今朝
物音で目が覚めました
風が
寝返りを打った音
でした
指、で押す
蝉のお腹の柔らかさのことを
私はぼんやり考えている
お腹、を
開いた人は
仰向けになり空の方角へ開いている
光、の直進は
結局ことごとく挫折し ....
もう、かれこれ二時間ばかり
ゴカイの長い横っ腹に
食らいついてはいるが
どうしても
飲み込めないでいる
隣の奴は
ゴカイの頭の方に回り込み
うどんでも食うように
つるつると
器用 ....
蝉が時雨れている8月の
呼吸がぴたりと止まる時がある
子供達は公園でぶら下がっていて
突然の静寂にゆれている
初めてついた嘘はどこへやったかと
懐かしい引き出しをひっくり返すと
初めて ....
その夜 蝉が部屋に飛び込んできた
すみませんね いつもうるさくて
ジージーと耳障りな声だったが
蝉は 確かにそう言った
私は 尤もだと思いながら苦笑した
蝉はさらに言った
どうせあ ....
行きかう人でごった返す午後の駅。彼は広げたダンボールに座って柱に背をあずけていた。先ほどから、そばに転がっているペットボトルのキャップを指さし、その手をしきりに上下させている。どこかで叫び声が上がっ ....
−1.青の頃−
沢山の顔
溢れんばかりの
闇 病み ヤミ
黒に支配され始めた僕は
やがてくる悩みにうたれた
終末のような薬の数は
僕を支配することなく
机の上に転がるばかり
....
田舎から出てきたばかり
まだ都会に慣れていない
デートの仕方も知らず
ま、若いからあっちのパワーだけは全開
お金も持ってないし
住んでるところも地味
ついでに見た目も地味
でもよく見 ....
横たわった端整な顔が
眠っている 女だ
前景に
積もる砂粒がせり上がって
早く厚く
それを埋めていく
呼吸のように耳へと覆い被さる風
急速に埋め尽くされていく 砂
もはや ....
自らも足音を立てぬ盲目の猫は、泣き砂にのみ足を下ろす。
風紋に食らわれる足跡に、可能な限りの夜を映し、銑鉄の水盆に月を盗む。
青く凍てついたまま水没し、日々に焼ける砂のみが、ただ残る。
....
夕方、最後の蝉がベルを鳴らすけれど、
秋に蝉は消えて、秋に蝉は失われるわけでなく、
ただ土に埋められて、
土の下から遠い声がして、
草が土を覆い、
それでも遠い声がして、
使われな ....
よくある職場恋愛で
なんとなく付き合い始めた
きらいではなかったけど
好きかどうかは判らなかった
暇でさびしいから
そういう理由で男女はいくらでも
付き合えるから
慣れてくると
いつも ....
鈍行列車で消火活動に行きましょう
なんて、いかしたメールが
彼女から届いた
僕といえば魂は確かにあるはずなのに
それを入れる器が見つからなくて
朝からオロオロしっぱなしだ
入道雲の ....
先週の午後
雨と一緒に
隣の男が降った
最上階に住んでいるとそれだけで
いつでも飛び下りなさい、と
手招きされているような気がするので
荷物が重たくなった時などは
ベランダに近づ ....
安芸乃島関に似ているらしい私は両国へは足を踏み入れられないのだ。
カラダが自然に高脂肪食品へと向かうのは全人類の本能だと思っていた。
そんなのは現代人ではないらしい。それなら私は原人でいい。
本 ....
エアロバクターも
エントロバクターも
黙として
デトライタスを
食っている。
ただ
ひたすらに
原始の記憶
そのままに。
交差点に立ちながら考えた
なぜ俺はここにいるのだろう
紺色の制服の中のそのまた中は
少しも変わっていないのに
化石となって考えた
風がひゅーひゅーなっていた
女子高生が華やかに通り ....
梅雨明けの午後3時、
高架化成った西武池袋線桜台駅。
昼飯食いそびれた背広姿のサラリーマン(俺)が
ベンチにて団子3串にかぶりつく。
頭ン中にはお気楽な音楽。
「カリフォルニア、 ....
さり気なく母であれば
さり気なくあなたも娘であるから
家の重さが気楽だね
愛しさは葉裏に隠した卵のように
日にも晒さずに
風を気取って通りすぎる
着慣れた服の私を
あなたは横目で追い ....
家族と走った8万キロ
一人で走った1万5千キロ
家族に内緒の5千キロのうちわけは
君だけが知っている
私には顔がない
のぶちゃんはグルグル包帯の
ミイラ男みたいな顔持ってた たしか
と、思っている
水鏡にもお尻を向けられた
私 やっぱり顔がない
手鏡捨てた
三面鏡割った
別にいいや ....
ロックグラスの淵をふさぐ手の平
中身は空っぽに満たされて
そっと僕の息を閉じ込めた
3月 せっかちな不結合のチリは
町の中を撫で歩き
時折、見せてくれる隙間に ....
ス テ ロ イ ド
傾 ぐ 夢 さ え 痛 む な ら
遠 い 目 蓋 に 果 て よ 、 残 夏
地下鉄の風に胸の内なぶられて
食物連鎖 取り残され 独り夕食
どこも痛まずに爪が伸びてゆく
今月も産まれない卵を産み落として
部屋 ....
数学者は
0より小さい100の存在について考えながら
歯を磨き
大学前の坂道を登り
故郷の母親に手紙を書きます
今日は
0より小さい100の存在を確認するため
のみ市で
中 ....
それは目に見えない
見えないけれどある
確かにある
見知らぬ場所をお散歩中に
見つけた空き家
ぼろぼろの屋根の下から
黒猫が四匹
わたしを見つめ鳴く
知らない庭の
知らない犬 ....
水道の蛇口を捻ると
羽根飾りを着けた男の子達が飛び出してくる
あわてて掬って口に含むと
格子窓から漏れてくる明かりのような
ぼんやりとまたうっとりとした
現実に変わって
あたしの渇きを癒す ....
だれもいない台所でぼくは
ひとりおこわの田吾作弁当を
食べた SOGO地下食料品売り場で
買ってきてもらったものだ うまくも
まずくもなかった 見栄えはいいが
....
拝啓
自転車は風をさよなら過多に切りぬけて
そしてイヤホンの歌詞が
はっきりと飛び跳ねてしまう 不意の
踏みそこねたペダルに折り畳まれないように
ああ 忘れないように
妄想がイメージがスピ ....
なんとなくおきて
なんとなくべっどをでられない
じっとしている
じとじとしている
とけていっている
じょうはつしはじめている
あわててじょうはつをとめようとし ....
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