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あんなに大事だった針を
谷底に落としてしまったせいで
かかとからほつれた赤い糸が
林間をくねくねと絡まっている
まるで血管を張り巡らせたかのごとくに
山の中をうろつき
あるいは全体を火事の ....
しだをもらった
めずらしい種類のものだというので
別に鉢を新調して植えつけてやる
さほどうまくはない手つきで
子供の手指ほどの根を土に埋めて
ひとまず一鉢を仕立てる
それを枕辺に置いて眺め ....
魚を釣りに行きましょうと
手を引かれて行く
氷のように冷たい手である
連れてこられた川辺には
沢山の人がすでに釣りを始めていて
思い思いに竿を上げ下げしている
自分もどこからか
骨のよう ....
子供の頃、森に捨ててきた犬が
数十年かけて戻ってくる
窓の外で鳴いている
ここをあけてくれよう
あけてやらない
もし窓を開けたが最後
わたしのほうが犬になって
寂しい荒野をさまようことに ....
夜中に地震で目が覚めて
地震が起きるたびに
いろんな神社の鳥居から
小石がぱらぱら落ちているのだろうな
と窓を開け閉めして
もう一度、すとんと夢の中に入る
夢の中では栗の木林にいて
....
{引用=
小学校の桜にいつか辿り着く 吉田右門
}
学校前の坂を上っていくと
コンクリートで固められた左手の斜面に
ぴたりとはめ込まれた形の地蔵がいて
土の猛威を抑えているのか
背中を見 ....