと膜を張る
夜露に濡れた家々の屋根が
魚の腹のように光る
窓の奥で、
そのようにしっとりと濡れていく
濡れていく
まるで母 ....
どこか
骨の
奥底に
黙って居座る
黒い眠りのような
小雨の朝
歯ぎしりする歯が
もうないのです
そう伝えたいけれど
そこには誰もいなく
部屋の中には
少年のまま
老いた私 ....
彼は複眼だよ僕より見えない
だから優しいだろ
僕は人間だよ
虹彩の伸び縮み
青とオレンジの蛍光灯だけが頼るべき物なのさ
明滅、明滅、明滅
鼓動がうち返す波
海は漆黒としか知りません
....
またひとり 友達が逝った春
ホームの売店で香典袋を買う
無愛想な店員が差し出す
派手な化粧に 朝日が散乱する
押し頂くような仕草で受け取り
擦り切れたバッグに入れたとき
倒れた ....
ゆうぐれに
訃報がふたつ
覚えたてのことばを使う
無駄な行間を埋める
雷鳴がとどろき
過去に幕を引こうとする
落としてきたものと
忘れてきたものとはちがう
ついばんだ死につ ....
あんなに大事だった針を
谷底に落としてしまったせいで
かかとからほつれた赤い糸が
林間をくねくねと絡まっている
まるで血管を張り巡らせたかのごとくに
山の中をうろつき
あるいは全体を火事の ....
眠りはいずれ海に至る山奥の渓流
眠りが海に至る直前に人は目を覚ます
人は覚醒の光の中におぼれ
眠りは海の中に混じる
眠りは海の中で最も深い眠り
死の眠りとなる
人が眠りとともに ....
海沿いの一部は工場地帯
市街地は空気が綺麗とは言えない
大竹市は海側は少しだけ
殆どが自然豊かな山々
小規模な市
鯉のぼりが有名
昔みたいに盛んではなく
作る人が減る一方
....
かんがえてみる
あなたの肉にうまった
あなたの背骨のこと
となりにいながら
月面のように遠い
わたしたちの午後
手を握る
頷き わらいあう
影をみつけて
光を逃がす
吸わな ....
爪先で
地面をタップする
日常にひそむショートカット
生きることに憧れる
若いというエネルギーが
エコモードへと移行する日々に
時代へのアイコンを作りだす
流されていてもいい ....
お腹が空いたけれど所持金は32円
なにも買えないからレジに向かわないなんて当たり前
コンビニの温い空気、外の辛い寒さ
自転車のかごにアイスと雑誌を入れる2016年
スマートフォンにはいくつ ....
外ではもう
クリスマスの鐘が鳴ってる
結婚したら新居を建てよう、と言われて
戸惑ってる
この世の中にあるもので
あなたの持ち物はあなただけよと
育てられて
まだそれを信じてる
....
一面の海。一面の空
波の飛沫のとどかない中空の城
折れた七節を
秘密の糸で縫って
生き返ったと
誇らしげなきみに
魂について説く
きみより多くを知る道理はあっても
深く ....
鋼鉄の街には鋼鉄の光が降り注ぐ
街路樹の柔らかな緑も
公園のしっとりとした土も
すべて鋼鉄でできている
もちろん電話線を流れるのは
情報と化した鋼鉄であり
行政組織も警察組織も ....
それまで
水の中を泳いでいたものが
産院のベッドの上で
あし。になる
それはまだ
自分を支えることも
出来ないけれど
あし。と呼ばれる
こんなに
ちいさく
まだせかいを歩いてさ ....
砂の降り積もる
廃墟手前の町
狂ったオオカミが
猫を育ててる
いつも舌を噛むから
血だらけで笑った
いよいよとなったら
この世をみんなお食べ
しだをもらった
めずらしい種類のものだというので
別に鉢を新調して植えつけてやる
さほどうまくはない手つきで
子供の手指ほどの根を土に埋めて
ひとまず一鉢を仕立てる
それを枕辺に置いて眺め ....
魚を釣りに行きましょうと
手を引かれて行く
氷のように冷たい手である
連れてこられた川辺には
沢山の人がすでに釣りを始めていて
思い思いに竿を上げ下げしている
自分もどこからか
骨のよう ....
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