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錆びた炎 軋む月
夜の裂け目で澱んだ花が踊る
誰も居ない丘に枯れた時計が降りつもる

砕けた虹が撒き散らす痛みの音符は
捩れた星座と狂おしく共振する

仮面の支配者は巨大に聳え
その影 ....
一度も私のものだったことがない君を
果てしなく喪いつづけている
その喪失が胸に生む波紋の美しさに
{ルビ彩=あや}なす言葉でうたわずにはいられない
七月の青い空には漂う硝子の雲たち
手のひらの上には天使の破片
陽射しにきらきらきらめいている

これを僕にくれたのは君だったかな
それがどうしても思いだせない
君がよく口ずさんでいた
夏 ....
色硝子のようにあざやかに
此の世へと迸りつづける君の生

でありながら同時に
{ルビ果敢=はか}なく無へと消え入りつづける君の生

誰よりも
あやうくきわどく揺らめきつづける ....
わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように

わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさし ....
花びらの縁に
ほのかに薄紅を帯びた
白い野茨で
五月の少年の情景を縁取る
五月のまんなかにライオンがいる
銀のたてがみが揺れている

ライオンのまわりを
光と風と緑のチルドレンが
回る回る 幾重にも回る

ライオンは深い瞳だ
そして静かに微笑んでいる

 ....
光は淡い
私は愁いを分泌する

花が咲いている
白の黄の 紫の花が咲いている
私は愁いを分泌する

ちいさい蝶たちも舞っている
私の目には見えないけれど
きっとちいさい精たちも
こ ....
見えない心臓が一つある
僕らのあいだのどこかにある

見えない心臓は
僕らに見えない血管をめぐらせている
僕らは同じ血の流れをわかちあう
僕らは同じ脈搏をわかちあう

そして見えない心 ....
朽ち果てた約束たちが
影の中に横たわっているけれど
これまでの全ての喪失たちが
僕の背中を見つめているけれど
今はただ何もかも
そのままにして待っている
浅い春の窓に
しずかな光が満ちて ....
時の檻の中で
彼女は銀色のルージュをひく
幾度目かにひらいた
青い扉の向こうに見えた落書きが
彼女の意識の何層にもわたって谺している
劣化した夢 腐蝕した幻想が
あたりに散らばっていても
 ....
博物館に愛の標本が並んでいる
眺めているとわかるのは
愛というものはおそろしく多様だったらしいということだ
まっすぐなのも歪んだのもある
美しいのも醜いのもある
透きとおったのも濁ったのもあ ....
幾何学模様の闇が重なる
夜の底に
ひそやかに灯る青白い共犯

夜が明けて
其処に残されているのは
誰にも読み解けない証拠だけ

誰もが息を呑む
美しい証拠だけ
まどろみのカレイドスコープの中で
アリスとウェンディが交錯する
白ウサギを追いかけてワンダーランドを駆けるウェンディ
ピーター・パンを追ってネヴァーランドを飛ぶアリス

少女たちは追いかける ....
君のきれいな手が
思いがけない角度から
あざやかな深みをさぐり当てるのを
僕は見ていた

遠い昔から
数多の吟遊詩人たちが
僕の胸へと歌いついできたのは
きっと君のことだったんだ

 ....
夜の中心に置かれた
玻璃の器の中で
微光を放っているのは
誰にも問われることのなかった
ひとつの答えである
夢をごらん
今の君だからこそ見られる夢を
その身に纏う翳りさえ透明なうちに

夢をごらん
翼ある夢を
コーヌコピアから溢れる花と果実に
彩られた夢をごらん

君の心から生まれつづける ....
僕らは終わりゆく夏の片隅に凭れている
空中に半透明の骨がいくつか漂っている
(時々うっすらと虹色を帯びて見えたりする)
何が朽ちたあとに残った骨なのか などと
僕らはもう考えることもな ....
螺旋階段の多重羽化を司る夏の淡蒼球が瞬いている
けれど詩は半透明の憂愁で虚ろに化粧して
液状の街へ出かけたまま戻らない
きっと機械仕掛けの虹のダンスに見とれているのだ
だから私は見あきた窓を裏 ....
そして私は見つめる
いま目の前にいる君を
すでに失われたものとして

いまこの時の君のあざやかさを
そのままに胸に灼きつけるには
幻とするよりほかないのだから

これ以上
近づいては ....
窓の外には
透明な沙漠の夜があり
銀の虹が架かっている

深緑のテーブルクロスの上には
白い皿があり
その上には一篇の詩がある

その席は誰のために用意されたのか
いつしか銀 ....
夜空いちめんに
きれいなさびしさを散りばめて消えてしまったのは
君だったんだね

始まらない世界と
終わってしまった世界ばかりが
僕らのまわりに転がっていたけれど
君はそれらのあいだを軽 ....
透明な祭壇の上で
君は羽化する
私はただ見あげ見つめるだけ

君は羽化をくりかえす
私はただ見つめつづけるだけ
君はそのたびごとにちがう羽をひろげて
   雨の羽
   砂の羽
   ....
梔子のかおりを運ぶ
early summerの風の中で
僕たちはまた君と出会った

思えばいくたび
僕たちは君と出会っただろう
雛菊咲く丘や
光る雲の上や
美しい夜明けのバルコニーで
 ....
楽屋には雨が降っている
彼は黒い傘をさして
鏡の前に坐っている
これまでに舞台では
幾千もの笑顔を見せてきた彼だが
今はそのどれとも違う笑みを浮かべている
愛する者と共にいるときに
見せ ....
君は踊る
薔薇を 菫を 雛菊を踊る
揚羽蝶を踊る
木洩れ日を 気ままな風を踊る

君は踊る
虹を 青ざめた夜明けを 葡萄色の黄昏を踊る
波を 湧きあがる雲を 嵐を踊る

君は踊る
 ....
そしてまた梨の花が咲いた
記憶の裏窓に
梨の花が咲いたのだ

少年の横貌を
咽喉の線を
正しく記述する春の香気

    咲いたよ 微笑む
    咲いたよ はにかむ

その指が ....
心臓の中で
春が笑っている

笑っている春の中で
一面のチューリップが笑っている

笑っているチューリップの中で
少年が笑っている

少年の無邪気さが
チューリップを{ルビ ....
左の翼は
羽の一枚一枚がすべて
小さな銀のナイフ
右の翼は
羽の一枚一枚がすべて
紅い薔薇の花びら

その飛行の軌跡は
歪みつづける
あるいはその飛行が
天を歪ませてい ....
愛し合うことで
この世界を美しく{ルビ汚=けが}そう
互いの内なる罪の昏さに
惹かれ合った二人だから

二人がいろいろなかたちで
抱き合うそのたびごとに
幾重にも罪は深く響き合う
二人 ....
殿上 童さんの塔野夏子さんおすすめリスト(138)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
Beautiful_Dreamer- 塔野夏子自由詩3*13-8-11
- 塔野夏子自由詩9*13-7-29
天使の破片- 塔野夏子自由詩3*13-7-17
少年刻- 塔野夏子自由詩10*13-6-25
夜を溜める- 塔野夏子自由詩18*13-6-1
水彩小曲- 塔野夏子自由詩2*13-5-17
ライオンとチルドレン- 塔野夏子自由詩3*13-5-7
春の分泌系- 塔野夏子自由詩3*13-4-29
見えない心臓- 塔野夏子自由詩1*13-4-3
窓辺の人- 塔野夏子自由詩6*13-3-25
彼女についてのケース・スタディ- 塔野夏子自由詩2*13-2-11
愛の標本- 塔野夏子自由詩5*13-1-27
名のない罪- 塔野夏子自由詩5*12-12-3
少女カレイドスコープ- 塔野夏子自由詩6*12-11-17
Bless- 塔野夏子自由詩3*12-11-3
He_said- 塔野夏子自由詩9*12-10-9
夢をごらん- 塔野夏子自由詩6*12-9-23
晩_夏- 塔野夏子自由詩9*12-8-25
静かな絶叫- 塔野夏子自由詩3*12-8-17
夏のエフェメラル- 塔野夏子自由詩4*12-8-11
Happy_Birthday- 塔野夏子自由詩3*12-8-5
夏の万華鏡- 塔野夏子自由詩4*12-7-29
羽化少年- 塔野夏子自由詩7*12-7-23
そして再び君と出会う- 塔野夏子自由詩4*12-7-1
六月の楽屋- 塔野夏子自由詩6*12-6-7
踊るひとのための連祷- 塔野夏子自由詩23*12-5-23
裏_窓- 塔野夏子自由詩9*12-5-11
春_鬱- 塔野夏子自由詩9*12-4-29
不自由な天使- 塔野夏子自由詩7*12-3-25
ユートピア- 塔野夏子自由詩4*12-3-19

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