朧の水
塔野夏子
朧
(
おぼろ
)
の水が昏い季節を流れている
私は無邪気な罪の眠っている
揺籃をそっと揺すっている
無邪気な罪は
眠りながら微笑んでいる
おそらくは
甘やかな赦しの夢でもみているのだろう
朧の水は昏い季節をただ流れ
何処へ行くのか?
昏い季節が薄れる処
その向こうにひらける黎明の銀の界へとか?
わからない……ただ気づくと
無邪気な罪の眠る揺籃は
ちいさな舟に変わっていて
私はそれを
朧の水の流れに そっと乗せて手を放す
自由詩
朧の水
Copyright
塔野夏子
2020-02-03 11:43:49