身体感覚に素直に従って生きてゆきたいのですね
回答の得られない食べきりサイズの人生でもそれでも
新たな無限のドアを自ら鎖してしまわないように
太陽が遍照する微妙なバランスの不自由にありがとう ....
{引用=夕涼み}
薄暗がりがそっと首を絞め
あなたは鬼灯を見た
決して強くはない抱擁で
皮膚一枚を越えられず
互いの頬に帰依するように
自分の愛と思える部位を自分で弄って
記憶に補正され ....
水源と柔らかなことばにめぐりあう
船の舵取りは水辺の花を想いながら
いくつになってもできないものはできない
今更のようにはぐらかして過ごそうか
永くゆっくりと関わってゆく事は大切だし
....
振り向くと、
肩先をかすめて飛んでいった
風のまにまに光って小さきもの
僕をもう追い越して それは八月のまばゆい光のなかへ
ドラゴンフライ
そのうすい羽の向こうに少女が見える ....
{引用=涼を狩る}
池の青さ
屏風と扇子
ボタンを外した
指は行方知れず
アオダイショウ
そっと跨いで
墓地へと続く
坂の木陰
吸った唇
....
水銀柱は地中深く突き刺さり
僕の居場所はとっくに奪われ
あゝ星だ、あんなに輝き爆発して
雪降る宇宙を溶かしている
地平遥か入道雲が踊り
こちら側では子らの笑顔が弾ける
もう行か ....
感じたことが
自分なんだな
あの苛立ちは
自分なんだな
その悲しみが
自分なんだな
この感動も
自分なんだな
漏れた本音が
自分なんだな
目につくものが
気に ....
いつものようにベッドに入り、翌朝目が覚めたら私の背中には羽根が生えていた。
翼というには小さ過ぎて、服を着てしまえばほとんど目立たない。
こんなものでは勿論飛べなくて、動かそうとしてみると ....
私があなたに話しているのを、そこから見ているあなたがいて、
私が私自身に話しているのを、どこかで見ている言葉がいた。
あなたに向けたつもりの言葉も、結局は自分自身に向けられていたのかもしれない ....
ふと思うことが 直観だと
最近知ったんだ
満月から燻るオーラ 煙たげに窓の外
見上げてみても もう降りて来る者はいないよ
私の汲み上げた三人称だから
対話をトランプのように切って 神 ....
クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....
あちこちで花が咲いてしまった。もう少し待って欲しかった。
ま新しいランドセルを背負ったむすめは、昼にも夜にも、こわいと言うようになった。わたしは(どうしてそんな愚かなことをと思うけど)なにが?と ....
そうだね、
戦争があったんだ。たしかに。
私の血の中に流れる色のない祖母の声は、
終戦の真っ青な夏空をしている。
春はどうだったろう。そういえば戦争の春のことを
聞いたことがない。春 ....
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
ああ、
こんなに澄んで囁き交わす時ばかりなら
詩を書くことすら要らないだろうに
僕は ....
ひたすら壁にむかって投げ続けた
ひとりだった
みんな学校へ行っていた
じぶんのふるさとをこうして
時々
思い出す事がある
電車が通ると夏草がゆれた
およそ色んなものが
おもえば ....
詩を書いたり 短歌詠んだり 俳句摘まんだり
それをインターネットに投稿したり
自分は暇人か
そうじゃない
私は私なりにいそがしい
昨日は血肉を分けた兄の葬儀に参列して
焼かれた灰の ....
11月の今頃になって
ハムスターが死にかけている
妻が巣箱の入り口に芋を置いても
出てくる様子がない
ペットショップで買って1年半
秋から急に痩せてきて
数日前から餌を食べなくなった
廻 ....
十一月十七日、前日まで杉林の除伐を行っていたのだが、その作業をいったん中断し、ブナの植え付け作業を開始した。あらかじめ秋口に植え付け面積を刈り払っておき、そこに一・五メートル間隔でブナの稚樹を植え付 ....
テレビを点けたら
そこはアメリカ合衆国
ホワイトハウス前
バイデン推しの国民と
トランプ推しの国民が
まっ二つに入り乱れ
ポリスマン達は{ルビ眉間=みけん}に皺を寄せて
にらみを ....
季節があわただしくすぎてゆく
いま、どこにいるのだろう
さっぱり わからない
わからないから歩いている
ながいあいだ歩いてきたような気もするし
ついいましがた歩きはじめたような気もする
....
互いにスパークする宇宙で起きた出来事があり
誰も入り込めない花園の君がいていつか僕は叙情になる
面倒くさい真実ばかりがまかり通って
優しい嘘はにぎりつぶされて疑問ばかりが生き残る
レノ ....
山あいのさみしい川べりの
物置小屋の青いトタン屋根の上に
紅葉したもみじが
五六枚かかっていた
大町の山間部の秋は
ダム湖の水面に近い方から色付く
楓が黄色く
イロハモミジはわずかに ....
今日、先年の水害で何もかもが水浸しとなった地区に行ってきた。路肩に植えらていた筈のマリーゴールドは尽く引き抜かれ、その代わりに黒い農業用マルチがのっぺりと施されていた。
ちょうど一年 ....
{引用=幼恋歌}
暑さ和らぐ夕暮れの
淡くたなびく雲の下
坂道下る二人連れ
手も繋がずに肩寄せて
見交わすこともあまりせず
なにを語るか楽しげに
時折ふっと俯いて
風に匂わす花首か
....
夏に買った
金魚鉢は
金魚を飼うための
金魚鉢なのに、
いまではもう
青空を飼ってしまっている。
いつか知らないうちに
金魚が青空に
溶けてしまったという、
嘘みたいな嘘 ....
一つの生をたずさえて
一つの死をたずさえて
赤ん坊から老人マデ
寄り道しながら
僕は行く
)今は何もせずぼうとして
)うねる夏の光を夢見ながら
)美しく深まっていく世界を信じ
....
灰色の空を見上げて
最後の雨を待ち続ける間に
きっとアタシたちの歴史は
色褪せてしまうのだろう
気がつけば無音になった街で
みんな空だけを見ている
鳥の瞳で、犬の瞳で、猫の瞳で、
( ....
東京
透けた卵管が
標識のたかさに浮いて
われらを 孕もうとする
香港
銃声のようにみじかく
中毒のようにながい
発狂が四角に建つ
....
どれだけ着込んでも
どれだけ暖房を強くしても
寒さを凌ぐ方法をぼくはまだ知らない
寒いのは冬だからじゃない
寒いのは一人だからじゃない
氷点下を感じているのは
身体ではなくぼくの心
....
思いでの切れはし集めて並べたよ
ボロボロになった古い写真みたいに
今朝は青い空に白い雲が散らばっていて
実に清々しい気分なんだ
仕事中なんだけどさ
爽やかすぎて
仕事に身が入らない ....
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