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Happy Endの予感がして
ここで命が終わればいいのにと思った

だけど口では
このままときがとまればいいのにね、と
遠慮がちに言った
化学のテスト中に
恵美子がプーと屁をこいた
するとしんとしていた教室が(え?)となって
震えるお腹や真っ赤な耳にかわり
もうテストどころじゃなくて
すこし休憩することになった
本物の休み時 ....
彼の宇宙では音が鳴り
言葉にもならない音が鳴り
私は深海でそれに応える
言葉にもならない音を鳴らす

彼はいつも足元ばかり見つめて歩くから
私が見つめていることに気がつくことはない
私は ....
永遠に続いている昨日がすべての政体を照らし続けるので
僕らは誰にも嫁がない花嫁を選挙した
完璧すぎて誰も釣り合うことのできない花嫁を
花嫁は昨日を打ち倒して美しい行政を織り上げた
 ....
夜の砂漠に
小型機が墜落した
焔が吹き出す
黄金の砂が焦げて
一陣の風が吹く
機体は分解され
眩い粒子となり消える
砂と部品を赤く塗る血液
操縦士は
幸せそうに死んでいた
 ....
稲の規則正しいひしめきの中で
全ての尊いものを押しつぶしていきなさい
そうして全ての卑しいものに隠された
厳しく高貴な天秤でもって
稲は実り稲穂は垂れ
かつて無垢であったという人 ....
本の中で、死んだ者はここに流されてくる
happy-endもbad-endも等しく

作業員達は
本棚の黴びた本を種火にして
廃材に火をつけていった

本が体を温める

文字を読める ....
二人称だった、ぼくは今日。涼しく朝には吹いた。それを感じた。風を。歩いて、まだわからない。なんのために?思うとそうだ。風を。猫はまだあそこで寝てる。ソーダ、記憶。島の。歩いて鉄条網、看板を、ぼくはわか .... 職場に新採で入ったころ、上司に古いタイプのサラリーマンがいた。私とは歳が大きく離れていたので、当然考え方に世代間のギャップがあり、そこで小競り合いのようなものが発生したりした。組織は異なるイデ .... 平らかな純粋がちいさく傷ついて

音をたてたのだ

まよなかはふたりに気づくと

眼をさまし

海の風をとめた

息をひそめ

青ざめた街のかどを見つめていた

 ....
それにしても
不覚ではないのか
何か
流氷に
頭をぶつけでもしたのか
凍りついたままで
千年も気絶していたとは
僕も長い人生で何度か
頭をぶつけては
気を失いそうになったけれど
ま ....
庭にゆりの花を植えると病人が絶えない
そう教えてくれたのはあなただった。

家長がほいほい死んでしまうから、とも言ってた。
そして笑いながら、赤黒い球根を掘り返した。

秘密を知られている ....
てっきり
魔法の越中ふんどしで
飛んで行ったと思っていた
おじいちゃん
実は猛烈な強さの台風に向かって
「わしはわしの家族を
お前から守ってみせる!」
と叫びながら突っ込んで行ったのを
 ....
真夜中のスーパーマーケット
わたしたち、二人逃げこみました
逃亡者なのです
追われているのです
月に、星に、夜に
ここにいれば彼らの姿は見えないので
安心して手をつなぐことが出来ます
最 ....
源氏パイがあった
たまたまキッチンの棚を見たら
人目を避けるように
そこに佇んでいた

袋を開け
一枚口に含んだ
ホロっと解けて
甘い香りが
口一杯に広がった

止まらなかった
 ....
生きるということはこういうことです

そう言ってせんせいは

聴診器をはずした

わたしを見つめているのか

ずっと遠くを眺めているのか

わからなかった

眉間に深 ....
潮風と鉄錆びの匂いがする
寂しい港町に住みたい
そんな街に住む人達は
どこか遠い町から流れ着いたから
いつも風が體を吹き抜けていく
頑丈な靴を履いて
身構えながら
何時でも何處へでも
 ....
このごろ
夜になると
湖の畔で
子がひとり
菓子箱を釣り上げる
歳を尋ねても
教えてはくれない
何度も尋ねる
そのうちに子も
尋ねかえしてくる
人に話すと
誰も信じず笑うが
ほ ....
〈人間失格〉
一人一人の人間には基準がないから失格も合格もない。
人が他人と関わるとき基準が生じて失格が問題となる。
人が多くいると平均化による基準も生まれる。
だが人間失格とはそんな一般論を ....
あくまのマジック
ぬりつぶす
だれがだれで
ぼくはだれで
きみがだれかも
わからない
あくまのマジック
ぬりつぶす
かおとか
てとか
からだのうつくしいところはどこ
うそだら ....
卵色の嘘で塗られた部屋に住む
少年のつむじは左巻きらしい

枯れない生け花の蜜を食べ
彼の呼吸を生け花は欲した

外からの音が
クルミ割りだろうが
目覚まし時計だろうが
水爆だろうが ....
嵐の日に
卵を
ひとつ
手のひらに包んで
大切な
人たちがいる
場所へ

こんな嵐の日に
止めておけって
すれ違いの人が
わめいている

けれど

卵しか
持っていな ....
さてそれからまた無限に近い時間が過ぎて
女はファンデーションを塗り続けた
その間に七人の王が即位し
大地を揺るがす大きな地震が二度あった

我々は本日ここに集いて
町内会の役決めをすること ....
黒い芍薬
苺をつつく鴉たち
燃え草の茂みから南瓜が芽を出している

型枠だけ残した山村
川底の割れた舗装
空の色を変え、夏草を呼ぶように
降り始める雨
ひとがいきて
ひとがしぬ

いぬもいきて
いぬもしぬ

ねこもいきて
ねこもしぬ

くまもさるも

ひつじもとりも

みんないきて

みんなしぬ
「サーカディアン・フラクタル」


空といたい。
そう言って見上げた優しいおでこに
ギリリと違和感が粘着していて
不毛の鳥は翔けてゆけない!

「ヒューストン、応答せよ!」  ....
ここには生きた死体ばかりが働いています みんな自分の大事な部分を殺して一度死んだ上で その死体を制度の機械的な動きに合わせて 操り人形のように動かしているだけです ここに生きた人間は入れない 入る段階 .... 一滴のくらやみが 明るみに落ちたとき
わたしは黙っていてもわたしでした
愛などのことばも必要なしに

光を一粒あなたがとってみせたとき
はずかしく右往左往にばらけるわたしを
つぎはぎの ....
街路にいるぼくが
語りかけるとき
胸の塔の
小さな窓があき
風がはいって
搭の中に眠っていた
もうひとりのぼくが
街路をのぞく

去っていくときに
長い髪をゆすって
一度だけ
 ....
夜の帳がおりるころ

窓枠をめざすもの

ベッドの下をめざすもの

テレビの画面を目指すもの

外気を求めて出かけるもの

温もり求めるもの


夜の帳がおりるころ

こ ....
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