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翼ある憂鬱が
私を浮揚させている
薄明でも薄暮でもあるような
ブルウグレイの空間に

静けさの遠くに
ほの白く小さく浮かぶのは
船の帆のようでもあり
君の面差しのようでもある

い ....
白い午後の中で
心臓は
碧い虚脱の器である

ふいに
その中から
チューリップがのびて
あまりにも真赤な花を咲かす
やわらかな月の宵に
ものうげなアルルカンがあらわれる
ここに来てくれてありがとう
匂菫の花束をあげましょう

少し遠くの霞んだ墓地では
姿のないコロスたちが歌ってる
アルルカン その歌に ....
曲芸師は球形の虚無で玉乗りをする

奇術師はハットから鳩形の虚無を取りだす
その岸辺へとおりてゆくがいい
そこには優美な灰色の小舟と
一人の天使とが待つだろう

天使に導かれるまま
小舟に乗るがいい
舟底の{ルビ褥=しとね}に横たわるがいい
天使の接吻が
双つ ....
きらめく街に二重映しに
廃墟が黒々と微笑んでいる
何からの自由 何への自由

星が降る 壊れながら降る
その欠片が傷つけてゆく無数の意識
何からの覚醒 何への覚醒

君はいつ泣いていた ....
何に耐えかねてか
世界からぱらぱらと言葉が剥がれ落ちる
きらめく言葉
傾いた言葉
青ざめた言葉
しどけない言葉
跳ねまわる言葉

何に耐えかねてか
僕からもぱらぱらと言葉が剥がれ落ち ....
ひとたび彼が其の場所にあらわれたなら
ひとことも言葉を発さずとも
彼の身体が その動きが生きた詩と化す
時に抒情であり 時に抒事であり
時にそれらを超えた何かである

彼の背後の書き割りは ....
街はずれの空き地
うち捨てられた木箱に
天使が一人腰掛けている

その双つの翼は
いろいろなものの欠片で出来ている
ガラス片 陶片 金属片 石片 木片……
すべてかつては何かの一部だった ....
私の中の
幽暗な領域に
潜むひとつの刻印
おそらくは私という存在の始源から
其処に深々と刻まれていた

その刻印からとめどなくあらわれる
何体ものファントム
美しいもの 醜いもの
華 ....
ノイズ
世界から降ってくるノイズ
を増幅しつづける過剰な神経

らんらんと{ルビ赫=かがや}いてしまう意識
この苛立ちからは逃れられない
僕が世界から逃れない限り
あるいは
僕が僕から ....
誰の記憶の残暑に
響く蝉時雨か

夾竹桃は紅く照り映え押し黙る

正午の陽炎――
誰の耳に聞こえてきたのか
その遠い声は

雲が湧く
わたしの知る あるいは知らない存在の
残暑の ....
使者は訪れてくる
静かに深い瞳で訪れてくる
彼が何処から来たのか
何を告げに来たのか知らない
彼も何も語らない
だが何故か私は知っている
彼が使者であることを
彼が語らぬことのうちにこそ ....
純粋遊離線の導くままに
此の世の座標上から二人して逃亡しよう
巨きな万華鏡の中にしつらえられた
夏迷宮へと入り込んで
光る樹々と湖や
虹色の長い夕映えや
大粒の星座の中で
思うさま誰から ....
やわらかな祭壇から羽搏く宝石函
銀のスウィートピーが窓辺で揺れる
炎と氷の繊細なレースを身に纏い
水平と垂直との幸福なダンス
ダイアモンドの心臓の生きいきとした旋回
ピアノの鍵盤は記憶と予感 ....
第二十三号の地球が
悲しみの瞳を見せている

太陽の中の蒼だけが
灼けつくように孤塔をふちどる

啓示を失った永遠の
――それは羽搏きか痙攣か

見者たちは黒い手帳に
 ....
彼は詩と戯れている
彼は詩を知らないけれど
詩と深々と戯れている
だから彼は踊る
誰よりも美しく

彼は恋を知らないけれど
薔薇の愛撫も菫の接吻も
知っている
だから彼は踊る
あや ....
緑色の闇の底で
君の白くながい指が
夢の皮膜へと滴ってくる
ゆらめく窓辺では
君の可憐な劣情が
青くヒアシンス状に咲いている
アイリス
君を見てきた
誰もが君の姿に
夢や憧れの物語を描くけれど
アイリス
でもきっと誰も
そして僕も
知ることはない
ほんとうの君の
創世記も
黙示録も
それはただ君の中で語 ....
あちこちの葉陰に
星たちがひそんでいたかもしれなかった
小さな噴水は
古い歌のリフレインを奏でていたかもしれなかった
白い日時計は
誰も知らない刻限を指していたかもしれなかった

アーチ ....
空は真珠色 ある春の日の午さがり
風もなく うっとりとあたたかい
こんなとき この散歩道を行き交う人たちの
心臓はみな
真っ赤なチューリップの花に変わるのである



 ....
春になるとあらわれる
円い緑の丘がある

その丘はいつも
すこし遠くにあらわれる
だからそのてっぺんに吹く風を
わたしは知らない

その丘の上の空は
昔に書いた詩たちが
掠れて消え ....
彼はいつも身の回りに星座を連れている
折に触れその星々の配置を
巧みに操りながら

   蒼を帯びた眼差しの閃きで
   ほんのわずか歪んだ口もとの微笑みで
   しなやかな指さきのひとふ ....
洩れる
わたしのすきまから
   わたしが
      洩れる
   淡い光のように
      君へと
         洩れる
      ここからも
         あそこから ....

 蒼い閃

閃する刹那の連鎖を放つその身体

うねる弦に奏でられながら
時空を
   そして彼を見つめる数多の意識を
      うねらせ奏でてゆくその身体

クールで小粋で小 ....
{引用=
*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目 ....
それが彼らの云う正気ならば
私は優雅な狂気を纏って踊りつづけよう

それが彼らの云う現実ならば
私は優雅な夢に包まれて眠りつづけよう
1

繊細な抒情と
硬質な抽象の狭間に
不意に出現する少年の輪郭


2

指さきから歌を零している
気づかずに どうしても
指さきから歌を零してしまう


3

羽搏 ....
もしふと世界が終わるならば
それはきっと
こんな澄んだ青い空の九月の日だろう

そんなことを思うと
なつかしさという古い抒情が
僕らを草のようになびかせてゆくね

小さな桟橋 きらめく ....
あざやかな百日紅も
降りしきる蝉の声も
ふと遠ざかった気がする午後三時
少年は愁いを知りそめた瞳で
透明な文字で記された
夏の黙示録を読んでいる
殿上 童さんの塔野夏子さんおすすめリスト(138)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
翼ある憂鬱- 塔野夏子自由詩3*15-5-5
春の寸劇- 塔野夏子自由詩5*15-4-25
早春のアルルカン- 塔野夏子自由詩6*15-4-7
とある祭の片隅のテントで- 塔野夏子自由詩3*15-1-29
眠りの天使- 塔野夏子自由詩7+*15-1-15
奇妙な祝祭- 塔野夏子自由詩6*14-12-7
静かな手- 塔野夏子自由詩7*14-11-3
故に其の場所で彼は踊る- 塔野夏子自由詩2*14-10-13
九月の天使- 塔野夏子自由詩4*14-9-29
フェノメノン- 塔野夏子自由詩5*14-9-23
ノイズ- 塔野夏子自由詩4*14-9-1
残暑景- 塔野夏子自由詩6*14-8-17
使_者- 塔野夏子自由詩4*14-8-3
INVITATION- 塔野夏子自由詩6*14-7-19
蒼星交響楽- 塔野夏子自由詩7*14-7-11
黒い手帳- 塔野夏子自由詩7*14-7-1
彼は知らない- 塔野夏子自由詩6*14-6-23
夜想曲- 塔野夏子自由詩5*14-6-15
アイリス- 塔野夏子自由詩8*14-5-25
Heart_of_the_Garden- 塔野夏子自由詩4*14-5-11
春変化- 塔野夏子自由詩3*14-5-1
春の丘- 塔野夏子自由詩6*14-4-7
十九歳の星座- 塔野夏子自由詩6*14-3-13
洩れる- 塔野夏子自由詩2*14-2-1
Dancer_on_the_Edge- 塔野夏子自由詩5*14-1-17
四行連詩_独吟_<界>の巻- 塔野夏子自由詩5*14-1-5
優雅なる反逆- 塔野夏子自由詩5*13-12-3
少_年- 塔野夏子自由詩4*13-10-31
九月二十七日_快晴_24℃- 塔野夏子自由詩9*13-10-1
八月十四日- 塔野夏子自由詩4*13-8-19

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