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遠くの丘の教会の厳かな鐘の音が届く
私は
{ルビ如雨露=じょうろ}を止めて
目を閉じた
愛の門出のサインであろうか
永き眠りのサインであろうか
私がこの手に
掴め ....
少女のために
空き地のために
泥靴のために
良かれ、とついた嘘
自分の肩幅も
かえりみず
良かれ、とついた嘘
あの頃は
そうでもしなければ
苦しくて
....
ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
風にそよいでいたきみのこと
ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
きみの光が思い出に捕らわれそうで
....
たとえば少年の溜息を
たとえば少女の独白を
空は拾いあげるでしょう
空にはみんなの星がある
たとえば背広の焼酎を
たとえば情婦の香水を
空は拾いあげるでしょう
空には ....
埠頭に
群れなす
カモメはすべて
哀しい心のなれの果て
船は今日も出てゆくのだ
海は広いというのに
のぞきこめない
瞳の深さをもって
船は今日も出てゆくのだ
....
星空の下では今日も
作業灯が明るい
掘り起こされる大地
積み上げられゆくコンクリート
道行く人は
まだか、と未来を吐き捨てる
けれども作業灯は
必ずの未来へと向かって
....
もともと
あてになる眼ではないけれど
それでも
夕陽の色彩くらいは
心得ている
川辺は 減速を始めている
木立は 瞑想を始めている
鳥達は 安息を始めている
あきらかに夕陽の時 ....
からだの曲線にそって
あなたは
かんたんなじゅもんなのだと指を折った
てのひらをそっとひらいて
りゆうもなさそうにわらった時
すこしだけ
えんえんとつづいてゆく
朝の風景を おもいだして ....
夕暮れに
ひめりんごの花弁が
雪のように散ってゆき
落ちた先は
あの子の眠る
寒い土の上でした
最期の言葉も
交わさぬまま
突然
冬空へと消えた
一つきりの ....
天動説の子どもが増えてるらしいのですが
それはまったく自然なことです
地球が回っているのだとしても朝が来るのは退屈なのですから
僕はお布団で魚になって
箱舟に乗ったかあさんとはなしをします ....
点滴を打たれながら、病室の窓から海を眺めていた。看護師が言うには、わたしは雪の降り積もる中、マーメイド海岸でひとり倒れていたらしい。音もなく波が白くよせている。意識が戻って二日たった。熱が下がらない ....
14歳の冬
生理が1ヶ月近く
止まらなかったことがあった
わたしは学校で倒れ
保健室に運ばれた
どうしたのと先生に
やさしく聞かれても
上手く話せない
自分でもわからない
母親に病院 ....
あれから
どれくらいの時が過ぎたのかなんて
思い出せないけれど
わたしは夜の11時頃
仕事帰りにひとりで
国道4号線沿いの
びっくりドンキーで
ハンバーグディッシュを食べていて
つい
....
両手でそっと包んだ鳩が冷たく固くなっていくということ
小さな部屋でひとり眠る夢のこと
最後の言葉を告げるためにやってくる
自転車のこと
同じくらい愛し合っていると思える人と出会い
二人でしっ ....
くちびるを
ささやきが 漏れでると
くちびるを
漏れでた ささやきは
ちょうどその時 部屋にある
オレンジ色の ひかりになる
それから 部屋の空気を
豊かにし ....
夕暮れ部屋の中で
君はキットカットと
出掛ける支度に夢中
俺は鱈のムニエル作りに夢中
いつものまな板の周りに
時々の鱈が甘塩で二切れ
その親愛なる白身を
俺から奪わんとするエノキとシ ....
1.Berry(大好きなベリー)
ベリーを摘みに行きましょうよ
どこへって?
うふふ、秘密の庭へよ
雨の土曜日に見つけたの
お洗濯の日だったもの
濡らした服で帰っても、怒られなかった ....
皮膚のすぐ下は清冽
流れゆく血が私を
結びつけているのだ
家と人と肉と そして
全ての生きているものたちと
血によって私は
辿り直されることを許す
血によって私は
絶えず内 ....
冬は好きではない。失業してから外出が減った。TVを見るか寝ているかだけで、二ヶ月が過ぎた。TVでマーメイド海岸のCMを何度も見る。海面から顔を出し泳ぐマーメイドの姿。面接や職安にも出かけるが、就職先 ....
遠いお話を
忘れないために
僕等は
指を折りながら
花の咲くのを待っている
寝返りの度に
蒸発してしまう夢を
朝のそばで
取り戻そうとしている
見つからないままでいる ....
春も夏も秋も、わたしにとっては短かった。あれから一年が過ぎ、長い冬がまたやって来た。失業し、仕事を探している。
(しばらくは会社に行かなくてすむ)
わたしの元へは戻ってこなかったものもあった。 ....
冬はまだ続いている。海からの光で、部屋は青に包まれている。神話の本を繰り返し読んだ。岬には女の顔をした鳥、ハーピーがいるという。元は風の精ともいわれている。そのハーピーが舞う岬から、水平線の彼方を見 ....
夢のまた夢
丑三つ時は眠っていたいの
怖い夢を見たくないから・・・・
美しい花畑を見知らぬ人と手を繋いで歩いています。
大雨の中 大きな魚を釣り上げて
雨は静か ....
冬になり、女の顔をしたバードは飛び去った。わたしは、あの時の車をスクラップにして、海の見渡せる丘に部屋を借りた。情報誌でバイト先を見つけた。倉庫の仕事に就く。朝七時半、精神安定剤を飲んでから、家を出 ....
一人でいることに、何年も飽きなかった。シートの、海に伝わる神話を読みながら、永く暇をつぶしていた。精霊の女、の横顔の表紙。空腹の中、海に向かう道、カセットで、オペラを聴きながら、わたしは車を走らせた ....
祖父のあとをついていく。
海を見渡す墓地で、親せきたちが鎌で草を刈る。わたしも草を刈る。
母が野の百合を、見つけ出した墓に供えた。
波は白い。
風の音。わたしは平野に立つ。西の空は錆びた色をしている。
離れたところ、陸橋に車が列を作って走り去る。月が風に揺れている。風の音が、遠くの車の音が、わたしの耳の中の音が、入り交じっては、かき消さ ....
誰もが安易に描くことの出来る草原の断片をひろいあつめて
籠とゆう籠のそとがわを不安定している
蝶の羽根越しに開かれた冬へと
踏み込む
回転するはばたきはすぐに閉じ
巨大な雪山に遭難する
吹 ....
ある朝、母は出社前にわたしに言った
「お前を精神病院に連れて行きたいよ」
そのうち 夜は突然やって来るのだろう
こんな日々に
白夜が恋しい、、白夜が恋しい、、
と 唱えてみても
彼方の国の出来事で
暗闇に透明な涙も光りはしない
今 高い声で鳥が鳴いた
....
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