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無邪気であり
かつ残酷でもある少年は
少女にはわからない遊びに夢中になったりする
原始の森から続く通過儀礼のように
せみとり くわがた かぶと虫
昆虫標本
はばたくために作られた軽い羽 ....
何時間たっただろう
真夜中に ふと目覚めては
姿の見えない沈黙と会話する
自分の居場所
あるはずなのに
それを探そうとはしない
孤独が運命なら 受け入れよう
いまごろ
どうして、って
尋ねられても
呆れられても
かかったものは
しかたがない
恋だっておなじ
冒険だっておなじ
一過性だよ、って
かるく流されるのも
流されま ....
ひんやりと
乙に澄ました器に
シャキシャキと
君が
降り積もる
すでに膝小僧が
溶けかけていた
僕は
やんちゃな眼差しで
それを見守る
じんわりと
熱を帯びた午後に
....
朝
コップ一杯の水を飲む
夜の間に
水分が失われた細胞が
目覚めていくのを感じる
八月六日の朝
同じように水を飲む
最期の言葉は
ミズヲ クダサイ
この水は
私の水 ....
わたしは遠く故郷に忘れてきた
美しい風景を見ようとしたが
目の前に大きな黒い岩が立ちはだかって
見渡すことができない
岩の上によじ登って
遠くを見ようとしたら
岩が動き始めた
大 ....
谷底に
毛布を敷いて
300日まえの
ことばを聞いている
気の遠くなる
甘やかさのなかで
遺書のような
うたを編んだ
{画像=120712232443.jpg}
陽の当たるところ
その建物は言いました
都会には幾つも建物があるけれど
そのなかでもぼくが一番さ
ぼくは一番大きな建物 ....
眠りたくない
明日がこわい
どうして人は
今日を越えないといけないの?
ずっとひとりぼっちで
眠ってきたけど
慣れないの あの頃から
言い争う声も
物音もきこえないのに
....
梔子のかおりを運ぶ
early summerの風の中で
僕たちはまた君と出会った
思えばいくたび
僕たちは君と出会っただろう
雛菊咲く丘や
光る雲の上や
美しい夜明けのバルコニーで
....
小さな花が
音も無く咲くとき
小さいなりの輝きがあるだろう
太陽は
惜しみなく笑顔を贈るだろう
私たちは
知っている
どんな花も魂をゆさぶると
小さい花は
小さいことを
....
雲をながめたり
雨をながめたり
次第におおいかぶさる
暗闇の手をながめたり
そのたびに
母に
「またぼんやりして」
と言われた
私は
実にぼんやりした子どもだったのだろう
....
今日も詩を書こうと思う
僕は書くことに何も満足してはいないのだ
だけど 一体 何故だろう
憂鬱な気持ちだけが妙にはっきりとしている
君は読むことをしないままだった
そんな ぼやけた毎 ....
建築現場の鉄骨が
空の重さに耐えている
(昼下がり)
子供たちがホースの水で虹をつくる
二階のベランダから身をのりだす猫
視線の先には鳥が羽をやすめている
建築現場では低いうな ....
ぼくらの町に
ヨシキリがかえってきた
一羽は川沿いの桜の木に
もう一羽は中州の葦のしげみでなきかわし
恋の歌をうたっていた
そんなとき、子どもたちがドヤドヤやってきて
このちょっと変わ ....
地面に
言い聞かせるように
雨が降り続く
無色の
絶え間ない呪文が
街を塗り潰す
紫陽花は
すべてを受け止めようとして
雨雲を黙読し
雨傘は
すべてを受け流そうとし ....
おじいちゃんと森で薪を拾う
僕が手当たりしだいに
背負子に放りこんでいると
そいつはまだ早いと言う
幹を離れてまもない小枝は
水分を含んで
みずみずしい
生木の範疇を出ないものは
....
光はあふれる
白亜の{ルビ建物=ビルディング}の上に
海鳥の白い翼に
青くうねる海原に
光はあふれる
光は波打つ
どこまでも続く青い穂波に
涼やかに流れる川面に
青い空と風の中に
....
死にたい日に
いちばんすきな靴したを履いて
興味のないパーティーへでかける
足首に
ほそいロザリオをつけた男に抱かれたら
こころとからだがはぐれた
音が鳴っていて
とても静か ....
橙色の絵の具しか
見つからなかったので
君を描いてみた
夕焼けなんかじゃ
痛すぎると思ったから
青色の絵の具しか
見つからなかったので
僕を描いてみた
海なんかじゃ
....
母のおむつと尿漏れパッドを買う
要介護度3でデイサービスと訪問介護で
助けてもらっている
食べ物にたいする執着がつよくなっているようだ
それが生きるということなのかもしれない
子供た ....
夕立が来るぞ
洗濯物入れて
布団取込んで
窓閉めて
空が暗くなる
風が強くなる
鳥が巣に帰る
世の中が死ぬ
寂しくなる
悲しくなる
泣きたくなる
つらくなる
天の上にいる方よ
もしも輪廻転生があるのなら
つぎはどうかぼくを大きな岩にして下さい
間違っても生命あるものに
生まれ代わらせることはしないで下さい
もしもどうしても生命あるものに
....
夜の通勤急行列車
ゆっくりだんだん蛇行しながら
「プシュー」と
最後に息を吐き出して一時停車
車掌さんのクネル声でどうやら信号待ち
皆も疲れて
「プシュー」と
....
月光をグラスに落として
バーボンを注ぐ
舌の上に
冷たく燃える
冬の夜のエッセンス
庭先で
君の幻と踊る
その虚ろで
優しさに満ちた微笑み
白いガウンの下で
その身体は
磨り ....
何かが近づいている
私の背中の遥か後方から
何かが起こっている
あなたの視界の外で
何かが忍び足でやってくる
彼の見えない方向から
何かが産まれようとしている
彼女の盲点とな ....
笑うと金語楼になると
細くなった母の目を
指さしながら父が笑う
明るいさざ波が立って
子どもたちの顔まで
福笑いの目になる
母が笑う日は少ないが
その笑顔はぼくの
胸の引き出しにある
....
何だろう
自分を失うときに 僕は
得るものがある
何だ それは
いつも二人でふざけてたよね
じゃれあってた頃の二人を思い出すと
これからの僕の人生に君がいないなんて嘘みたい
ほんと どっかのテレビのドラマみたいに
これまでの話が全部夢ってオチだったらど ....
冬の朝
空気が張り詰めている
これから僕は試される
あたたかい布団から出て
ぬくもりの残る寝間着を脱ぐ
つめたいシャツに腕を通す
小さなボタンが凍りついて
うまく動かない
....
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