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あまりにも純粋で
故に{ルビ果敢=はか}なく捉えがたく
けれど
強く深く

轟きでもあり
静寂でもあり

満ちあふれ
けれど虚ろで

鋭く
けれどやわらかく

かぎりなく甘 ....
僕らの夜をめぐる熟れた遊星
僕らの夜に降りそそぐ甘やかな流星

僕らはいつか来る終わりを
待ち望む気持ちを
ひそかに淡く抱きながら
今ひとときを寄りそう

銀の小さなフレームの中の
 ....
すべての夢が燃え尽きたあと
僕と君とはふたたび会うだろう

そこには静かな風と
穏やかな光があるだろう
そして僕は
もはや語らないだろう
叶った夢のこと
叶わなかった夢のこと

た ....
君の言葉と沈黙をたどる
僕の言葉と沈黙とで
その感触をさぐりながら

そうすることだけで
行ける場所があると
いつからか――

記憶の海より深く
予感の空より遠く

その道のりで ....
僕らは彼方で会う
今此処で会うための身体に背いた僕らは
彼方で会う

今此処を縛る身体に縛られない僕らは
彼方で会う いつでも

いつまでも
僕らは互いに彼方のまま
何度でも会う
 ....
優しい崩壊がはじまっていた
あまりにも優しいので
感じるべき痛みを
感じることができない

あまりにも無垢な幻想が
あまりにも無垢なまま
此処を通りすぎることはできず
幾重にも折り畳ん ....
いつしか時は満ちていた
いつしか雨はやんでいた
いくつかの傷はまだ響きやまないけれど
しずかに吹く風が告げている
ひとつの旅が終わったのだと

振りむくにはまだ重すぎる日々も
見わたすに ....
濃い青の空に
白い雲の城砦がいくつも立ち
なかぞらを埋めつくす蝉時雨
他のどの季節にもない濃密さで
夏は君臨する

けれどその夏の中に
巨きな空洞がある
夏のあらゆる濃密さが
そこで ....
亡びたもののあかるさが満ちる夏の庭
もう誰も時刻を読むことのない白い日時計
茂みに囲まれた小さな池

茂みをざわめかせていた風がやむと
あちこちの陰にひそんでいた気配たちが
(それが何の気 ....
君が「孤独」と名づけた場所
そのさらに奥に
小さな部屋がある

くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や ....
アガパンサスの揺れる向こうから
夏の旋律がこぼれはじめる
空の青と光の白が
みるみるそのまばゆさを増してゆく
そこに君が居た
そのなつかしさは残酷なほどあざやかだけれど
でもそこはもう
 ....
灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で

六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
 ....
{ルビ朧=おぼろ}の水が昏い季節を流れている
私は無邪気な罪の眠っている
揺籃をそっと揺すっている

無邪気な罪は
眠りながら微笑んでいる
おそらくは
甘やかな赦しの夢でもみているのだろ ....
灰色の薄明の底に
灰色の湖が静かにひろがる
その汀にひとり佇んでいる

灰色の薄明は薄明のまま
明けることも暮れることもない
灰色の湖はただ静かだ
誰の 何の気配もない

ただこの場 ....
空っぽの硝子の鳥籠に
早春の光が淡く虹色に差す

そうすると
わたしはうすい水色の服を着たくなる

――籠の外では生きられない
  華奢ないきものだったはずなのに

  でも囀りは  ....
街からすこし離れて浮かんだような
この小さな白い部屋を
うすむらさきの夕暮れが染めて
そして還ってきたあなたが居る
私の知ることのできない
どんな世界を いくつ巡ってきたの
それをあなたが ....
自分の外側にぴったり貼りついている世界を
引き剥がしてゆく
すると
自分の内側にぴったり貼りついていた世界も
剥がれ落ちてゆく
すっかり引き剥がし終え
剥がれ落ち終えて自由になった
と思 ....
星界に想いをはせることと
君に想いをはせること
そのときめきはよく似ている
君を見るとオリオンの昂揚
シリウスの凄烈を感じる
すばるの繊細 スピカの清純
アンドロメダの優美も君に見え隠れす ....
    北

極星のもとに彼は立つ
視界に都市と荒野を広げて
その指先から綴られゆく言葉に
閃く叡智の稲光


    西

葡萄色の雲を漂わす
美しい黄昏の瞳
彼は歌う 深々 ....
グラスの中に
ひとかたまりの雲が浮かんでいて
グラスの底へと
静かな雨を降らせている

夜になると
そのグラスの水底から
地球がひとつ
生まれでる
ひんやりした空気の漂う
澄明な秋のゆうぐれである
蓼のべにいろ
野菊のうすむらさきが
ふるえながら空へと
にじみあがるのである
この小径をゆくと
わたしの肌にも
それらのい ....
いくつもの{ルビ阿房宮=フォリー}の影が映るホリゾント
切り貼りだらけの書き割り

響くのはPromised Landへの行進曲
主役もどきがものものしく登場

コロスたちが金切り声で笑う ....
暗い残暑が滴ってくる

百日紅の花から
蝉時雨から
空を斑に彩る不穏な雲たちから
遠雷から

幾重にも重なる過去の記憶から……

暗い残暑が滴ってくる
そうして私の底に
暗い染み ....
あたりは仄暗い

無数の墓標たちが漂っている

言葉たちが 沈黙の淵へと沈み溶けてゆく

悼み 祈り 鎮め

どんな言葉も私は選び掬い取れない

ただ この沈黙の淵から

いつ ....
雨季が明け
浄らかな風吹く夏の午前
こんなときは
あのきらめく湖面と
小さな桟橋に立っていた君の姿を
思いだす

君はかつて歌っていた
約束の地のことを
そんなものは何処にもないと知 ....
私は歌う 聞こえない歌を
私は踊る 見えないダンスを

爛れた雨の降りしきる中を
ぎらぎらとひらめく旗たちの下を
言葉の礫たちの飛び交う中を
私は歌う
私は踊る

幾重もの傷が重なる ....
手をとりあって
いちばん深い風の吹く場所へ行こう

其処には音楽のような樹と
祈りのような泉がある

手をとりあったまま
いちばん深い風に浄らかに吹かれて
たたずんでいればいい

 ....
水の昏さを溜めてゆく瞳に
追憶のかたちとして映る睡蓮
青い闇の底
鍵盤が滴る
それらを奏でる指たちは
烏座の方角からやってくる

遠くにたたずむほの白い光圏の
愁いと呼応するカーテンの揺らめき

漂う柑橘の花の香が
ふとひと ....
僕たちが
子どものように無心に
箱庭に玩具をならべて遊んでいるうちに
気づくと 世界が
すっかり終わってしまっていたんだ

だから僕たちは
僕たちの箱庭を新しい世界として
もう一度生ま ....
殿上 童さんの塔野夏子さんおすすめリスト(138)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
THIS- 塔野夏子自由詩5*23-11-9
僕らの夜- 塔野夏子自由詩5*23-10-29
夢のあと- 塔野夏子自由詩6+*23-10-15
- 塔野夏子自由詩5*23-10-7
彼方で会う- 塔野夏子自由詩5*23-9-29
優しい崩壊- 塔野夏子自由詩7*23-9-19
薔薇の泉- 塔野夏子自由詩2*23-8-23
夏の空洞- 塔野夏子自由詩12*23-8-15
夏の庭にて- 塔野夏子自由詩15*23-8-7
小さな部屋にて- 塔野夏子自由詩11*23-7-29
めぐり来る夏- 塔野夏子自由詩5*23-7-17
あじさい- 塔野夏子自由詩12*23-7-5
朧の水- 塔野夏子自由詩3*20-2-3
灰色景- 塔野夏子自由詩5*16-3-27
硝子の鳥籠- 塔野夏子自由詩7*16-3-9
帰_還- 塔野夏子自由詩4*16-2-29
悪_夢- 塔野夏子自由詩2*16-1-21
星界の消息- 塔野夏子自由詩3*16-1-9
方位座標系- 塔野夏子自由詩8*15-12-29
卓上の神話- 塔野夏子自由詩5*15-11-17
秋の手紙- 塔野夏子自由詩4*15-10-17
劇_場__Ⅲ- 塔野夏子自由詩2*15-9-23
暗い残暑- 塔野夏子自由詩5*15-8-23
漂う墓標- 塔野夏子自由詩6*15-8-15
夏の風- 塔野夏子自由詩5*15-8-7
聞こえない歌_見えないダンス- 塔野夏子自由詩3*15-7-13
恢_復- 塔野夏子自由詩6*15-6-19
睡_蓮- 塔野夏子自由詩2*15-6-7
五月の夜- 塔野夏子自由詩2*15-6-7
あるロマンス- 塔野夏子自由詩3*15-5-19

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