野薔薇の咲き乱れる公園で私は待っていた。
 ベンチに腰掛けている私の面前を物言わぬ者達が通り過ぎてゆく。
 遠い記憶を辿ると確かに私はここで待っていた。
 緑に塗られたベンチの端の方、そこ ....
死んでないよね

生きてるよね

返さなくていいから

生きていることだけ
知っていけたらいいのに

幸せだよね

笑っているよね

傍に居られなくてもいいから

あなた ....
 名も知れぬ花々が倦怠を司っている。
 彼方に聳える山々が郷愁を誘う。
 人間は目に見えるものを真実だと捉えがちだが、
 夢の中までそれを固持することもないだろう。

 夜空に浮かぶ三日 ....
「自分に味方しないものは敵だ」
という考え方と

「自分に敵対しないものは味方だ」
という考え方は

同じようでいて ずいぶん違う

生まれつきの敵も味方もいやしない

パレスチナ ....
今朝はやけにすずめが気にかかる
あまり明るくない雨上がりの湿った土の上を
ちいさくなにかついばんで
むくっとしたり首をかしげたり
尾羽を振ったりして
手のひらにすっぽり収まりそうなすずめが  ....
彼女の名前は、林檎といった
日がのぼり 日が沈んで どんなときも
心に 一つの凛した樹、それが林檎だった

パオバブの木は 特別な木ではなく
桜の木は 花見のときだけが桜ではない ....
 今日という日の終わりに君の事を想うよ。
 僕の枕元に降りてきた天使。
 信じるってことを忘れていたよ。
 寂しさなんてどこかへ消えていったよ。

 今日という日が終わろうとするその時に ....
新聞の死亡欄に小さく載りたい
葬儀の予定など一切無しで
ほんの数えるほどの文字
ひとつの死 ひとつの終わり
シンプルで飾りのない
わたしの死 わたしの終わり
事実だけが落ちている


 ....
月は満面の白い笑み ピリッとして
私の耳 桜色でしょう
このままいつまでも夜道を辿って行きたい
ふたりの息が白く 交じり合う
それだって 初めてだから
私は精一杯 お人形のようにいい顔して  ....
 私の窓辺に晩秋の風がやってくる。
 あの山の麓の村にもそれは訪れただろうか。
 恋しくてたまらない。
 我が半身は今どこを旅しているのだろう。

 想像の翼を広げてみれば新たな地図が必要ら ....
今日はこのフレームを手に入れたので
このフレームの中で展開を期待しようと思う

秋惜しむ

ホルモンの悪戯に付き合って月が仲裁入ってくる
認知症を恐れて食べたものを思い出す訓練をし ....
名付けなさい
君を縛る暗闇を
君を閉じ込める闇の正体を見極め
君自身が
名付けるのです

例えば
「コウモリ」
と名付けたら
君の闇からコウモリが
切りとられた影絵のように
現れ ....
月がようやく
煌めくような日々にこそ
誰しものひとつしかない夜空へ
静寂という名の平和を
本当に届けられるのか
アフォリズムを
唱えるみたいにして
時間が止まること
さえをも希望する
 ....
わたし ほんとは
エビフライ食べれないんだよ
アレルギーとかじゃないけど
嫌いなだけだよ
食いしん坊だけど
嫌いなものもちゃんとあるよ

わたし ほんとは
君のこと大事にしてい ....
手に負えない重さ
月明かりに映えるシーツに残るわずかな質量

コーンフレークと牛乳の朝
時間が白い霧となって降っているね
透き通ったグラスは
飛び散ろうとするあなたをゆったりと受け止め
 ....
眠れないのです

瞼は重く

欠伸は絶え間なく

体は熱く

それなのに

「しにたい」「きえたい」と

心の中にいるわたしが

頭の中にいるわたしが

ずぶずぶと ど ....
暗い夜の底から
柔膚を剥ぐように奪われた
土と草の匂いと、
家族の笑いを灯した明り

 安穏な日々
   を
  揺さぶり壊して
一瞬が、
      全てを奪った

星々をも掴 ....
塔は沈黙をしながら
夕空へと
突き出していて
旗は海から吹く
旋風にそっと
揺らいでいる

Emblemの袂とは
勝負を切り結ぶ戦士たちの
闘いが始まっても
互いの信義をもとにして ....
 坂を上りきったところには思い出が宿る。
 僕は持ってきた手帳を開き、使い古した万年筆でそっと言葉を描く。
 生命の継続。生命の継続。生命の継続。
 三回繰り返すと不思議とその場所には新しい ....
恋の果実を
収穫することを待ちながら
暑かった夏空は
熟れた林檎を
真っ赤な彩りに染めている
大切な人へと
恋を想って約束を
するときのように

真夏に夕焼けを
埋め尽くしたばかり ....
服を脱ぎ捨てて、
皮膚を剥いで、
すべて剥ぎとる。

まだだ、
核心に触れるまでは遠すぎる。
いったいどこまで
いったいいつまで
続くのだろうか。

魂は太陽に比例 ....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
 ....
一般邦人は
メキシコ麻薬戦争とは
一見して関係がないはずだが
実際は関連が
あるのだ

幻覚を見たり
聴いたりする病のことを
ご存じだろうか
昔からある病気で
その病気の名前は
 ....
駆けた
夜の夢を
君のために
その熱量は
人生で一番荒いから
足が燃えた

賭けた
指差す方向どちらに
行く方が正しいか
それに答えはないので
手のひらは燃えた

掛けた ....
戯れが過ぎたのか
名月が遠い 待てない心臓が加速始め

この訪れの麗らかさを

深呼吸トクトク鼓動にはもって上体を反らして

螺旋の儚い軌道を静止飛んでいる

ひたひたの心に ....
 クリスタルアメジスト、という口紅を買った。夏になる前頃から気になっていた口紅だ。駅ナカのショップの隅に置いてあったその口紅を試しに唇に当ててみた(本当は手の甲に着けるのに)。するとどうだろう。一日に .... 恥ずかしそうにして
横たわる真白い身体の
すぐ近くにある
誰も知らない部屋で
あの扉を開くことができる鍵穴に
ぴったりと
はまり込む
秘密の白い鍵穴に
鍵を当てはめる

Eroti ....
ひかりのあたる角度によって
ものごとは綺麗に反射したりえらくくすんで見えたりもする

シャンデリアのある素敵な応接間
ある生命は空間を得るために代償を払う

それを得られない一部は
高速 ....
時と場所が
選ばれながら
Cigaretteの煙が立ち昇る
日々はどんな天気でも
ずっと続いている
隔離された
都会の喧騒や
夜空の果てでさえ

微かな炎による煙は
あらゆる病気を ....
光と樹木が交差する
あの夏の濃い陰りを抜けて
ヤンマゆくよ

感光した記憶の傷痕なぞり
迷える樹海の鬱蒼を越えて
ヤンマゆくよ

うすい双翅に光彩を弾き
風の流れを遡り
この目が耳 ....
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